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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
17/159

17.理想の人

昨日、妹の指摘によって、図らずも自身の恋心を自覚してしまった。


そして、今日も授業後に魔法レッスン場に来たのだが……


彼女の顔をまともに見られず困っている。

恥ずかしいのだ。

可愛く見えて仕方ない。

笑顔が眩しい。

唇が魅力的過ぎる。


顔が赤くなるのを抑え、平静を装うのに必死だ。


ただ自覚をしただけで、こうも変わるものなのか?恋とは不思議なものだ。


レッスン場の壁に手をついて魔力を流している姿は隙だらけで、頼むから無防備に背中を見せないで欲しいと思ってしまう。

それを教えたのは俺なんだけど。

妄想が膨らんで行きそうになるのを、ぶんぶんと頭を振って掻き消す。


「どうかされましたか?」


不思議そうにこちらに振り向き、首を少し傾げた彼女の表情にもドキリとしてしまう。


……これは重症だ。



◇◇◇



「レオンお兄様ー!」


魔法レッスンを終えて、レオン様とアカデミーの馬車乗り場にやって来たところ、カリナ様がこちらに手を振っているのが目に入った。


カリナ様の隣にはエドワード殿下もいらっしゃる。いつも遠目で見る方なので急に体が固まって、ぎこちない動きになってしまう。


そうだ、レオン様はエドワード殿下と一緒にいらっしゃることが多いのだった。


「フレイヤ、久しいな」


「お久し振りにございます、エドワード王子殿下」


慌てて頭を下げ、淑女の礼をする。

あまりお会いすることが無いため、緊張して手が震えてしまう。


「ああ、そんなに畏まらなくていいよ。頭をあげて。ここはアカデミーだから、学生同士もっとフランクで構わない」


「は、はい」


殿下の懐の広さと気安い雰囲気に少しほっとする。


「殿下、どうかされたんですか?帰って執務をされなくて良いのですか?」


「なんだ、レオンは冷たいな。カリナがレオンを待っていると言うので、一緒に話をしながらお前を待っていたんだ」


「カリナ?何かあったか?」


「昨日、本屋に連れて行ってくださいとお願いしましたよ?」


「……そうだったか……?」


お三人の話を聞いて慌てた。カリナ様をお待たせしてしまっていたようだ。そして、一緒に殿下までも待たせてしまったことに動揺が隠せない。


「すっすみません!私のせいでお待たせしてしまいましたか!?お約束があったのなら、教えていただくのをお休みしても構いませんでしたのに……!」


「お気になさらないでください、フレイヤ様。魔法レッスンが終わってからで良いと兄にも伝えてありましたし。まぁ、忘れているようですが。あっ、忘れていたのではなく、昨日は心ここに非ずで聞いてなかったのかもしれませんねぇ」


「カリナ……!」


あら、レオン様がジロリとカリナ様を睨んでいらっしゃる。心を許された妹君には、そんな顔もされるのだなぁと思った。鋭い目は凛々しさが増し、美形が際立つようだ。


「フレイヤ、レオンの指導はどうだ?上達したか?」


「はっはい!とても優しくしてくださって、丁寧で分かりやすく教えてくださるお陰で、だんだんとコツが掴めるようになりました!」


「それは良かったですわ!兄は顔は良いのですが、女性への接し方があまり上手とは言えないので、無理をさせていないか心配だったのです」


「……おい」


「無理だなんて!全くそんなことはありません!こちらこそ、私なんかに時間を割いて頂いて無理をさせていないかと…!それに、羨ましく思うご令嬢も多い中、私ばかりが良いのかと申し訳なく思います」


「ああ、レオンはこの顔のお陰でモテるからね」


「お顔だけでなく、とてもお優しいのでおモテになるのだと思います」


「優しいか。そうか。ちなみに、フレイヤはどんな男性が好みなの?」


「えっ……!」


「あら!聞きたいです!どんな方が理想ですの?」


どんな、男性が、好み……?理想……?

何て言ったら良いんだろう。

私はどんな男性が好みなんだろう。

どんな方が理想なんだろう。

考えたこと無かった……!


レオン様みたいな方は素敵ですねって言ったら殿下に失礼だし、殿下みたいな方が素敵ですねって言ったらレオン様に失礼だし、お二人みたいな方ですってまとめて言うのもいかにもご機嫌取りみたいで失礼よね……


お父様みたいな人って言ったらありきたりかな……


他に私の周りには男性なんていないし……


優しい方?魔法が得意な方?

それじゃあ間接的にレオン様が好きって言ってるみたいになっちゃう!

それは恥ずかしい!!


う~ん……


……あっ!!!



「花祭りの日に、私、魔法で失敗して花を出し過ぎて窒息しかけてしまって。けれど、その場に居合わせて助けてくださった方がいたのですが、とても親切で魔法の技術が素晴らしくて……名前も顔も分からないのですが、とても素敵な方だなぁと思いました!」


「えっ……!」

「あら!?」

「なるほど」


ん?何だろう、このお三人の反応。


レオン様は驚いて口許を押さえている。

カリナ様は頬に手を添えて嬉しそう。

殿下は……ニコニコしてる。


私、何か変なこと言ったかな?


「フレイヤ様はお気付きにならなかったのですね。その助けた人はレオンお兄様ですわ」


「え!!!」


「ちなみに、あの時一緒に私もおりましたの」


あ……あの時の……気遣ってくださった女性……が、カリナさま?


「で…でも、あの時、確か、逆光でよく見えなかったけど、助けてくださった方は……イエロー系の髪色で、メガネをかけていて……」


「あの日、兄は周囲の視線から逃れるために変装してましたの」


変装???


頭が真っ白になる。

…………

…………


恥ずかしい!

顔が茹でられたように熱い。


「──!かっ、帰ります!失礼します!!」


誰の顔も見られず、がばりと頭を下げて挨拶をし、逃げるようにその場を去った。物凄く失礼な態度をとってしまった。



なんてこった!

なんてこった──!


あの方はレオン様だったのだ!

いや、猪さんに似てるなぁとは思ったけど、髪色が違って、メガネもかけていたから!まさか、まさか、変装だったなんて……!何で変装なんてするんですか!


「素敵な方だなぁと思いました」じゃないよ!時間よ戻って!さっきの台詞無しにしたい!言い直したい!恥ずかしい!!


時を戻す魔法が使えたら良いのに───!



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