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落雷の下剋上  作者: 風冥つむろ.
一章.【俺達の日常】

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day2 -延期の先に見える未来-

その日の夕闇頃。

辺りはネオンの光に包まれ、騒然としている中、ENDS NOVAの部屋に青白い光とともに姫憂が現れた。

備え付けられた灯籠やENDS NOVAと言う文字が姫憂を迎える。




「帝都〜、おつ〜」


「おう、姫憂。どうした?」



その部屋には鳩羽ではなく帝都がいて、呑気に青白く空中浮遊する端末を開いていた。



「帝都も見た?さっき神威爽のリーダー・源透朱さんから連絡があって、今日の対戦明日に延期だってさ〜。神威爽も人気だね〜」


「見たぜ。さすがプロだよな〜」


「?プロと延期に何の関係が?」


「神威爽はな、あぁやって延期にすることでファンの期待を助長させてんだよ」


「うわ〜、やりそう〜」




帝都の開いていた端末には『対戦延期のお知らせ』と題して神威爽のリーダー・源透朱から巻物、メッセージが表示されていた。

発光する端末をスイスイ、とスクロールしながら姫憂に見せてくる帝都の目には、いつも通り少し小悪魔な姫憂が映っていて、その表情一つ一つに自身の心と瞳の光りが揺れ動くのを感じる。


身体を起こして帝都の隣に腰掛けた姫憂は辺りをキョロキョロと見回す。

そうして、一つの異変に気づいた。




「そう言えばお兄は?俺より先に来てたはずなんですけど〜」


「何か鳩羽のアカウントに不正アクセスした奴がいたんだって」


「えぇ!?お兄のアカウント大丈夫なの!?」


「わかんねぇけど、ねおんがいるなら大丈夫だろ!」




この仮想空間・霓虹を作り、生み出した管理人の音乃瀬ねおん。

帝都か言うには、杯鳩羽のアカウントに不正アクセスし、トラップを仕掛けた形跡があったようで、彼は管理人のねおんの元へ取り除きに行ってるらしい。

不正アクセスと聞いて目を見開く姫憂を心配させない為に帝都は明るく告げた。


ENDS NOVAのメンバーにとって、管理人の「ねおん」は唯一無二の守護者であり、システム上の神様。

そんな彼が鳩羽に着いているなら大丈夫。


そう言って笑う帝都の笑顔に姫憂は、少し身震いをした。

なぜなら、その帝都の笑顔が姫憂にはどうしてかふと「無理をして作っている」ように見えたのだ。

姫憂は一呼吸飲み込んでから自身も端末を開き、ホーム画面をスイスイ、とスクロールしている。




「でもお兄いないなら俺も落ちようかな〜。帝都、キャンスピュラシー以外のゲーム超下手だし、俺勉強しなきゃいけないからな〜」


「悪かったな、下手で……―――。ごめん、姫憂。母さん来たからちょっと落ちる」




ヴォン。

そんな音と黄色い光と共に帝都のアバターボディがその場から姿を消した。

帝都が消えて一人オロオロと戸惑っている姫憂の心中には消えない違和感が住み着いていた。

端末のUIがわずかにノイズを拾う。


帝都基、蘭の家庭環境の事だ。

高校三年生の妹が家から出て行き、両親と三人きりの蘭。

普通、兄妹かいると両親と自分だけと言う環境は嬉しい以外の何物でもないだろう。

でも、皐月家は違っていたのだ。



「え、ちょ……!……俺も落ちよ」



ヴォン。

消えた帝都を追うように姫憂もその場から音と赤白い光と共に消えていった。


仮想空間・霓虹から現実の自分の家に戻った姫憂はゆっくりと瞳を開け、こめかみに着けているパッドロウと言うICチップを外す。

霓虹のライバーたちはこのパッドロウで現実世界と仮想空間を行き来しているのだ。



「はぁ……。やる気でないなぁ……。……蘭……。いやいや、俺が気にした所で何も変わらないし!

そもそも同じマンション何だからいつでも生存確認できるし……」


「―――冥羽?」



電気の消えた暗い部屋の中、冥羽はポツリ、ポツリと心模様を漏らし始めた。

しかし、蘭の事が心配で堪らないことも、急に消えた事も、嫌な予感ばかりが冥羽の頭を過る。

うずくまって、自分は何も出来ないと、そう思っていた冥羽の部屋に、兄である羽築がいつも通りすました顔で現れた。



「……!お兄、こっち(現実)に戻ってきたの!?……不正アクセス、大丈夫だった?」


「あぁ。ねおんが何とかしてくれた。……麻耶がここから出て行ってからおばさん達、更に蘭を見ないようになったよな……」



ガタッ、と椅子から立ち上がり羽築を心配する冥羽に彼は優しく告げた。

しかし、その後の急な話題転換が冥羽の頭に大きな違和感を植え付けるのだった。

羽築は姫憂と帝都が霓虹で会って、急に帝都がログアウトした所を目撃していたのだろう。



「聞いてたの?……そうだね。まぁ、蘭も学生っつっても大学生だからね〜!未成年じゃないから過干渉より無関心の方が良いんじゃない?」


「……冥羽。あいつの苦しみはあいつにしか分からない。決めつけるな」


「お兄……」



冥羽が蘭の家庭環境の事を茶化して笑うと、羽築は一瞬で笑顔が消え、開いた口を一度閉じ、もう一度開いてそう言った。

兄として弟を導くと言う理性と、蘭の苦しみはそんな物ではないという感情が羽築の心のなかでせめぎ合っていたのだ。


羽築が冥羽の桃色のシーツのベッドに腰掛けると、彼の懐からピロン、と言う通知音が鳴り響いた。



「……って、蘭からRHINOだ」


「何て?」


「……“急に落ちて悪かったなって冥羽に言っといて!後、もしかしたら明日霓虹行けないかも。ごめん”って」


「え……、?」



冥羽の瞳のハイライトが消え、募っていた違和感が爆発しかける。

羽築も羽築で冷静に返信を書いているかと思いきや、スマホを持つ手が少し、ほんの少しだけゆらゆらと揺れていた―――。

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