21.男同士の話
翌日アカデミーでエドワード殿下に会い、話をさせて欲しいと申し出て、昼に食堂の個室で食事をしながら話をした。
「殿下はご存知だったのでしょう?アリーチェ王女殿下との婚約の件」
「まあな」
「教えてくださっても良かったのでは?」
「言えるわけがないだろう。まだ極秘事項だ。それに、お前がフレイヤに少しずつ惹かれていく様子を見るのが面白かったから、水を差したくなかったしな」
この方は本当に意地が悪い。俺に対して。
はっきりと「面白かったから」と言った。やっぱり人の恋を面白がって楽しんでいたのだ。
思い起こせば、仮装トーナメント大会から既に面白がっていた。対戦中にもかかわらず、あの意地の悪いニヤリとした笑みを浮かべて、俺をからかってきていた。
「面白がらないでください」
「いいだろ。私のお陰でフレイヤから、理想の人は変装したレオンだって話を引き出せたんだから」
まあ、確かに、それを聞いたときは嬉しかったのだけど……。でもそれのせいでお互いにぎこちなくなってしまったのもあるのだが。
そして今は自分のせいで気まずくなっている。昨日キスをしてしまい、今日の魔法レッスンにどんな顔をして行けばいいのか分からない。
殿下には、キスをしてしまったことを絶対に言いたくない。絶対にバレたくない。何を言われるか分からない。というか、面白がられるだけだ。
しかし家族にはとにかく告白をちゃんとしろと言われた。何と言えばいいのか、どう切り出すのか、全く考えが纏まらない。
昨夜はそれで寝られず、寝不足だ。
「で、婚約はどうするんだ?」
「断ります。今頃両親が陛下に伝えに行っているかと思います」
「そうか。さすが物怖じせぬな、お前の母は」
「ええ。政略結婚は嫌いだと言っておりましたよ。それよりも、私が聞きたいのはカリナのことです。いつからお二人はそんな仲になっていたのです?それこそ教えてくださっても良かったのでは?」
「そんな仲?」
殿下が少し首を傾げて、身に覚えがないとでも言うような表情を浮かべている。
「昨日カリナが、殿下を好きだから俺と王女殿下が婚約したら諦めなければいけないので、諦めたくないと言っていました」
「そうか」
「殿下は違うのですか?カリナの一方的な想いなのですか?」
「俺は王族だぞ?軽々しく言葉にすることは出来ない。様々なところに混乱を招いたり、迷惑が掛かる」
「それはそうですが……」
「しかし、そうか、カリナは俺が好きか。良いことを聞いたな」
いつもの腹黒いニコニコとした表情を浮かべている。
「俺、もしかして余計なこと言いましたか……?カリナに絞められるかな……」
一族の中でも女性の方が魔力が高い場合が多い。恐らく俺よりもカリナの方が魔力量だけを見たら勝っているだろう。母と同じで、アナベルの素質を色濃く受け継いでいる魔女だ。何しろ、愛第一主義だ。
まだアカデミーの基礎科なので使える魔法は俺よりも少ないだろうが、本気で魔法戦をしたら勝敗はどうなるか分からない。
「心配するな。時間は掛かるかもしれぬが、根回しは徐々にしていくさ」
殿下はニヤリとした。
本心は決して教えてくださりはしないが、遠回しの表現でも、不本意だか家族曰く鈍感な俺にも、何となく伝わった。
愛第一主義の母を見ていると、アナベル様の家系に愛されて情熱的な想いを向けられた相手は、逃れられなくなるのではと、そんな相手を気の毒に思っていた。
俺がフレイヤ嬢を好きになるまで、本気でそう思っていた。
しかし、そうということばかりではないのだろう。
カリナに愛されたら、殿下は追いかけ回され逃れられなくなるのではと思ったが、決してこの方は気の毒に見えない。
むしろ、逆?
母の魅力に魅了され虜になり、情熱的にずっと母を愛している父の様に、お互いが逃れられなくなっているのかもしれない。
この方は手に入れるまで時間が掛かってしまうことも承知で、障害を潰しながら虎視眈眈と機会を伺うのだろう。
俺が気付かなかっただけで、恐らくずっとそうしていたのかもしれない。
妹よ。お前は大変な方に恋をしたものだな。




