ガイド傭兵団
一足先に傭兵団との合流地点で待つ。
この世界には正確な時計などない。
グルーンは日の出と日の入りで鐘を鳴らしてくれるだけマシである。
「夜明けに待ち合わせをして、打ち合わせ等をする。その日はそこで野営をして、翌日に出発。」
時間に関してはそれだけだ。
昼過ぎに王女様達が合流して、打ち合わせの内容を説明する。そして傭兵団の紹介をする流れだ。
待ち合わせ場所に次々と人がやってくる。
近隣の農民かと思ったが革の腹当てをしていたり、足だけ金属鎧を着けている者もいる。
行軍ではなく、同じ方向に歩いてきたというレベルだ。ドワーフ達の荷馬車に積んである酒や食料を羨ましそうに見る者達も増えていく。
「あの、オルファンさんですか?」
声を掛けてきたのは40歳くらいの頼りなさそうな学者風の男だ。
「あっ、私はガイド傭兵団の渉外担当をしていますデリーと言います。」
やたらとペコペコしている。
「えー、ガイド傭兵団、2000人。到着、したかな?」
俺に聞いてどうする?
「団長殿は?」
「えっと、来てませんか?」
だから、俺に聞いてどうする?
デリーの話を聞きながらガイド傭兵団の団長を待つ。デリーはガイド傭兵団の4人の幹部の1人となる。元はある国の下級役人であった。
読み書き、計算ができたためにガイド傭兵団の渉外担当、経理担当、補給担当をしている。
団長はどこかで街の警備隊隊長をしていた人だという。副団長は元冒険者。後はヤッサという元棟梁が幹部だそうだ。
ペラペラと傭兵団の内情を話しているけど、そんな人が幹部で大丈夫か?さらに、こんな傭兵団で大丈夫か?
1時間ほど待って、ようやくガイド傭兵団の幹部が揃った。団長、副団長共に弱い。マリアン達の方が強いだろう。おそらくゴブリン帝国のゴブリンと1対1になったら負ける。
そして傭兵団は統率も取れていない。団員は実にフリーダムだ。
さらに戦略や戦術もない。今までただ戦っていただけだそう。その上、騎馬もいない。馬は運搬用。全員が徒歩である。弓を扱える者が何人いるかもわからない。わかっているのは魔法を使える者はいない事だけ。
実にダメダメである。
取り敢えずは人数と食料が揃っている。
それだけの傭兵団。
『安物買いの銭失い』になってしまった。
侍達に任せるか?
ダメだ。見せしめのために何人か斬って、軍を引き締めようとするだろう。
そんな事をしたらこの傭兵団は崩壊するし、逃亡するだろう。
一応、実績はあるのだ。この傭兵団。
乱戦となると一定の戦果を残している。防衛戦や砦の修復等では指名がかかる事もある。
逆に騎兵隊等が活躍するような平原とかは苦手としている。
仲介者からの情報だ。
間違ってはいない。
「要は落武者狩りの農民ども。奴等が一時的に手を貸してくれる。そう思えば宜しかろう。」
上泉泰綱は辛辣だ。
「一向の者ほど命賭けではない。使い方次第か。」
磯野員昌も理解している。
こういう連中は味方が有利だと思えば強く、負けそうだと思えば逃げ出すらしい。
そして本隊とは絶対に行動を共にさせてはならない。統率が取れていない集団は何をするのか予測がつかないのだから。
ガイド傭兵団には本隊の200メートル程先を行ってもらう。
至急侍達を2つに分ける。
本隊を充実させるのは当然として、ガイド傭兵団と一緒に行軍させる者を誰にするのか。軍監のようなもので大まかな指示は出せるが、細かく口は出せない。共に戦って士気を上げる必要もあるだろう。
阿南は幻影の館で子供達といる。
妙林尼は王女様達や女性達に付いてもらう。
上泉泰綱、岩間小熊といった剣豪、磯野員昌、団忠正といったネタ武将は本隊についてもらう。
島津忠良、武田信廉、上杉景虎らには大将の視点での話等を聞きたい。アドバイスも欲しい。この3人も本隊になる。
忍者の木戸弥左衛門、百田藤兵衛はガイド傭兵団に所属させても意味はない。
軍術に詳しい平井信正、死に場所を求める長沼三徳。この2人の馬券を決める。
さらに2人を知っている湯浅新六にも行ってもらおう。
仙石秀範と高橋興光を加えて5人。
これでなんとかなるか?
これで侍達の班分けは終わった。
後は王女様達が来る前にガイド傭兵団を少しはマトモに見えるようにする必要がある。
ダンジョンモンスターや魔物から入手した革鎧や剣や槍がある。鎧はどれも魔物の血で汚れていたり、臭いが酷かったりするがないよりはマシだ。剣や槍も血や錆で汚れている。売れるような物は売り払った残りだ。人数分はないし、自分で使うには入念な手入れが必要だ。
それでも充分な装備がないガイド傭兵団には必要だろう。デリーを呼んで引き渡す。
「いいんですか?剣や槍は鉄ですよね?返せと言われても返しませんよ?」
馬に積んで持って行った先で殴りあっての奪い合いが始まった。あっ、デリーが吹っ飛んだ。




