妖刀トキワタリ
「何ですか!あの速さは!?」
神殿騎士や司祭達が驚く。
「オルファン様ですもの。」
クレアが我が事のように誇る。
「助けに行かなくては!!」
「あの程度ではオルファン様の敵ではありません。それよりもオルファン様が助けた方を保護をするために準備をいたしましょう。」
走る。駆ける。滑るように進む。
3人の女性が10騎の騎馬に追われている。その先では1人の女性が5騎の騎馬と戦っている。
騎士達は女性を殺そうとしている。ならば、遠慮はいらない。
左腕の腕輪を発動。同時に賢者のサークレットと右手の古木の杖を通して魔法を発動。
2本のウィンドアローが騎士を襲う。
1人の騎士を仕留めた。次はファイアアローだ。
炎に馬が驚き足を止める。
女性を守るためにも短期決戦を選択した。
いつもの刀ではなく腰の妖刀を使う。
「妖刀トキワタリ」
シャラリ
刀が妖しい雰囲気を漂わせる。
騎士達まで残りは30メートル。
刀を振った。刀が通った後がカーテンが切れたかのように裂ける。裂けた先は女性達の前。すぐに潜り抜け妖刀で騎士の剣を受ける。
「何だと!」
そしてすぐに虚脱感に襲われる。
トキワタリは妖刀だ。空間を切り裂いて繋ぐ事ができるが代償として血を求められる。
今回はわずか30メートル。それでも貧血状態である。「自己再生」で失った血が再生されていくはずだが今にも吐きそう。
目の前の騎士を蹴り飛ばし刀を突き刺す。
ドクン。ドクン!ドクン!!
刀が騎士の血を吸っているのが解る。
敵の血を吸った分、次回の吸血を割り引いてくれる。あっ、吐きそう。
「ポーション」
自在収納リングからポーションを取り出して飲み干す。これですぐに血が戻るはず。
隙と見たのか2人の騎士が斬りかかってきた。
「遅い」
2人の首を切り裂く。
そしてトキワタリを突き刺す。
大量の血を吸えて嬉しいと刀が伝えてくる。
武器の選択を間違ったかなぁ?
「キャーー!!」「カサンドラ!!」
後ろの女性達が悲鳴をあげる。
5人を足止めしていた女性が斬られたようだ。
すぐに空間を切り裂いて斬られた女性の元に行く。
そして空間が閉じる前に戻る。
一気に目眩が襲う。血が足りないようだ。
「ポーション」
ポーションを2本取り出す。1本は自分が飲んで1本は女性に掛ける。
女性にもオルファンにも血の気が戻る。
「貴様、バラン公爵様に逆らうつもりか!!」
騎士の発した言葉で事情がわかる。女性は貴族かその家族か。
尚更遠慮はいらないようだ。
女性を寝かせてトキワタリを構える。
「悪いけど殺すよ。」
残っていた6人を斬り、駆け付けた5人も斬った。
トキワタリは大量の血に興奮している。
今も騎士の死体にトキワタリを刺したままだ。
はぁ、これじゃこっちが悪役だよ。
取り合えずここを離れるか。
「血の臭いに惹かれて魔物が集まってきます。場所を移動しましょう。」
意識を失ったままの女性を馬に乗せる。
「このまま道沿いに行けばグルーンです。この女性が心配なら神殿に行けばいいでしょう。私は死体を処分しますので先にどうぞ。」
「死体をどうするのだ?」
騎士風の女性が尋ねてくる。
「このままではアンデットになる可能性もあります。死体を集めて燃やし、埋めます。鎧や剣についてはどこかに売るしかないでしょう。馬は引き取ります。」
「死体剥ぎをするか!!」
「武器を持ったアンデットが旅人を襲ったらどうするのです?」
どうやら直情型のようだ。
「あらあら。まあまぁ。」
ほんわかした女性が間に入る。
「お礼をしたいのだけど、名前を伺ってもいいかしら?」
「姉上、盗人の名前など必要ありませぬ。行きましょう!」
「あらあら。まあまぁ。」
さっさと立ち去ってくれた。これでいい。
都合良く立ち去ってくれた。
妖刀トキワタリを鎧を脱がせた死体に刺していく。15体のミイラの完成だ。これは誰にも見せられない。自分も見たくない。
ミイラを燃やしているとカエデやクレア達が来た。
カエデの顔色が少し悪い。そうか。義眼で見ていたのか。
「無理をするな。戻っていいぞ。」
「何も問題ありませぬ。」
強情だ。
遺骨を埋めて鎧や剣、槍を馬に乗せる。
もはや日が沈む。妖刀は使うのも、使った後も大変だ。




