表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の星の恋物語  作者: 知香
第4部
120/159

30.攻防戦

あの夜から暫くテオドールを見なくなった。


私はお世話係の女性に魔法書を沢山持ってきて貰い、読みながら魔法を使う日々を繰り返していた。


魔法書には気配消しや気配察知、魔力探知等も載っていたので、その練習をよくやった。いつも突然テオドールは来るから、察知くらい出来るようになりたいのだ。そして勝手に侵入されないように、窓も扉も魔法で開けられないように魔法でロックした。


初めは牢屋のようだと思った部屋も、完全なるバリケードを張って自らそこに居座り、テオドールとの遭遇を避けた。

テオドールを見なくなったのはその成果ではないかと思う。


お世話係の女性も魔力があるので、いつも近づくと察知が出来た。とても良い訓練になっている。


女性が来れば扉に掛けた魔法のロックを解除する。繰り返しているうちに、前まで無詠唱の魔法解除が出来なくてエミリオ様にまで相談していたのに、指を軽く振るだけで解除出来るようになった。

人間、危機的状況に陥ると予想だにしない力が発揮されるものなのだなと実感した。練習よりも実践で身に付けられるものが多いのだろう。



まぁ……いつまでもこれが通用するとは思えないけれど、逃げられるところまでは逃げよう。

当然テオドールの書籍類だと思うので、テオドールはこれらの魔法を扱える筈だ。突破しようと思えば出来るのかもしれない。しかし何せ私は魔力が高い。そう簡単に突破は出来ないだろう。





と、思ったのに。4日目にしてまんまと侵入されてしまった。


「面白いことしてるなって思って暫く見てたんだけど、どんどん上達していくからさ。君って、やっぱり魔力が高いんだね」


夜寝ている間はバリケードをキープ出来ていなかったらしい。寝ていたら冷たい風が吹き込んできて目を覚ましたらまた窓からテオドールがやってきていた。


窓枠に腰かけている。

今日も窓からだ。普通に扉をノックして欲しいんだってば!


「……勝手に、入って来ないで頂けませんか?」


「私と君の仲じゃない」


どんな仲!?

ニコニコとした笑顔が憎らしい。


「何の御用ですか?」


「決まってるじゃないか。夜這いに来たよ」


「!?」


あからさまに言い過ぎ!?

こっちは避けて逃げて会わないようにしているのに、それを分かってて来るなんて……。

メンタル強いな。


「さて、どうする?」


窓枠から降りて寝台に近寄ってくる。これは不味い!寝台で待っているような状況は駄目な気がする。寝台から慌てて降りて逃げようとするけれど、簡単に腕を捕まえられてしまった。


腕を引っ張られ抱き寄せられる。


「まだ逃げる?」


顎を掴まれ顔が近寄ってくる。


─────っ!


「無理!!」


ドーンと、強くテオドールの体を押すのと同時に風魔法で吹き飛ばし、窓から外に追い出した。

間髪入れず窓を閉め魔法でロックする。


「あははははっ!面白いねー!」


何が面白いのか私には分からないけれど、窓の外で浮遊しながら笑っている。


「いいよ。今日はもう侵入しないから。おやすみ~」


…………


本当にもう来ない?

テオドールはスッと姿を消した。


へたりと床に座り込む。

何とか今日も逃れられた。

でもこれがいつまで持つか……。




それ以来毎晩テオドールはやってきた。


また寝ている間に窓から侵入されそうになったけれど、窓の内側にもシールドを張っていたので入られずに済んだ。そのシールドに触れた瞬間の魔力のぶつかる気配で目が覚め、テオドールを閉め出したままに成功した。やれば出来る!



でも次の日の夜は思いっきり魔法でシールドを破壊されて侵入されてしまった。


「もうっ!普通に扉をノックしてくれませんか!?部屋を破壊する気ですか!?寒いじゃないですか!?」


文句をたらたら言ってやった。


「そんな普通に来たら夜這いじゃなくなるよ。部屋が壊れたら私の部屋に来ればいいし。寒いなら抱き締めて温めてあげるよ?」


「そういう問題じゃない!」


本当にこの人、どうなっているの!?


「そんな照れなくても。いい加減、素直になったら?」


「違うっ!!!」


再び風魔法で吹き飛ばし追い出してやった。



そして次の日の夜は私が言った通り、扉をノックしてやって来た。ノックの後、私の返事なんて待たずに勝手に開けられたけど。いつも窓から来るから窓ばかりに気を取られ、魔力が偏り扉のロックが疎かになっていたのかもしれない。


「……」


「君が言ったんだよ?扉をノックしてって。ご要望にお応えしてノックしたのに、そのイヤそうな顔は無いんじゃないの?」


言ったけど、出来れば来ないで欲しい。言えば要望に応えてくれるの?


「……もう、来ないで欲しい、です」


「その要望は応えられないな」


今日もニコニコの笑顔が憎らしい。


ガックリしている私の隙をついてサッと部屋に入ってくる。


「ちょっ……!」


私に文句を言わせる間も無く間合いを詰めてくる。こうなったら窓から浮遊して逃げるしかない!そう思って背を向けたのが悪かった。あっという間に後ろから抱き締められてしまった。


「んっ……!」


しかも、口を手で抑えられ、魔法の呪文が唱えられない。


無詠唱で出来るのは魔法解除だけ。こんなことなら風魔法も無詠唱で出来るように練習しておけば良かった。


「そろそろ追いかけっこもおしまいにしよう」


私は追いかけっこをしていたつもりはないのだけど、それで許して貰えていたのならまだ追いかけっこで良いです!


両腕をしっかりホールドされるように片腕で抑えられ抱き締められている。力が強くてほどけない。


「……首のところ、もう2週間経つのに、まだあの婚約者の執着の痕が残ってるんだね」


見られた。


あの舞踏会の夜、レオン様が付けたキスマーク。沢山あったけどもう殆どが消えて、いつも悪戯で付けられていた首のところだけ残っていた。


どこかで消えないで欲しいと思っていた。あの日の大切な熱い思い出。私の思惑は叶わなかったけれど、大切に、でも強く私を求めてくださった。思いを持たれていると感じれた時間だった。

優しいキスに、思いやりのある言葉に、大事そうに触れてくれる手。その全てを本当にあったことだと証明してくれる痕だ。


テオドールに見られたくなかった。

私だけの、大切な思い出なのに。


「この痕、塗り替えてやるよ」


(塗り替える!?)


「んっ!」


(やだっ!)


体をくねらせて抜け出そうとするけれど、強い力で抑えられてしまう。


首に何かが当たる。テオドールの唇だろうか。見えない後ろからのせいで余計に怖い───!



その瞬間、私の胸元が光った。

同時にバチッと静電気のようなものが体の表面を走る。


「いたっ……!」


テオドールの声と共に拘束が取れる。

振り返るとテオドールの両手が赤くなっていた。


(もしかして……ネックレス?)


確かさっき胸元が光った。

ドルバック伯爵が私のネックレスを外そうとした時、こんな風にネックレスに触れた手が赤くなっていた。首にキスする時にネックレスに触れてしまったのだろうか。

もしくは私の拒否の感情をネックレスが読み取って電気を流したのだろうか。


思わずネックレスをギュッと握り締める。


「ああ……ドルバックが執心してた魔道具のネックレスか」


はぁとテオドールが溜め息をつく。


「手、赤くなって痛くて君を抱けそうもないし、今日はもういいや。おやすみ」


そう言うとちゃんと扉から出て行った。


ネックレスを外していなくて良かった。いつもは就寝時は外すけれど、今日はまだ寝る前で外していなかった。外していたら危なかっただろう。


……今後一切外すのは止めておこう。


テオドールの気配が遠くなって、やっとホッとする。


「ソフィア様……ありがとう……」


ソフィア様に守って貰えた気がした。両手で握り締めたネックレスの石がキラリと光る。

ふらふらと寝台に向かって行って、ボスンと座る。


そして首に手を当てる。


(良かった……塗り替えられなくて、良かった……)


痕1つ失うのさえ怖い。いつかは消えてしまうのに。

分かっているけれど、ずっと、消えないで欲しいと思ってしまう。




翌日の午後、ここに訪れたことの無い男性の気配を感じた。そして扉をノックされたので扉越しに話し掛ける。


「……どなたですか?」


「テオドール様に仕える者です」


「ご用件は?」


「テオドール様からの贈り物をお届けに参りました」


「贈り物?」


何だろう。これまで贈り物なんて無かったのに。どう言った風の吹き回しだろう。


警戒しながら恐る恐る扉を開ければ、目の前には溢れんばかりの大きな花束があった。色とりどりの様々な種類の花が競うように咲き、香りを誇っている。


その色の鮮やかさに目をパチパチしてしまう。


「どうぞ、お受け取りください」


「はあ……」


受け取るとずっしり重い。素直に綺麗だと思った。


「テオドール様からのお気持ちですから」


「お気持ち……」


「愛ですね」


「!?」


いやいやいやいやいやっ!

愛って!?

そんな素振りゼロじゃありませんでした!?


本当に何を考えているのだろう。


お世話係の女性に大きな花瓶を持ってきてもらい生けてもらった。

今は冬なのに、ここだけ春のよう。

花束の中にはガーベラがあった。ピンクにオレンジに黄色……。


黄色のガーベラの花言葉は≪究極の愛≫だった。テオドールが愛を伝えてくるなんて信じられない。


黄色のガーベラを見て、どうしても私が思い出すのは、琥珀色の瞳のあの方なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ