第1話 婚約破棄!なん!やけど……!!!!
「アルフィーネ=ストロンチウムフィールド、貴様との婚約を破棄する」
変わらない金髪のキラキラで黄金色に輝く瞳をキラキラさせながら、フォート=ランサーナイト第一王子殿下が大音声で宣言する。
私はライトブロンドの髪をポニーテールに直しながらアメジスト色の目で王子を見つめて口を開く。
「待ちや。あんた、ここどこやと思うとるん?」
「こたつだろ。これほど適したところもないだろう。ゆっくり話せるし、公爵にもすぐに言いに行けるだろ?しかも、王宮から隠し通路があるから出やすいのだ」
「アホなん?公爵家の応接間のコタツでみかん食べながらする宣言ちゃうやん。状況も読めんアホなん?」
「違うのだ。本当は卒業パーティで大々的に先人たちのようにしてやりたかった。けど、お前が遠くに行くのも嫌やし、なんかこう、ほら、あれよ」
「あんた、男爵令嬢好きになったけん、別れてくれって言いよったやろ?それが何をまかり間違ってこんな変なとこでしよん?」
「男爵令嬢のリリアナは可愛いし、気立てもいいし、確かに気持ちよかっただから責任取る意味で別れさせてほしい。でも、ほんなん大広間では言えん。やけん甘えてしもうた」
私は王子を見据えて言った。
「あんた、責任の取り方ちゃうやろ!!!!ほれやったら、なんで失敗したときにウチに言わんかったん?男爵令嬢が処分されるかもしれんのに、ようそんなアホなことしたなぁ。若い男の子やけん、ほうなるんもわかるじょ。ほなけんて、なんも言わんと今「婚約を破棄する」とか言われてもどないしょうもないじょ」
アホ王子は申し訳なさそうに「すまん。いや、ハズイやん。婚約者居るのにヤッてしまいましたとか、しかもお前の父ちゃん怖いやん」と俯いていた。
覚悟を決めた私は「アホぉ!!!なに考えとん!!?女の子傷つけといて何が恥ずかしいじゃ。男爵令嬢、不幸にするとは思わんかったん?うちやって傷つくけど、男爵令嬢なんかウチが本気出したら国外追放でも処刑でもできてしまうんじょ?昔みたいに頭冷やすか?」とビンタの構えをする。
「いらん。でも、王家の権力が失墜するやん。それだったらまだ言わんと秘密裏に俺を死んだことにしてもらって、男爵令嬢と駆け落ちしたほうがましかと」
「アホぉ!!!ほんな甘ったれた覚悟で女の子抱くな。なんでウチには手ぇ出さんかったのに、男爵令嬢に手を出しとん?うちやったら親父の公爵パンチか公爵ビンタで裏庭まで飛ばされるぐらいで済んだやろうに」
私は目に涙を浮かべていた。確かに男爵令嬢もアホやった。なんも見とらんかった。
「公爵パンチ痛いやん。絶対、ケツ腫れるまでケツビンタされるやん」
バカ王子が自分のケツを擦っているが、女の子の傷は、そんなもんじゃないはずなのだ。
「ケツビンタ1000発よりも痛い傷を女の子に背負わせとんじょ!しかも、これからの婚礼にも傷物になるんじょ!あんた、アホやろ。しかもなんでこんな。コタツでこんな大変な話せないかんの?死ぬ覚悟で働きや!!あと、男爵令嬢には伝えとき。王太子妃の座は無いってな!!伝えてなかったらウチのルートで伝えるけんな。早うしぃよ!!」
ここまで言い切って私は書類仕事と王様への報告の仕方に考えを巡らせていた。ほんまにアホやな。こいつは優しいけど、断るのが苦手なんよな。男連中のいたずらでトカゲを女子に入れる遊びが流行った時もトカゲ入れた後、ウチに来て令嬢へのプレゼントを考えていた。
そん時はウチが「高級紅茶を差し出して、一刻も早う全部の家に送り!!早う謝って、誠心誠意詫びてこい!!」とよくケツを叩いたものだった。
「陛下に菓子折りありったけ強請ってきぃ!!男爵令嬢に誠心誠意詫びろ。男爵も王位継承権強請ってくるかもしれん。「できません!!すみません、申し訳ござしません」を伝えるんがあんたの仕事や。早うコタツから出て、行き!!それもウチがおらなあかんで?」
王子は私の気迫に圧されたように「ごめん。ありがとう。行ってくる」と半泣きだった。言い過ぎたかもしれん。でも、これは王子のためやし、言わなあかん。大人が言うたら早いけど、反発してしまうやろ?ウチは、よく王子を叱咤激励しよったけん、ええんやろうな。
「着いて来ぃ。ウチの相棒使うか?うちの相棒のファーレンハイト」
「これは俺がけじめつけないかんのやな?馬借りる。ありがとう」
申し訳なさそうに微笑む背中に一発お見舞いしておこう
「頑張りや!!!ウチの馬返さんかったら親父の公爵キックで顔わからんようにされるけん、気ぃ付けや!!」と念を押す。
ほな、ウチはウチですることしよかぁ。まずは、お父ちゃんに手紙書いとかないかんよな。
「拝啓 お父様。春の桜がひらひら舞い散る頃、お元気でしょうか。私は、今とても不機嫌です。王子のアホがやらかしました。公爵パンチ1000発お見舞いしてやってください。王子が男爵令嬢に手を出したそうです。王位継承権や、その他王太子関連の面倒ごとが起きると思われます。男爵令嬢にはしっかりと事情を聴いたうえ、処分をご検討ください。追伸、ウチとは手をつなぐぐらいしかしてくれんかったけん、ウチの婚礼の件任せるけんな。お父ちゃんならウチの好み知っとるやろ? 敬具」
これでええか。面倒ごとの始まりじゃ。




