day3 -幼馴染だからわかるコト-
「……!?お、俺たち……!?」
「この神威爽が直々に挑んであげるわ!都杯の最終日、あんた達の得意なキャンスピュラシーの三対三バージョンのMILIで大江山鬼退治合戦よ!」
透朱の勝ち気な宣戦布告が、霓虹の夜空に響き渡る。
その言葉に導かれるように、広場に集まった群衆の視線が一斉に、特等席であるENDS NOVAの社へと向けられた。
突然の名指しに、社の上にいた三人はそれぞれの反応を見せる。
驚愕に目を見開く冥羽、面白そうに口角を上げる帝都、そしてわずかに眉をひそめる羽築。
周囲のリスナーたちも「急展開すぎるだろ!」「神威爽 vs ENDS NOVAのガチ対決!?」とコメント欄や歓声を爆発させ、バーチャル空間の熱気は最高潮へと達していた。
「先生、マイペース過ぎますよ」
やれやれとばかりに首を横に振ったのは、神威爽の頭脳であり冷静な後輩ポジションである鈴庵(庵)だった。
マイペースにその場を取り繕う透朱の背後で、彼はどこか呆れたような、しかしどこか楽しげな溜息を吐く。
〈ENDS NOVAって何?〉
〈ほら、最近よく注目を浴びてる新人ゲーマーチームの……〉
瞬く間に爆発的な速度で流れていくコメント欄の文字のシャワーを浴びながら、透朱は満足げにふんと鼻を鳴らした。
「じゃ、そう言う事だから。新人だから、友達だからって手加減なんかしないわよ」
「ENDS NOVAのみんなもリスナーのみんなもごめんね〜……!」
酒嫁が慌てて両手をブンブンと振って画面越しのリスナーや敵陣をフォローするが、その姿すらも配信のエンタメとして熱狂を煽る燃料になっていく。
「また、1ヶ月後の最終日にお会いしましょう」
綺麗に決まった宣戦布告の余韻を残し、彼女たちの姿が光の粒子となってふわりと溶けていく。
「……わだかまりを無くせとは言ったが、強引すぎるだろ、あいつ……」
「?お兄?」
圧倒的な嵐のような巻き込み方に、ENDS NOVAの社の上で、羽築は思わずこめかみを押さえて呆れたような、しかしどこか面倒臭そうに呟いた。蘭の妹の麻耶が裏でどんな暴走をしているか露知らず、冥羽はきょとんとした顔で隣の兄を見上げる。
「いや、何でもない。今日はもう寝るわ。お疲れ」
「あ、うん。おやすみ~」
これ以上深掘りされると自分の恋人の暴走がバレると察したのか、鳩羽はそそくさと現実へのログアウト操作を始める。
バタバタとした嵐が去ったあとの静かな社の上で、姫憂は小さく手を振って兄の背中を見送るのだった。
「……」
そんな鳩羽の姿に一人、違和感を感じて光の粒を帝都は凝視した。
何か隠している、そう直感して。
しかし、蘭はそれをあえて深く追求せず、そっと見守る道を選んだ。
自分ならそうして欲しいと思う以前に、これは〝羽築の事〟だからである。
羽築は普段蘭に隠し事は滅多にしない。
十年以上の幼馴染だからだ何だと言って下世話な話までしてくるのだ。
だからこそ、羽築が気まずそうに逃げ出した理由も、それが他人に踏み込まれたくない領域なのだと察して帝都は社の中へと姫憂と共に降りたのだった―――。




