表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の星の恋物語  作者: 知香
第1部
12/159

12.湖畔

少し時間は遡る────



「レオン、何か落としたぞ」


今日はまだ春なのに夏を感じさせる程暑い日だった。ポケットからハンカチを取り出して汗を拭いていたら、殿下に言われ、ネックレスのことを思い出した。ハンカチを取り出したときにネックレスが一緒に出てしまい、落としたようだった。


「やばっ!失くすとこだった……」


人の落とし物を拾っておいて、さらに別のところで落として失くすなんて、失礼すぎる。

慌てて落としたネックレスを拾う。


「何でそんなものを持っているんだ?女物のネックレスじゃないか」


「昨日、拾ったんです」


昨日の出来事を簡単に殿下に話す。


「なに!そんな面白い展開になっていたとは」


「面白いって……人で面白がらないでくださいよ」


「で、どうするんだ?それ」


「アカデミーに居るわけだし、何処かで会ったら渡そうかと思ったのですが、そう言えば顔が分からないんですよね……。事務室に落とし物で届けた方が良いかなと思って、あとで行くつもりでした」


「普通、落とし物に気付いたら、まずは落としたと思われる場所に探しに行くだろ?拾った場所に行ったら良いじゃないか」


「でも、顔が分からな──」


「いいからいいから、行ってこい」


やたらと行かせたがるな……。

人の言葉を遮ってまで、何か企んでいるのか?

殿下の顔がニヤリとしている。


「おぉーい、れおんー」


「今日はあちーな。風魔法起こしてくれよ」


友人達が机にダラリとしながら言ってくる。


「……人を冷房扱いするな。自分でやれ」


「氷との合わせ技のコントロールはレオンが一番上手いじゃないか」


「頼むよー」


「はいはい!お前ら、授業は終わったぞ。ダラダラしてないでさっさと帰れ。レオンはこれから用があるから引き留めるなよ」


「殿下ー!」


「そんなこと言わないでくださいよー」


ほんと、この方は俺を行かせたがるな……。


まあ、冷房扱いされるよりは良いか。


そう思って俺は湖畔へと向かうことにした。



◇◇◇



そして湖畔で馬の子がいないかと見渡してみるが、やはり周辺にはおらず、今日は諦めることにした。

湖畔に来たら昼寝だろと思ってごろんと寝っ転がったところへ、突然目を開けていられない程の光が上空で輝き出し、陰になったので目を開けると、令嬢が現れた。


驚いて思考を働かせる間も無く、寝転がっている俺の上に落ちてきたわけで……。


………

……………………………

……………………………


顔を上げて目を開けた令嬢と暫く見つめあった。


(この子……すっごい唇……!!!)


びっくりするくらいぽってりぷっくりとして艶のある唇だった。


(そして、何故鳥が頭の上に……???)


初対面の人に釘付けになるのなんて、初めてのことだった。


可愛いとか綺麗とか、親族にはそんな女性ばかりなので、可愛い顔や美しい顔には見慣れているが、こんな魅惑的な唇の持ち主は見たことがなかった。


化粧をした大人の女性の唇は艶があるが、何と言うか、作り物ではない天然物の艶やかさ。

そして、大袈裟に強調された腫れているような唇とも違う。


自然で美しく滑らかな、ピンクに近い赤い唇。


まじまじと唇を見つめてしまう。


「…………」

「…………」


お互いに無言の時間が続く。



どのくらい固まっていたか分からないが、突然彼女がハッとした。


「ごごごごっ…ごめんなさい!!!」


慌てて俺の上から飛び降りて後退った。

それに俺もハッとして、女性の唇に視線を集中させてしまっていたことに、しまったと思った。


「突然乗ったりして!いえっ!わざとじゃないんです!ごめんなさい!ごめんなさい!!」


なんか、昨日もこんな感じの台詞じゃなかったかな。


「いや……えっと……、怪我は、ないですか?」


「大丈夫です!何ともありません!むしろそちらこそ怪我していませんか!?」


「大丈夫です」


「本当ですか!?無理していませんか!?」


「だ……大丈夫です」


「ほんとうに、ごめんなさいー!!」


そう言って、両手で顔を覆って俯いてしまった。手の隙間から顔が赤くなっているのが見える。


(このシルエット……見覚えが……)


そう、花祭りのときの、馬車に乗っていた令嬢もこんな感じで恥ずかしがっていた。


そしてこの声。

後ろ姿だったけれど、昨日見た栗色の髪。

賑やかな感じも。


「あの……もしかして、仮装トーナメント大会で馬に変身してた方ですか?」


「!!!、そうです!」


勢いよく顔を上げて、再び目が合う。

探るような視線を向けてくる。


「……いのしし、さん?」


「あ、そうです……」


「あの……違っていたら申し訳ないのですが……もしかして、貴方は……レオン様、ですか?」


「ええ、はい……」


「昨日はっ!ここで立ち聞きしてしまって、いえ、正確には立ってなかったんですけど!ほんとうにすみませんでした!昨日も、今日もですけど、わざとじゃないんです!」


「ああ、いや、大丈夫ですから。それより、昨日ネックレスを落としましたよね?ネックレスのチェーンが切れてましたよ」


ポケットから青い石のネックレスを取り出し、ぶら下げて前に差し出した。クルクル回る青い石が、太陽の光を反射させて、キラキラと光った。


「あ───!あった───!」


彼女はとてもほっとしたような表情を浮かべている。ずっと探していたのかもしれない。俺が持っていることで、見つけられず困っていたかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちになった。


「良かったぁ!ありがとうございます!しかもチェーンを直してくださったんですか!?本当にありがとうございます!」


ネックレスを受け取って、チェーンを確認した後にふにゃりと笑った顔に、胸がいっぱいになる。


(なんだ……この感じ……)


「ネックレスを探して転移魔法をしたんです。失敗するかもと思ってたんですけど、ちゃんとネックレスのところに転移出来ました!あっ!でも上に落ちて乗ってしまって、本当にすみませんでした!」


「転移魔法!?凄いですね」


「いつもは高等魔法なんて出来ないんですけど、何故か今日は出来たんです」


「転移魔法が出来るなんて、本当に魔力が高いのですね」


「!!!、覚えていてくださって、ありがとうございます!」


インパクトが凄かったからな。お陰で会話内容は覚えている。

魔法レッスン場の爆発音とか、ケンタウロスのような馬とか、竜巻とか、花の馬車とか……。


そして、今も……


「ちなみに、その頭の上の、鳥は……?」


「えっ!あっ!忘れてた!一緒に転移してこれたのね」


彼女は見えない頭の上を探って、鳥を探す。青い鳥はパタパタと羽を羽ばたかせて、今度は彼女の肩に止まった。


「えっと……ともだち……です」


「友達?」


「小さい頃、家に引きこもっていたので友達がいなくて、この子達が友達だったんです」


「そういうことか」


そう言えば、魔力暴走を起こしてしまう為に、家に引きこもっていたと言っていたなと思い出した。


青い鳥を見つめると、鳥が首をコテンとさせた後、パタパタと俺のところに飛んできた。手を出したら人差し指に止まった。


「君も一緒に転移してきたんだね。羨ましいな。転移魔法はしたことがないから、見てみたいな」


「……魔法書を置いてきてしまったので、呪文が分かりません……」


「ん?てことは、転移出来ないの?ここからどうやって帰るの?」


「…………歩き、ですかね」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ