風呂
次の日も貴族との面会は続く。夜もパーティー。
あぁ、これは死ぬ。頭がパンクする。
宰相閣下に呼ばれて今後の話が出た時には涙が出そうになった。
明日、王都内の最高級ホテルに移るそうだ。
そして3日滞在した後に国が用意した馬車で1月かけて脱法都市へ戻る。
帰りはゆっくりとした快適な旅になるそうだ。
次の日の朝、王都内の最高級ホテルへ移る。
最上階の部屋が幾つもあるスイートルームだ。
部屋に入ってビックリ。
応接室なのだろう。10人の侍女がいた。
「この度オルファン様へ下賜される事になりました。戦闘から夜のお相手までお任せくださいませ。」
美女が10人。
えーと。
「お部屋をご案内いたします。」
次の部屋は金貨で埋め尽くされていた。
「恩賞の金貨でございます。金貨が50万枚。その奥の部屋には銀貨もございます。」
見渡す限りの金色。圧倒される。
「こちらの宝石を散りばめた箱には白金貨が入っております。金貨や銀貨は後で私達で袋にお詰めいたします。」
あぁ、うん。これを自分で袋に詰めろって罰ゲームだよね。
「こちらが浴室となっております。」
浴室には裸の美女数名がいた。
広い浴槽には花びらが浮かんでいる。
女性の裸は目の毒だけど、この世界に来て初めての風呂である。入りたい。
「入られますか?」
頷きそうになったが、まだ全ての部屋を見ていない。
「こちらは書斎となります。貴重な本も取り揃えてありますので、1度ご覧になる事をお奨めいたします。」
あぁ、古書の香りだ。この中でコーヒーを飲みながら本を読んで過ごしたい。
「こちらが主寝室になります。」
この部屋にも美女が沢山。あぁ、そうなるのね。
浴室が2つ、主寝室が1つ、副寝室が3つ、書斎1つに食堂が1つ、応接室が2つ。オルファンが使う部屋としてはこれだけあった。
後は使用人が待機したり、食事を作る厨房だったり。
恩賞の金も凄い事になりそうだ。さらに女性達も全員が美女だらけ。恩賞の金で王都でしか買えないようなものを購入したい。
その後は王城散策に出掛けた。だが凄い注目を集める。当たり前だ。10人の侍女を引き連れ、さらに美女達に腕を組まれているのだから。
「ありゃ、何だ?どこの貴族様だ?」
「ん?おい!!オルファン様だ!英雄様だ!」
完全に見世物です。ろくに果物も買えないし、食事もできない。昼過ぎには歩くのにも苦労する。
せっかくの王都なのに何も買えなかった。
1人で風呂に入る。落ち着く。やはり風呂はいい。嫌な事を忘れさせてくれる。ふぅ~、生き返る。
王都では出歩く事もできなさそうだ。このホテルに3日。外には出れない。書斎の本でも読んで過ごすか。王都での買い物、楽しみだったのになぁ。
オルファンに与えられた美女達だが、彼女達は奴隷ではない。何人かは買い集められた奴隷だが、それ以外は奴隷ではない。
王都では有名な歌姫や高級娼婦は他者の目を集めるためにオルファンに贈られた。
侍女達は王室から。勿論オルファンに尽くすよう、オルファンのために死ぬように命じられている。同時にオルファンの情報を王室に流す任務も帯びていた。
他の美女も似たようなものだ。貴族がバックにいて情報を流すようになっている。育ちも貴族の庶子が多い。
オルファンはまだその事に気付いていなかった。
その日の夜に貴族により娯楽に連れ出された。
バラン公爵。水戸黄門といった感じの老人である。
連れて来られたのは地下闘技場。直径5メートル程の小さなリングだ。
「ここは会員制の秘密の社交場じゃ。見ておれ。」
狭いリングで1人の男がオーガと対峙している。
驚く事にオーガが武器を持ち、男は素手であった。
オーガが咆哮をあげ、男に襲いかかる。
ズン!!
鈍い音と共にオーガが崩れ落ちた。
正拳突き。
「あれが地下の英雄『拳鬼カクサン』。ワシ自慢の闘奴じゃ。もう1人と合わせて『バラン公の双鬼』なんて呼ばれておるの。カッカッカッカッ。」
強い。
自分は間違いなく勝てない。
永池筑後や織田信実なら?足立六兵衛なら?
「英雄殿とは良い勝負になるじゃろうがの。カッカッカッカッ。」
死にます。
「こちらのリングも良いぞ。」
そこで闘っていたのは裸の女性2人。
武器は持たず殴りあったり叩いたり。組み合って転がっていたりする。
「こちらも艶があっていいのぉ。」
完全にスケベ爺になっている。
「勝者には与えよ、敗者からは奪え。それがルールじゃ。あの女達も勝てば金や食事、休養が与えられる。
負ければ食事もないまま、ここにいる貴族達に犯されるんじゃよ。」
「負け続けた女はどうなります?」
「鋭いの。男の闘奴に褒美として与えられるか、殺人狂の貴族に切り刻まれるじゃろ。じゃが、その前に貴族の子を孕んで新しい闘奴の母になるがのぉ。」
「男なら?」
「戦奴隊として戦場じゃ。」
「勝ち続ければ解放ですか?」
「闘奴からは解放じゃ。じゃが、身分は戦闘奴隷のままじゃ。もっとも、待遇はその辺の騎士より良いし、貧乏貴族より金は持っとるぞぃ。」
「あちらを見て見ぃ。」
肉体美を誇る男性闘奴が10人ちょっと。
「ここでも人気の連中じゃ。欲しいならやろうか?」
その時、歓声が上がる。
「ほぅ、『絶対女王』が勝ったか。やはり強いのぉ。」
リングにいたのは筋肉だった。
オルファンの胴ほどの太股、割れた腹筋。筋肉だらけの肩や腕には血管まで盛り上がっている。
全身筋肉。顔は女性だけにできの悪いコラージュを見ているようだ。
足元には5人の女性が倒れている。
「アタシはこれで闘奴から解放だ!!普通なら褒美があるんだろ!?
今夜は『英雄オルファン』様が来てるって聞いてる。いるんだろ?アタシの望みは『英雄オルファン』様の子種だ!!妊娠確率上昇薬も買った!!媚薬も精力剤も買った!!アタシを孕ましておくれよ!」
「「「「オルファン!オルファン!オルファン!」」」」
「それとも英雄様は卑しい闘奴なんて抱けないのかい!?」
「「「「オルファン!オルファン!オルファン!」」」」
マズイ。逃げ道がない。リングまで道ができている。
残念ながらマイサンが反応していない。
「英雄殿から褒美じゃ!!」
「英雄殿と絶対女王の子だ。強い子が産まれるぞ!」
既に嫌だと言える空気ではない。
精力剤と妊娠確率上昇薬を無理矢理飲まされる。服と一緒に腕輪も外した。これならどうだ。マイサンが反応するか?
「フォーー!!」
絶対女王が反応できない速さで動くケダモノが現れた。1時間もしないで筋肉が女へと変わる。
「あっ、あっ、あっ!」
「なんと、絶対女王が何もできないとは。」
「あのタックル、あの関節技、そして絶対女王を転ばした妙技。あれは達人だぞ。」
「それよりも絶対女王の反撃を腰の動き1つで封じるタイミングの良さ。あれは相手の呼吸を制しているのだ。」
「彼の伝説は本当だったのね。これは皆さんと味見をしなくては。」
夜明けには妊婦のように腹を膨らませた絶対女王が横たわっていた。この日、この地下闘技場に新たな絶対王者が現れた。それは「性王」オルファン。
あぁ、風呂に入りてぇ。




