アルフィーネからの手紙-公爵サイド-
「旦那様、お手紙でございます』
メイドが我が執務室をノックしてきた。誰からだ?うちの次男、三男は別のところで頑張っておるが、アイツらか?
次男のアルフレッドはエルデングランド帝国から嫁をもらい、公爵領の東側に領地をやった。三男のレオンは公爵領の西側で、男爵領への睨みを利かせている。
長男のアルファグリンは俺と共にこの公爵領正行政府にいるが、今日は鷹狩りに行くらしい。ってわけで、誰だ。
「誰からだ?みせよ」とワシが言うと、メイドが「はっ」と返事をし、入ってきた。メイドから手紙を受け取ると、かわいらしい花柄の封筒に入れられた便箋が入っていた。
こんな可愛い便箋と封筒を使うのは1人しかいない。
「アルフィーネから手紙だ。即刻発つ準備をせよ。そのまま、王城に向かうことも考えろ。兵は300でよい」
そう叫び、手紙に目を通す。
「拝啓 お父様。春の桜がひらひら舞い散る頃、お元気でしょうか。私は、今とても不機嫌です。王子のアホがやらかしました。公爵パンチ1000発お見舞いしてやってください。王子が男爵令嬢に手を出したそうです。王位継承権や、その他王太子関連の面倒ごとが起きると思われます。男爵令嬢にはしっかりと事情を聴いたうえ、処分をご検討ください。追伸、ウチとは手をつなぐぐらいしかしてくれんかったけん、ウチの婚礼の件任せるけんな。お父ちゃんならウチの好み知っとるやろ? 敬具」
あんのクソ殿下かぁ!!!俺は思い出していた。トカゲを入れられて泣いていた、小さな背中を。楽しそうに笑っていた、クソ坊主を。あの小童を。
そして、次男三男長男全員、その遊びにハマっていた故に、アルフィーネがそれぞれの尻を叩き、「何しょん!?ほんな事して恥ずかしいないんえ?ウチより年上なんやけん、しっかりしてくださいませ、お兄様たち!!!被害に遭った子がおるんやったら全員に菓子折り持っていけるようにお父様にねだって来ぃ!!」と叱り飛ばしていた娘を。
許せなかった。これは、あの王子を廃嫡にせねば国家の危機になりうる。これは許してはならん。
あの、アルフィーネの事だ。きっと母仕込み、そして俺の政務を見て学び、王太子妃教育で得た実務能力で書類作ったり、根回しをするための手紙を書いていることだろう。
書いてなくてもよい。すぐに帰らねば。着いて来られる兵がいるか分からんが、良い。とにかく早駆けせねば。
「旦那様!!」
「旦那様!!」
背後でメイドや厨房の奴らの声が聞こえるが、遅い。止めるな。
厠をすませ、厩にいき、鞍を乗せると、すぐに駆け出す。槍も持ち、敵が来たらすぐにでも蹴散らせるように。
遅い。これは訓練が足りておらんのではないか?ワシ1人で突っ走らせてどうする。早く来い。止まってなど居られない。
馬で駆ける。雷鳴の如く、稲妻すらも置き去りに。雷なんて遅いものじゃ追いつけん速さで。
アルフィーネ、待っておれ。すぐにでもパパが行くからな。お前は優しい子だな。あの、クソ殿下に対しても分け隔てなく、やるべきことを教えていた。
アルフィーネを王にしたほうが何万倍も国民を思った政治ができるじゃろう。今度、友人である王陛下に提案してやろう。
あと、王妃にも茶会でも開いてもらおう。ウチの家内も誘ってもらおうか。アルフィーネは王妃もアルフィーネの母も好きだからな。
俺の嫁であるカトリーナはアルフィーネの事を第一に考えておるからなぁ。きっと、茶でも入れて、2人でくつろいで居るだろう。
雷鳴は鳴り響く。だが、雷鳴など遅くて遅くてアクビが出るわ。アルフィーネ、待っておれよ。




