11.隠れ家
「う~ん、ないなぁ……」
どこかでネックレスを落としてしまった。
昨日のいつ落としたのか分からないので、行ったところをくまなく探すが、どこにも見当たらない。
アカデミーの教室にも、食堂にも、魔法レッスン場にも無く、事務室に落とし物が届いていないか確認にも行ったが、無かった。
そしてレッスン場の裏手の湖畔に来て、こうして探しているのだが、見当たらない。
髪と服を乾かした場所にも、ツツジの木の周辺も、逃げ去ったときに通った道にも無いのだ。
(どこで落としたんだろう……)
気に入ってたのに。失くしてしまった。
(はぁ……)
最近溜め息ばかりだ。魔法で失敗ばかりして、こうしてネックレスまで失くしてしまって。恐らく、大事なネックレスだろうに……。
今日は汗ばむ陽気で体も、もちろん気持ちもぐったりしてしまい、もう探すのを諦めて家に帰ることにした。
(元気が出ない時は、あの場所に行こう!)
◇◇◇
アカデミーから家に戻り、邸の一番奥にある青色の扉を押し開ける。
この扉は魔法の扉。
始まりの魔女のソフィア様が作った扉らしい。この扉の先は、我が家の領地内の森の中にある家に繋がっている。
始まりの魔女の3人が一番最初に作った隠れ家だ。
ここには沢山の本がある。魔法書だけでなく、地球の様々な国の本や、この星の伝記らしきものまで、書斎の四方の壁にビッシリと並べられており、図書館のような家だ。
この書斎の椅子に座り、背にある縦長の窓から森の木漏れ日を浴びながら、本を読むのが好きなのだ。
あの青い石のネックレスは、この書斎机の引き出しで見つけた。だから恐らくソフィア様のものなのではないかと思う。
少し窓を持ち上げて開けると、森の涼しげな風が吹き込み、青い鳥が1羽飛んできて窓辺に止まる。私の方に首を回し、チチチと鳴く。
「私、ここにあったネックレスを失くしてしまったの。ご先祖様のものを失くすなんて、罰当たりよね」
私は小さい頃魔力暴走を起こしていたので、家からほとんど出たことがなく、アカデミーに入学するまで友達もいなかった。
なので、この森の動物達が友達だった。
この家の周辺はソフィア様がかけた結界が未だに張られており、安心してこの森で遊べたのだ。
話し掛けた青い鳥は、首をコテンコテンと左右に倒して、またチチチと鳴いた。
鳥が何と言っているのかさっぱり分からないので、勝手に慰められたと受け取ることにした。
椅子に座って、この間来た時に読んでいた本の続きを読むことにした私は、机の上に置いたままの本をペラペラとめくった。
青い鳥は私の肩に乗り、一緒に読書するようだ。
私にはまだ扱えないような魔法が載った魔法書。いつか使えるようになったらいいなと思いながら、今日も読む。
基本的に、魔方陣を出現させる高度な魔法だ。ある一つの物体だけ時間を進めたり戻したりする魔法や、未来を視る魔法、逆に過去を視る魔法等。
実際に試したこともあるが、何も起きなかった。魔力は高いが、私には何かが足りないのだろう。
また1ページめくると、今度は転移魔法。
(そう言えば、これは試したことが無かったわ)
移動距離によって消費する魔力も違うらしいが、始まりの魔女達は平気で地球まで転移していたそうだ。しかも、地球から移住者数人を同時に転移させて来たらしいから、やっぱりご先祖様達は凄いのだなと思う。
私とは大違い……。
(だめだわ!また落ち込んでしまう!)
雑念を振り払い、本に再び視線を戻し、転移魔法のやり方を読む。
*****
魔方陣を起こし、行きたい所だけを思い浮かべ、魔方陣に魔力を流す。
*****
……これだけなのよね。魔方陣の呪文は載っているけれど、基本説明文が短い。他に無いのかな?コツとか、さ。
説明文が短いから、じゃあ簡単なのかなって思うけれど、いつも全然出来ない。
(行きたいところか……。失くしたネックレスのあるところに行きたいわ)
思い立ったら即行動!
たぶん、私の良いところ。
と言うことで、このやったことの無い転移魔法に挑戦してみることに。
スクッと椅子から立ち上がると、青い鳥がビックリしたのか肩から飛び立ち、何処かへ行く……かと思いきや、今度は私の頭の上に乗った。
なぜ、そこ?
まぁ、いいや。
一緒に転移してくれるのなら心強い。
本を見ながら呪文を唱え始める。
すると、魔方陣が浮かび上がってきた。
(行きたいところ、行きたいところ……青い石のネックレスが落ちているところ!)
魔方陣に手を翳し、魔力を流して行きたいところを強く思う。
…………
…………
何にも起きない。
(やっぱり駄目だったか……)
と、思った瞬間、魔方陣が光った。
(えっ!光った!?ネックレス────!)
目の前が光で真っ白になる。眩しくて目を閉じる。
なんか、頭がぐるぐるして、体もふわりと軽くなり、……酔う。
「えっ!なっ……!」
あれ?誰かの声がする。
あれ?私、落下してる??
「きゃ────!」
どさっ!!!
「わっ……たたた……」
「イタタ……」
うううっ……
痛い。
気持ち悪い。
また誰かの声がした。
……何か、踏んでる気がする。
眩しさが無くなったので、ゆっくり目を開ける。
……
………………
…………………………
…………………………えっ!?
男の人の上に落ちていた。
直ぐ目の前に顔がある。
黒髪の………
(なっ……なに、この人!超絶美形なんだけど───!!!)




