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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
19/159

19.始まりの魔女─ソフィアの恋─

新しい星を作ってから、50年程が経った。


徐々に人口が増えていき、初めは3人だったのが村の様になり、今では小国となっていた。


エマが国王となり、エマが地球から連れてきたとある国の王子を伴侶に迎え、助けを得ながら国としての形を整えていった。


アナベルと私は高い魔力を活かし、土地の開拓や建築物の建造、生活基盤となる医療や道路等の整備、市民の職業の構築、その他些細なことまでも、とにかく頼まれれば何でもやった。

その功績を称え、爵位制度を定めたのと同時に最高位の公爵位を賜った。


王都には大きな邸を構えたが、私は特に結婚もせず1人だったので、あんなにも広い邸は身に余り、最初に3人で作って3人で暮らしていた隠れ家で生活していた。王都では公爵としての仕事もある為、王都の邸と隠れ家を繋ぐ魔法の扉も作った。


3人暮らしとは言っても、まぁ、正確には、アナベルは直ぐに地球に行って恋人を連れて帰ってきてそのまま結婚したので、エマとの2人暮らしだったのだが……。


アナベルはその人と結婚後子どもをもうけたが、ご主人が50歳で亡くなってしまった。

魔女は魔力が高いと寿命が長い為、まだ100年は生きると思われるアナベルは、全く美貌が衰えることも無く、また地球から結婚相手を探して連れてきて再婚をした。愛第一主義のアナベルは、常に誰かを一心に愛していたいそうだ。そしてその人との間にも子をもうけたのだ。



コンコンコンと、森側の扉をノックする音がした。


「ソフィアさん、いるー?」


扉を開けて入ってきたのは、アナベルの2人目のご主人との間に出来た子ども、ルークだ。


「こっちー。書斎にいる」


「わー!また書斎机の上散らかして……魔法書を書いてるの?」


「そう」


「パン持ってきたよ。あと、ソフィアさんの好きなサーモンパテ」


「ありがとうー!嬉しい!じゃあご飯にする」


「相変わらず、魚料理が好きだよね」


私は魔法が関わるとすぐに夢中になり、食事を摂るのも忘れてしまう。それを心配したアナベルが、時々こうしてルークに軽食を持たせて届けてくれるようになったのだ。

アナベルの領地が直ぐ隣にあるので、ルークはいつも森側からやってくる。


キッチンで紅茶を淹れ、作業台兼ダイニングテーブルのハイスツールに腰かけて、モグモグとパンを食べる。今日のサーモンパテも美味しい。ディルの爽やかな香りも良い。


「このソフィアさんが書いた魔法書、ちょっと大雑把過ぎない?こんなんじゃ使えない気がするよ」


「そう?でも、そんなもんよ、魔法って」


ルークが魔法書を見ながら、転移魔法の呪文を唱える。けれど、魔方陣は出現しなかった。


「ほら。出来ない。俺もそこそこ魔力量あるのに使えないじゃないか」


「んー……なんでだろう。呪文は間違っていないのに……」


あーでもない、こーでもないと1人考えていると、ふと目の前に影が出来る。パッと見上げた瞬間、上半身を屈めたルークが私の唇をチロリと舐めた。


「パテが唇に付いてるよ」


咄嗟のことで、思考が戻るまで数秒だけ固まってしまった。


「………なっ、なに!?」


体を後ろに仰け反らせ、ガタンとハイスツールから落ちそうになる。


「そろそろ気付いても良いと思うんだよね。ソフィアさん、鈍感過ぎ」


「ななな、何を?」


「俺がソフィアさんを好きだってこと」


何を言っているのだ。

好き?ルークが?私を?


「や、私…おばさんだよ?貴方のお母さんのアナベルと変わらない歳よ?魔女とは言え、もう70近いのに……」


「そんなこと、愛に関係あるの?それにソフィアさんはずっと若く綺麗なままだ」


この情熱的な感じ、アナベルにそっくりだ……。


「綺麗って……私のどこが?アナベルの方が──」


続きは言えなかった。

唇をルークの唇で塞がれてしまったからだ。


私にとって、初めてのキスだった。


「ソフィアさんの唇は、どこの誰よりも、そして母さんよりもずっと魅力的で、俺を誘惑してくるんだ」


少しだけ唇を離して、話す息がかかる距離のままそう言った後、またキスをする。離れないように私の首裏に大きな手を添えて、唇の内側まで強く合わせて、そして長く甘いキス。


唇が離れても、私が否定的な言葉を言おうものなら、容赦なくキスをして話せなくする。


「ソフィアさんとのキスは、信じられないくらい気持ちよくて、やめられそうにないな」


そして甘い言葉を吐く。


ルークの攻めに私は力が抜け、思考も停止し、呆然としていると、彼はポケットに手を突っ込んで、何かを取り出した。


「これ、受け取って。ずっと、渡したかったんだ。ソフィアさんの瞳と同じ色のブルークオーツ」


目の前に吊り下げられたのは、青色の石のネックレスだった。

私の好みを理解してくれているのだろう。控えめでシンプルなデザイン。肌馴染みの良いイエロー・ゴールドのチェーン。ルークの猫のような瞳の色と同じ。


「ずっと渡したかった」って、いつから?

いつの間に買ってくれていたの?

買う時に、私の瞳を思い浮かべてくれていたの?

いつからそうやってポケットに忍ばせていたの?


ネックレスの金具を両手に持ち、私の首裏で金具を留めネックレスが私の首もとに落ち着くと、私の両肩を掴んでまたキスをする。


「よく似合ってる」


「……ありがとう」




恋なんてしたことなかった。興味が無かった。


でも一瞬でルークに落とされた。

嫌じゃなかった。


彼が小さい頃から知っていて、母親のような、親戚のおばさんのような感覚で、成長を見守ってきた。

だから、嫌いじゃなかった。大好きだった。

可愛い子だと思ってた。だんだんと格好良くなっていく様子を、親気分で誇らしげに見ていた。


でも急に“男”を見せてきて、私は抗うこともなく、キスを受け入れていた。


“男”になった彼に一瞬にして恋に落とされたんだ。


これまで本気で私にアプローチしてきた男性なんていなかったから、免疫がなかったせいかもしれない。


それに、この星で私より魔力が高い人なんていない。私に対して尊敬の気持ちを抱く人ばかりで、どこか怖がられてもいた。


魔法にばかり興味があって、お洒落することにも恋愛することにも疎くて、地味な私。


それでも、そんな私なのに彼に愛してもらえることが嬉しいと、素直に思えたのだ。



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