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落雷の下剋上  作者: 風冥つむろ.
一章.【俺達の日常】

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day1 -童子切安綱-

「さ、霓虹の本部に行こ〜!今日の対戦相手確かめなきゃ!」


「だな」


「無視を!するな!……と言いたいとこだけど、姫憂」



鳩羽の忠告を無視して四方八方に自分の魅力を魅せる帝都に呆れた姫憂と鳩羽は水の中に浸かっている重い足を上げて、橋の先に見える明るい本殿へ歩き出す。

そんな二人にギャイ、ギャイと怒って追いかけてくる帝都がふと、急に愛おしいものを見つめるようなエメラルドグリーンの瞳で姫憂に向き直った。




「今日も最強に会いたくなるビジュしてるな♡」


「はぁ……。はいはい、俺のオタク出してくるのは良いけど、鬼灯達に迷惑かけないでよね〜」



ノイズが混じるような電子音と共にさっさと手で追い払う素振りを見せる姫憂に構わず、帝都は話しかけるが、姫憂は青白く光る端末に夢中なのであった。

足を進めながら姫憂の反応を心待ちにしている帝都に声を掛けたのは鳩羽だ。



「そういや帝都、麻耶(まや)とは最近あってないのか?」


「ん?麻耶?会う機会が無いからな〜。俺は実家、麻耶は一人で上京してるし!鳩羽は会ってるんじゃねぇの?」


「あぁ。先週も2人で出かけた」


「お、惚気か〜?」




幼馴染と妹の話にカラッとした反応を見せた帝都だが、その視線は僅かに視界の端で揺れるUIを捉えていた。

現実では大学ニ年生の蘭と羽築。

羽築と冥羽の両親は趣味に厳しい。

厳しいと言ってもただの束縛ではなく、自分がやらと決めたことなら諦めずに必ずやり遂げろと言う教訓をずっと叩き込まれてきた。

それこそ、羽築が大学受験の時はこの仮想空間に出入りする為に必要不可欠なICチップを取り上げられたりもした。


冥羽の趣味や好きな事に対しても両親は厳しい。

世間体を気にする母と、母の言いなりにしかならない父。

しかし、羽築はそんな厳しい両親から冥羽をずっと守ってくれていた。

冥羽がやりたい事なら応援する、好きな事は好きでいていい、と優しく冥羽の頭を筋肉質な大きな手が撫でてくれて時のことを今ても彼は覚えている。


そんな羽築と冥羽が実家を出たのはもう数年前の事。

今は2人で蘭の両親が経営しているマンションの一室で暮らしている。

ちょうどその時期だった。

羽築が蘭の妹の麻耶に惹かれるようになったのは―――……。




「帝都は会いに行ったりしないの?」


「……どーだろうな」


「曖昧だなぁ。いつもはあんなに自信満々なのに珍しいじゃん。麻耶さんと何かあったの?」


「……ま、全世界の兄弟が鳩羽と姫憂みたいに仲良いわけじゃないからな!俺は弟じゃなくて妹だけど!」




大好きな恋人(麻耶)の兄がその恋人とあまり関わったりしないことを、羽築も少し疑問に思っていた様だ。


ピシャッ、ピシャッ。

雫が飛び散り、肌に冷たい感触が届く。

帝都は先程の様にファンを見ず、俯きながら歩いていた。

その顔は何処か苦しそうで何処か安堵した兄の顔をしていた。




「そんな事より、最近霓虹でランキングが急上昇して注目されてるグループがいるんだ!珍しく女の子がいるんだけどさ、これまたこの子がスゲェ美人で!

今日この戦場で戦うことになるんじゃねぇかな?コラボって形で!」


「で、そのチームの名前は?」


神威爽(かむいそう)!電撃やトラップを得意とするチームらしいぞ!」


「ネオカップ神威爽……神威爽……これか。対戦相手は……確かに俺達の様だ」


「マジで〜?電撃が得意って事は、お兄のトラップ効かないじゃん……!」


「……このアバターボディ……まさか、な……」


「?帝都?」


「ううん、何でもねぇよ!……よし、じゃあ指定された第四区に移動するか!」




本殿に設置された電子掲示板には、ネオカップのトーナメント表には確かにENDS NOVA VS 神威爽と記載されてある。

キャッ、キャッと空元気ではしゃぐ帝都はその神威爽の文字をタップした。

スライムのような感触に手を引きかけたが、もう一度電子掲示板に目を向けると神威爽のメンバーのキービジュアルが映っていた。

姫憂が可愛い〜と言いながら見ている方へ目を向けるとそこには、二つの剣を背負った女の子のキービジュアルがあった。



その剣の名を“童子切安綱”。



源頼光がこの太刀を使って悪名高き鬼・酒呑童子の首をはねたと言う例の刀。


ENDS NOVAのメンバーのアバターボディのテーマは鬼。

それもリーダーである帝都は酒呑童子をモチーフにしている。

姫憂と鳩羽はそれぞれ茨木童子と虎熊童子がモチーフになっている。


だから、嫌でも考えてしまうのだ。

自分達も歴史と同じように彼女らに討たれてしまうのではないかと―――……。

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