親父帰還
「どこのドイツじゃ、ワシの可愛い娘泣かせて、要らん騒ぎ起こっしょるアホンダラはぁ!!!!」
もはや、人が入る音ではない音を家中に響かせながら、おとんが入ってきた。
「お帰りなさいませ、お父様。婚約破棄されてしまいましたわ。しかも、一線まで越えてらっしゃるそうよ」と私は努めてご令嬢スタイルで頑張る。
「何が、お帰りなさいませじゃ。ウチの娘泣かせた罪100万倍にして返してやるぞ。あんのクソ殿下めえぇぇ!!!!」
戦場で鍛えられた父上の声は凄い。家中の建物が地震かのように震えている。
「おとん。おかえり。早馬お疲れ様。まだ、2刻ですわよ?普段4刻かかるでしょうに、どれほど飛ばして帰って来たんじゃ?あと、ファーレンハイトを王子殿下にお貸しし、王城と男爵令嬢への謝罪に向かわせましたわ。書類仕事はしとくけん、親世代に交渉しといてくれんで?」
「もちろんじゃ。これで余計な事言うてくる奴おったらその貴族もまとめて粛清じゃ。なんなら戦争じゃ。あんなアホンダラが王になるんだったら喜んで国民のためのクーデター起こしてやる」
おとんキレ過ぎや。ほんなにキレんでええんじょ。ウチ、愛されとんなぁ。あの王子多分死ぬじょ。だっておとん、今、刀握りしめとるもん。
「おとん、ほれはしたらあかん。みんなぁ、おるけん先に根回ししてからせないかんやろ?うち……大丈夫やけん……」
あれ?なんで泣いてるんだろう。なんか、ポロポロと落ちてくる。私は知ってる。
これを"涙"って呼ぶんよなぁ。王子のアホ!!バカ、マヌケ、おたんこナス!!!
「アルフィーネ、辛かったなぁ。よう頑張った。ようここまで引き継いでくれた。おかげで、すぐにでも動き出せるわ。しばらく休め。無理せんでええ。パパの胸で泣き」
おとんの声で、今まで頑張って抑えてた気持ちがどんどんと溢れてきてしまう。これ、川になったりせん?ウチが泣くの、柄じゃないのに。
えっ?パパ?抱き締めてくれてるん?ウチ愛されとんやなぁ。いつも大切にしてくれた。王子が男連中に流されて、ウチのドレスにトカゲ入れてきた時と同じ大きな胸だった。
私の身長も伸びたはずなのに、なぜかパパの胸の大きさは全然変わらなくて、温かい。大きいなぁ。ウチのパパは強い。王家の軍が強かろうが、公爵家の私設兵団には勝てない。
そもそもおとんが王国騎士団のトップの実力者だった。だから、大丈夫。
「疲れてるだろ?部屋まで送るぞ。ほら」
そう言いながら、優しい低い声で私を抱き上げるパパ。
大きい。頑張ったら疲れたわ。
おやすみ……。




