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魔法の星の恋物語  作者: 知香
第4部
121/159

31.眩しい光

頭がクラクラする。

毎夜テオドールが来るから寝不足なのだろうか。

無詠唱での風魔法を習得する為に訓練をし過ぎて魔力を使い過ぎただろうか。


目の前が真っ暗。

ああ、寝てるのか。

寝てるのに頭がクラクラするってどういうことだろう。


こんなに寝てて大丈夫だっけ?

そうだよ、テオドールが今夜もやって来てしまう。


起きないと……


何かが首をなぞり、ぞくっとする。


そこは……まだ消したくない思い出がある場所。

触らないで。たった1人の人以外には触られたくない場所なの。


チクリと痛みを感じる。


……違う。痛い。


痛みで目が覚めて、視界がぼやけながら誰かいることに気づく。



「ああ、起きたね」


この声は……


「テ……お……」


舌が回らない。

どうなっているの?


あまり明瞭にならない視界を必死に凝らして見つめる。目の前にテオドールがいる?


また首をなぞられる。テオドールの指?


「やっ……!」


必死に抵抗しているつもりなのに、声が出ないし手が震えて上手く動かせない。


「ここ、塗り替えてあげたよ」


首をなぞりながら言う。

どうして……どうして塗り替えてしまったの。

消したくなかった。

触られたくなかった。

見られたくなかった。

私の大切な……レオン様が私に思いを寄せてくれた証だったのに。


声も出せないし、体も動かないのに、悲しくて悔しくて涙だけが溢れ出てくる。


「なん……」


「ん?何でって?塗り替えたこと?今のこの現状のこと?」


そんな風に疑問系で返されても、まともに話せないの分かっているくせに。


「君、魔力が高くてあまり魔法が効かないからさ、夕食に睡眠導入剤を入れて、あと君にあげた花束の花に、痺れ粉を振りかけておいたんだ」


その為の花束だったのか。何が愛だ。

視界は未だにぼやけているけれど、寝台から起き上がれない私にテオドールが覆い被さっているのは分かる。

こんな無理矢理のどこに愛があるの?あの花束を持ってきた男性の言うことはやっぱり嘘だったんだ。


何も優しさがない。気遣いもない。全然……全然違う。


「ああ、ちなみに、食後眠った君からいつも世話をしてくれる女性がネックレスを外したから、今日はもうネックレスは守ってくれないよ」


用意周到だ。そうだ、あのネックレスは女性の手は弾かないのだ。


「それに……君がその痕をそんなに大事そうにしているの見てたら、何か、腹立ってきてさ」


表情はよく見えないけれど、声が、少し鋭い。怒っている気がする。


「今日で忘れるんだね」


忘れるなんて出来るわけがないのに。


必死に無詠唱で風魔法を起こす。昼間練習したけど成功はしなかった。


(お願い!風よ、起きて!)


私の体を柔らかな風が包む。次第に大きく強くなっていく。

やっぱり人間、いざという時に力を発揮するらしい。


「くっ……!」


昨年、浮遊魔法の訓練の時、レオン様が教えてくれた。私は風魔法との相性が良いと。風魔法は一番の武器になると。


(このまま……テオドールを、窓から追い出して!)


なのに、フッと一瞬にして風魔法が消えてしまった。


(何で……?)


「無詠唱で風魔法ね……凄いね。残念だけど、その体の状態じゃ集中力が弱くて私の魔力の方が強いみたいだよ」


……魔法解除されてしまったのか。


もう、どうしようもないの?


「諦めなよ」


顔が近づいてくる。どうにも逃げられない。目を強く瞑ることしかできない────



その時、眩しい程に辺りが光った。目を瞑っていても視界がぼやけていても眩しいと感じる程だ。

またネックレス……?


「俺の婚約者から離れろ」


シュッと風を切る音が聞こえた。キラリと光る物……剣?

そして、1番聞きたかった声も───


ガッと一瞬のうちに喉を掴まれた。


「かっ……はっ……」


苦しい。息が出来ない。


「突きつけてるその剣、納めてよ。でないと彼女の首をこのまま絞めるよ?」


「っ!………」


目が霞んでいるけれど、すぐそこに夜の闇に溶けてしまいそうな黒髪の騎士がいる。

見間違える筈がない。聞き間違える筈もない。


剣を下ろし後ろに下がる。


どうして……どうしてここにいるの?


「君……どうやってここに来たの?」


「……剣を下ろしただろう。その手を離せ」


はぁと溜め息をついて、テオドールは手の力を緩め離した。


「かはっ、はっ、はっ、はぁ……」


喉を絞められ呼吸が儘ならなかったので、手が離れ酸素を求めて何度も呼吸を繰り返す。

まだ絞められているような感覚が残っている。喉がひりついて痛い。


「離したよ?で、どうやって来たの?」


「お前に答えてやる義理はない」


「うわ~、私は言うこと聞いたのに」


さっきの光はネックレスじゃない。

あれは、私は何度も使って知っている転移魔法の光じゃないだろうか。


首を掴まれ苦しさから目が覚めてきた。視界が少しずつ元通りになっていく。


ああ、やっぱり……

レオン様がそこにいる。


「君さ、彼女からの婚約解消を伝えられたんでしょ?さっき何で『俺の婚約者』って言ったの?」


「……お前には関係無い。俺と彼女の問題だ」


……レオン様、怒っている気がする。

顔は無表情だけど、体から鋭い気が漏れ出ている。


「連れ戻しに来たの?わざわざ彼女が身を呈して始まりの魔女と君の命を守るためにここに来たのに」


「俺の命?」


「君じゃ私には勝てないでしょ?この間ボロボロになったじゃないか」


「……そうか。じゃあ、試そうか」


レオン様が剣を構える。


「今日は剣?いいよ」


テオドールは魔法で剣を出す。

こんな狭い部屋で打ち合いをするつもりなのだろうか。


私の周りにシールドが張られた。


「あっ……!」


こんなことをするのはレオン様だ。私に当たらないように……魔力を無駄に使わなくていいのに。


そう伝えたくても、声はまだ上手く出せない。舌が回らないし、さっき首を絞められ喉をやられたからかもしれない。


ドンドンとシールドを叩いてみるけれど、私の方を向いてくださらない。2人とも、もう構えてしまっている。


お互いが踏み込んで打ち合いになる。


レオン様はアカデミーで1番強かったのに、テオドールは全く動じることもなく、剣も強い。


激しい打ち合いが続く。

けれど……無表情のレオン様に対してテオドールは少し険しい顔をしている。


アカデミーの仮装トーナメント大会は木剣だった。今日は真剣。キンッと高い音が室内に響く。そして一撃がとても重そうだ。重い剣撃を受け止める度に、テオドールの顔は面白くなさそうな表情になる。


速い連続の撃ち込みの最後の重い振りで、テオドールの剣が真っ二つに折れた。折れた剣先がクルクルと回転して、床に突き刺さる。そして魔法が切れ消えてしまい、床には剣の傷跡だけが残った。


「あーあ、折れちゃった」


武器破壊されても動じないテオドール。この人はどこまで本気でどこからふざけているのだろう。掴めない人だ。


「降参か?」


「次は魔法で行くよ」


花瓶に差してある花を1輪取ると、茎がニョキニョキと伸びていく。枝分かれして何本にもなった茎がレオン様の周りを囲む。

1本1本が意思を持っているかのように伸び、縛り上げようと襲いかかる。


レオン様はそれを斬っていくが、斬った先からまた伸びていく。数が多いから斬り損ねた茎がレオン様を捕らえてしまう。


(どうしよう!私に何か……何か出来る魔法……)


喉が痛くてまともに詠唱が出来ない。無詠唱で出来るのは……


指を振り魔法解除をする。

すると茎がパッと全て消えた。


「!?、……君が解除したの?」


テオドールがこちらに向いて聞いてくる。

話せないので睨み返す。


「ふーん……」


冷たい顔になる。怒らせてしまったかもしれない。


瞬時に火の玉が飛んできた。


「ああっ……!」


火の玉がシールドに強く打ち付ける。数が多くてシールドが凹んでいく。このままじゃ持たないかもしれない。


「やめろっ!」


レオン様がテオドールに強い一撃を撃つ。防御魔法のせいか斬られはしなかったが、強い衝撃を受け吹き飛び壁に強く打ち付けられる。


「ぐっ……!」


衝撃のせいかテオドールの魔法が止まった。シールドはもう殆どグチャグチャだったけど、フッと消えると次は力強い腕に囲われた。


レオン様に片腕で抱き締められていた。


いつもよりもずっと強い力で、苦しいくらいに。


直ぐに体が少し離れ、目が合う。顔は無表情なのに、アンバーの瞳はどこか悲しそう。

レオン様に支えられ立ち上がり、テオドールの方を向く。


「もう降参しろ」


「……何故しなければならない?衛兵達をここに呼んでやるよ」


「無理だ。今頃制圧されている」


「何?」


「俺1人でここに来た訳ではない。魔力を探ってみろ」


他にもここに?


レオン様の言葉に驚いて、私も探ってみる。

お世話係の女性も、花束を持ってきた男性も、いつも感じる魔力が弱くなっている。

そして代わりに……これは……

何人も感じる強い魔力。魔力探知はここに来てから習得したから自信はないけれど、おそらくこの魔力は何度も感じてきたであろう魔力だ。


いつの間に?全然気がつかなかった。


「……何なんだよ、始まりの魔女の直系って。仲良しこよしか?」


「言い得てるな。その通りだ」


仲良しこよし……。


「……お前らは貴族として良い暮らし、良い待遇を受けてきたんだろ?直系ってだけで」


「あの島での暮らしは不満だったのか?」


「狭い世界で……広がりなど無い。なんの刺激も無い」


「こんな町から離れた湖城で暮らしていたら似たようなものではないか」


「そうだな……では、城から出よう」


ゆっくり立ち上がるとテオドールが魔法を掛ける。するとお城の天井や壁がガラガラと崩れ始め、床はグラグラと大きく揺れ、立っているのが辛い程の揺れにふらついてしまうのを、レオン様が抱き寄せ支えてくださる。


「浮遊で外に……!」


「っ……!」


でもこのまま城が崩れてしまったら、他の方達が瓦礫に埋もれてしまわないだろうか。


捕まったであろうお世話係の女性も、花束を持ってきた男性も、料理を作ってくれた方も、他の人達も。


それは嫌だ。

だから精一杯の魔力を込めて魔法解除をする。


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