掌握
行軍は粛々とは進まなかった。
バラバラと進んでいるし、だらけている。
王女様方はそれが御不満らしい。
休む時も整然とテントを張るわけでもなく、それぞれが勝手に寝るだけだ。
食事だけはデリーが1日2回、パンとスープを支給していて皆が群がっている。
こちらが食事をしていると「寄越せ」と言ってくる度胸は凄い。ただし、ドワーフが睨むと逃げ出すが。ドワーフ達の酒に手を出そうとして殴られた者は両手では足りない。
女性達のテントに忍びこもうとした者は50人を超える。これも女性達の不満を大きくしていた。
ガイド傭兵団を突き放すわけにはいかない。
まだ戦力が必要なのだから。
だが、彼等を助けたいという思いはない。
今は敵ではない。そういった認識にまで変わってきている。
ガイド傭兵団のテントで会談を行う。
「ガイド団長。悪いが見張りをおくぞ。」
「オルファンの大将。見張り程度じゃアイツらは止まらないよ。俺の言葉もまともに聞かねぇ。」
「ああ、もう言葉が通じるとは思っていない。何度も注意と警告はしたのだから。」
遠くから悲鳴が聞こえる。
いや、悲鳴が拡がっていく。
「何だ?敵襲か?」
「いや、獣が追われてるだけだよ。いや、喰われたか?」
「おい!!大将!!何をした!!」
ガイド団長が怯えている。
「番犬を置いただけです。」
テントを出ると巨大な犬に追いかけられる者達がいた。
「大将!大将!!ありゃ、何だ!!」
「あら?知りませんか?地獄の番犬、ケルベロスですよ。あの三つ首でわかりませんか?」
ガイド傭兵団はもはや恐慌状態に陥っている。
取って置きの召喚魔法陣で2頭を呼んだのだ。
こんな所で使う予定ではなかったのにという怒りがある。
「なんでケルベロスなんて化けもんがいるんだよ!!」
「言ったでしょ?番犬だって。」
後は喚いていたが関係ない。
「言ったでしょ?もう言葉が通じるとは思っていない、と。何度も近づくなと言ったんですよ?」
ガイド傭兵団はオルファン達を舐めていた。
自分達より人数が少ないから、ガイド傭兵団が上だと思って話を聞き流していた。
オルファンの素性すら調べていない。
綺麗な女を連れた貴族のボンボン。
適当に王都を攻めて「活躍」した事にすれば満足すると考えていた。
だが、何だ。この無表情の若造は何だ。
「オルファンの大将!!俺達が悪かった!!ケルベロスを止めてくれ!!」
「ケルベロス2頭では残飯が出ますかね。いや、全て食べれるかな。」
脅しの言葉をはく。
実際には「侵入者に遊んでもらえ。」と命じてある。ケルベロス達はじゃれて、追いかけっこをしているつもりだろう。
転んだりして勝手に怪我をしたヤツは知らん。
「大将!!降伏する!!降伏するから助けてくれ!!」
降伏して違約金と身代金を払うから助けてくれと?
いえいえ働いてもらいますよ。
雇っているんですから。
ガイド傭兵団を平井信正達に掌握させた。
恐怖で統率をとる。
「古の孫武に倣いましたか。さすがです。さすがですぞ。」
古代中国の孫子も従わない者の頚をはねて規律に従わせたという。
ガイド傭兵団はそのままに。平井信正達が上位指揮者となる。ガイド傭兵団を傘下にしてしまうと面倒を見ないといけなくなる。2000人を養うつもりはない。
そして問題が発生。ケルベロスを見た侍達が戦いたがっています。ケルちゃん、可愛いのに。
そして2日で王都が見える場所に到着。
城門と一部の城壁が壊れ、いくつもの煙が上っているのが見える。
戦の音、悲鳴、嘆き。
それらを飲み込み灰塵と帰した王都。
王都攻略戦が始まろうとしていた。




