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風雲急を告げる

国王様と王女様方との面会はわずかな時間だけだった。

「愚弟の始末をつけてまいる。しばし待て。」

その言葉だけを残して席を立っていった。


残されたシャーロット第1王女に尋ねる。

「グルーンにおいて『頼れるのは私だけ』と言われました。しかし、グルーンには2人の代表もいますし、近隣には貴族もいます。考え直しては?」

少し考えれば選択肢はいくらでもあったはずなのだ。

「いいえ。グルーンに借りを作って今以上の力を与えるわけには参りません。貴族達には与えるものは我が身のみ。近隣には王族に迎えるに相応しい貴族はおりませんでした。

対してオルファン様は英雄として、慈善者として名声を得ておりました。またドラゴンゾンビを倒す武や父より得た財貨もあります。

5年後、10年後を考えた時、オルファン様以外に頼れる方はいませんでしたわ。」

にこにこと考えを話してくれるが、考えが深すぎる。いかに身を守るか、ではなく10年後まで考えていたと言う。

さすがは「王国の至宝」と言うべきか。

美しいだけのホワホワした人かと思っていたんだけど。


「殿下なら最初の挙兵で勝てたのでは?」

大兵力を擁していたのだ。これだけ考えていたのならば勝敗を考えていないはずはない。

「私が貴族達を取り纏めている間に、エリー(エリザベートの愛称)が大兵力に舞い上がっていたもの。あの時は私の話を聞ける状態じゃなかったわ。」

「妹が王族として命じた事を姉だからという理由で取り消すわけにはいかないの。王族としての重さを問われてしまうわ。」


・・・・。

「そこまで話していいんですか?」

本来なら隠しておくべきじゃないのか?

「あらあら。私は既にオルファン様の物でしょう?

オルファン様にその気がなくとも。

そろそろ王族に入る覚悟を決めていただきたくて。」

逃げる気だった事もお見通しらしい。

「私は気楽なのが好きなんです。自由に、のんびりと旅をしたい。じっくりとダンジョンを攻略したい。貴族になって戦争なんてこりごりです。」

バレているのなら偽らざる本音を伝えよう。

話を打ち切って立ち去る。話していたら説得される。そんな直感があったから。

「あらあら。困りましたわ。ミカサ王国に嘗ての力はありませんもの。」


巨大な天幕の中で兄弟の対面が行われている。

勝者としての兄、謀反人としての弟。

貴族達も並び、処罰を見守る。

「愚かな弟よ、何ゆえ余に逆らう。」

地面に座らせられたプリンバイン大公ではあるが、王族への配慮として縄などは掛けられていない。

対して国王は見下ろすように椅子に深く腰掛けている。

「正統な王が正統な評価を受けるべきなのだ!!

儂、いや余こそが、余こそが!正統な王!!

余が評価されぬ世など!!」

会話が成り立たない。

叫び、吠え、ブツブツと呟く。

「せめて最後くらいは王族として振る舞え。」

国王の右手が上げられると従者が酒を持ってくる。

「兄としての情けだ。苦しまぬ毒を選ばせた。

安らかに眠れよう。」

毒と理解したプリンバイン大公が悲鳴を上げて後ずさる。

「ヒィ!ヒィィ!!」

だが後ろには兵士達がおり逃げ出せない。

「あ、あ、あ、ア、アニ、兄上~!!」

突如、叫び声をあげて獣のようにプリンバイン大公が国王に飛び掛かる。

兄に怯えつづけていた弟の初めての行動に国王は驚き、目を見開いた。すぐに剣に手を掛ける。

2人が椅子事倒れた。

すぐに騎士達が駆け寄る。

剣に刺し貫かれたプリンバイン大公と首を折られた国王。2人の遺体がそこにはあった。


混乱の最中、ムスカ侯爵は配下のガストン伯爵と今後の対応について話し合っていた。ムスカ侯爵の派閥は大きくはい。だが、優秀な者ばかりを集めてあった。

ゆえに国王軍挙兵の中心となっていた。

「陛下が急死された以上、クロウ殿下に即位していただかねばならぬ。王城攻略はここまでか。」

「何ゆえ王城攻略を諦めるのです。すでに準備は整っておりますのに。」

「陛下が亡くなられたのだ。貴族や兵も動揺しておる。逃げ出す者やクロウ殿下の元へ向かう者も出よう。このままでは戦えぬわ!」

「王女殿下がおりましょう。」

「国王陛下の(めい)ゆえ従っておった貴族が多いのだ。いち早くクロウ殿下の元へ向かい、新しい国王陛下の覚えを良くしようとする貴族が殆どであろう。」

「そこが解らぬのです。シャーロット様に女王になっていただけば良いのです。」

「それでは国が割れるぞ!!納得せぬ者が多すぎるわ!!根回し無き謀略がどうなるか解らぬ貴様ではあるまい!」

「私ならば可能です。私の才ならば!

私がシャーロット殿下の婿になり、王となる。

私が戦争から政治から外交まで全てをしましょう!

殿下は象徴として輝いてもらえば良い!」

「尚更貴様達は従わぬぞ!」

「従えるのです!私なら出来ましょう!!」

その言葉と同時に短剣でムスカ侯爵の腹を裂く。

「貴様!!」

「閣下にはお世話になりました。しかし、私の案に賛同いただけぬのなら退場いただくまで。」

そう言うとガストン伯爵は天幕を出ていく。

「愚か者めが。貴様は才に溺れるあまり他者に嫌われておる事も気付いておらぬ。『才はあれど上には立てぬ。』それが貴様の評価よ。」

ムスカ侯爵の最後の言葉を聞いた者はいない。

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