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人狼村開拓記  作者: やまぐ
35/43

前夜祭

 そのまた次の日。

 今日も調査のために落合ったローガとロイドであったがローガは顔を合わせるなり開口一発宣言する。

「そろそろ調査も飽きた。全く進展は無いしそもそも良く考えたらあの時の取引相手を探すよりもロイドが分身して怪しげな所を虱潰しにて組織大本を探した方が早いんじゃないか?俺、王都はもうだいぶ見て回ったからそろそろ旅にでたいんだけど。」

 この発言を聞きロイドはポーカーフェイスを維持しつつ内心で焦っていた。

 実はすでにローガの言う通りロイドはローガと別れた後分身を使いその作戦を実行しており、虱潰しにしてエリアを削っていきすでにある程度アジトの場所を絞り込んでいた。

(ぐっ、ローガのヤツ意外鋭いとこをついてくるな。勘が鋭いというかなんというか。おそらく『蛇神の四肢』の連中も動くとしたらファッションショー当日の明日か前夜祭で盛り上がっている今日だろう。本来なら昨日までに連中のアジトを特定しておく予定だったんだが、途中から何者かが片っ端から分身を消していきやがったから思うように進まなかった。そいつが今日ぐらいに何か仕掛けてきてもおかしくないし、出来ればローガと行動を共にしてそいつとローガが戦うように仕向けたい。しかし、調査という名目でローガを足止めもそろそろ限界が近いみたいだが……。)

「そう言わずにもう少し付き合ってくれよ。確かにこのまま調査しても成果を挙げられる可能性は低いだろうがなにもしないよりはましだ。」

 なんとかローガを引き留めようとするロイドだがローガの意思は固いようだった。

「……………。」

 無言のローガの訴えにロイドは早々に説得をあきらめ新たな作戦に出ることにした。

「わかった、もう調査はやめよう。しかし、ファッションショーの本番は明日だ。当日は出店とかもいっぱい出て一日中お祭り騒になる。お前はファッションとかには興味ないだろうけど今日まで王都にいたんだし、せっかくだからファッションショーが終わるまではここにいたらどうだ。」

 調査で足止め作戦は破棄しせめてファッションショー当日まで足止め出来るように説得してみる。

「お祭り騒ぎか……。確かになんか楽しそうだな。」

 うまい具合に食いついてきたのでダメ押しする。

「考えてみたらあんな本一冊で調査に付き合わせたのも割に合わなかったかもしれないしな。今日までの礼も兼ねてまだ行っていない王都の場所を案内しながら何かおごってやるよ。」

「そうだな。別に急いで旅に出る理由も無いしおごってくれるなら明日までいる事にしよう。」

 無事ローガのをファッションショー当日まで足止めすることに成功しロイドは心の中で安堵する。

(とりあえずの足止めはできた。出来れば『蛇神の四肢』連中が騒ぎを起こす前にアジトを特定してローガを送り込みたかったがエリアを絞れたとはいえまだ特定できていない以上そうもいかないな。まあ、たぶんファッションショー当日までには連中の方から何かしらの騒ぎを起こすだろうから、そこにローガを誘導できれば勅命を果たすことは出来る。事前にアジトを奇襲出来た方が先手を打てるし、王都への被害も少なくできたんだが仕方ない。そうなると、あと心配なのは俺の財布とおごった分が経費で落ちるかどうかだな。)

 こうして新たな不安を抱える事になりながらも、どうにかレイザールの勅命を果たすめどを立てることができたロイドであった。




 約束通りローガに王都を案内して回るロイド。

 まず出店を回って食事をし、ローガの要望で書店を回り、前々から気になっていたローガのズボン一丁姿をどうにかしようと服屋を回る。

 ロイドとしては男友達に町を案内して回る感覚であったが、ローガが女性であったならばそれはデートしているようにも見える光景であった。

 そんな二人を陰から見つめる者がいた。チェイスだ。

 お目当ての女性陣がファッションショー前日で歩き方のチェックやら衣装の最終調整なんかに余念がなく殺気立っているため「今、下手に声をかけたら殺されるっ!」と戦略的撤退をしてきたところに二人を見かけ声をかけようとしたが、せっかくだから脅かしてやろうと尾行しているところであった。

 しかし、チェイスは尾行を続けるうちに気が付いてしまった。

 二人がデキている可能性に。

 物陰で一人戦慄するチェイス。

(まさかそういうことなのか!しかし、ローガのヤツに関してははっき言えるほど付き合いは長くないがロイドの旦那にそっちのケがあったようには見えなかった。……だが、あの二人の姿はどう見ても……。そういえば以前ローガの筋肉は危うい魅力をもつ筋肉だとガッデム様が語っていたらしいが、まさかその危うい魅力の筋肉にヤラれてんじゃ……。)

 自らの想像に急速に血の気が引いていくのを感じるチェイス。

(とにかくこれは確かめなくては。そうしないと今後安心して背中を任せられない……というか尻を向けられない。とはいえこのまま尾行しているだけじゃらちが明かない。ここは意を決して直接聞くか!)

 チェイスは冒険者として生きてきたこれまでの人生でも数えるほど位しかしか出していないような渾身の勇気を振り絞り物陰から出てローガ達の元へ歩んだ。


 ちょうどその時ローガとロイドの二人は服屋でローガに着せる服を選びローガに試着させているところだった。

「ロイド~コレどうやって着るんだ~。」

 店内にある狭い更衣室の中から聞こえるローガの声にロイドは仕方ないといった感じで自らも更衣室に入り面倒を見てやる。

 その姿を目撃したチェイス。

(狭い更衣室に男二人で入るだとっ!これはもう答えを聞く前に決まっちまったんじゃ……。)

 更衣室はそういう行為をする場所じゃないだろ!でも俺も女の子ならこんなシチュエーションになってみたい!とチェイスが打ちひしがれている所にロイドが出てくる。

「ん?チェイスか。珍しい所であったな。お前もするのか?」

 もちろんロイドはチェイスが更衣室の前にいたから試着するのかと聞いたのだが、完全に勘違いしているチェイスは別の意味で捉えてしまった。

「お前らデキてるだけじゃなくそんな上級のプレイまで!」

 トンデモねえ魔物がこんな身近に潜んでいるとは思わなかったぜ!と戦慄しているチェイスをよそにロイドは呆気にとられながら先程のチェイスの言葉を理解しようとする。

「は?デキてる……………?」

 どうにか戦慄から立ち直ったチェイスはこの死地からどうにか逃亡せねばとジリジリと後退する。

「お前たちがどういう趣味を持っていようと関知するつもりはねえ。しかし、俺まで巻き込もうとするなら話は別だ。」

 言葉で俺はノンケで仲間になるつもりはないと牽制しながら尻を向けないようにゆっくりと距離を取る。

「…………ッ!待てっ!お前は勘違いしているっ!俺の話を………。」

「その手には乗らないぜロイドの旦那!さっきの発言から旦那が俺をそっちの道へ引き込もうとしていることぐらいお見通しだ。」

 そこに空気を読まないことに定評があるローガがいつも通り空気を読まず出てくる。

「ロイド。俺やっぱり上着とか着ると暑苦しくて落ち着かないぞ。替えのズボンぐらいは買うけど上着は要らない……あれ、チェイスじゃないか?二人何してんだ?楽しいことなら俺も混ぜろよ。」

 この言葉が決定的な引き金となった。

「冗談じゃない!俺は女の子の方が好きなんだ!お前らの仲間にはならないからな!」

 チェイスは意を決して踵を返し逃げ出す。

「くそっ!ローガ、チェイスを追うぞ!」

「なんでだ?」

「そうしないと俺が社会的に死ぬからだ!」

「死ぬのかっ!何かわからんが死ぬのはマズイな。わかった、追いかけよう!」

 こうして奇妙な追いかけっこが始まった。




 時刻は過ぎ夕方。

 その後なんとかチェイスの誤解を解くことに成功したロイドは精神力を極度に消耗し座り込んでいた。

「なんかえらく疲れてるみたいだな。」

 ローガは一人まだ元気そうにしている。

「ローガ……。お前ってタフだよな……。」

 元気そうなローガをうらやましげに見みながらロイドは疲れた口調でつぶやく。

 めずらしくローガが気を使い出店で軽くつまめる物を買って来てロイドに渡す。

「ローガ……。お前こういう気遣い出来たんだな……。」

「なんか疲れてるみたいだったからな。」

 疲れた精神にローガのやさしさが妙に沁みるロイドであった。

 しかし、ローガが渡したのはパンのような物の中に秘密の具が入っているというロシアンルーレット的な食べ物だった。

「これ……中身は何が入ってるんだ?」

「さあ?何が入っているかはお楽しみだってさ。面白そうだろ。」

「まあ、仮にも売り物だからな。ハズレでもそこまで食えたもんじゃないような物を入れたりはしないだろうし……。」

 そう言ってロイドが一口齧ると悶絶しまじめる。

「カラッッッッ!ナンダコレハ!めっちゃ辛いぃぃぃぃぃぃぃ!」

「そういえは余り物だから安くしとくって店員が言ってたな。」

「それを先に言え。くっそ!店員の悪意を感じる味だったぞ。」

 幸い後を引くような辛さでは無かったようだが、今度は疲れた精神に辛い刺激が沁みるロイドであった。


 やがて、日は沈み初め人気が少なくなってきていた。

 そんな中、ローガは独り言のように口を開く。

「王都ってさ……平和だよな。まあこれはしみるロイドであった。大きな町なら王都に限ったことじゃないんだろうけど。王都を見て回って思ったんだよ、ここは戦いから遠い場所だってな。この前の変な取引を見て襲われたとかの例外がなければこの王都内では戦うことなんて無いんだろうな。だからつい思っちまうんだ。こんな平和な場所には俺のような戦いの中でしか生きられないやつらの居場所は無いんじゃないかってな。お前はその辺の事をどういうふうにに思ってるんだ?ジェイド。」

「それは聞かずともわかる事じゃぁないですかぁ?こんな平和な場所じゃ私たちみたいなぁ戦いの中でしか生きてることを実感できない狂ったヤツらはぁ暮らしていけない。だからここも戦場に変えるんですよぉ。」

 暗がりからにじみ出るようにジェイドが現れた。

「しかし、ローガさんはよく私が尾行していることに気が付きましたねぇ。」

「初めは気が付かなかったぞ。でも、なんかイヤな予感というか虫の知らせみたいのがしてな。お前が長時間何もしないで尾行してくれたお陰で時間をかけて気配を探れたから気付けた。」

「時間をかけたからと言って見破られるとは私の尾行術もぉまだまだって事ですかねぇ。ちなみに、参考までにどの辺から気付いてましたぁ?」

「服屋に入る前位だな。でも、虫の知らせがしたのは本屋の辺りだったから実際はその辺りから尾行してたんだろう?」

「………驚きましたぁ。大正解ですよぉ。」

 ジェイドは口元に貼り付けたニヤニヤ笑いを一瞬止めて驚愕していた。

「大正解ついでにもう一つ答え合わせをしようか。ついさっき出店で買い物して時に気が付いたんだが、お前たちがこの前取引していた相手は宿屋の店員なんじゃないか?それも魔物も一緒に泊まれるような宿のな。」

「………これまた驚きましたぁ。私は貴方を脳ミソまで筋肉で出来てるタイプの人種かと思っていましたが、意外と頭の回転も早いようですね。」

「ローガどういうことだ?」

 精神的な疲労と辛さとジェイドの突然の出現で会話に付いて行けてなかったロイドがローガに問いただす。

「こんな平和な王都で暮してる連中で魔物の臭いが滲みついてるヤツなんてかなり限られてる。でも、冒険者も大道芸人達も違った。あと残ってるのは魔物も泊まれるような宿屋で普段から魔物小屋を掃除してるような人たちしかいないんじゃないかと思ってな。もしかしたら他にもいるかもしれないけどそれはこの際、考えない事にしてその人達が取引相手だったと仮定する。さっきのパンの時に思ったんだが、町での食事は調理されて出てくるのが当たり前みたいだからどんな食材が使われていたかを知らないでも食事はできる。つまり、店員が悪意を持っていれば食べたらマズイ物だって混ぜられる。それを踏まえてさっきの仮定の話と繋げてみると宿屋に泊まっている魔物達の食事にもあの干物を混ぜられるんじゃないかと思ってな。そんで最後にさっきジェイドにこんな平和な王都で何を企んでるかをワザとわかりきった質問をして暗に聞いてみた。王都を戦場にしようってんなら宿屋に泊まってる魔物が一斉にあの干物を食べりゃ目的を通り王都を戦場に変えられる。」

「参りましたねぇ。そこまで完璧に見破られるとは。」

 そう言いながらも全く焦った様子は無いジェイドはおもむろに口の中から何かを取り出し空に向かって思いっきり投げる。

 一直線に空へ昇った何かは空中で炸裂し花火のように弾けた。

「緊急用の信号弾みたいなものです。これで私のお仲間さんたちが計画を前倒しにして実行してくれます。本当はファッションショーの最中に始めたかったんですが仕方ないとですねぇ。本来なら今日は我々のアジトを嗅ぎまわっているそちらの分身使いさんの方を暗殺する予定だったんですが思わぬ所で足が付いてしまいましたねぇ。」

「ジェイドは俺が引き受ける。ロイドは分身して宿屋を抑えてくれ。」

 ロイドがわかったと答える前にジェイドが動く。

「ダメですよぉ。そちらの人の分身は厄介過ぎる能力ですからぁここできっちりと死んで逝ってもらいますよぉ。」

 いつかのように口から槍を吐き出しながら突っ込んでくる。

 ロイドは事前にその攻撃方法をローガがから聞いていたのでこれに反応できた。

 後ろ跳びながら迫る槍の矛先を自分の得物で逸らそうとする。

 しかし、それよりも早くローガが動いた。迫る槍を横から思いっきりぶん殴る。

 横から急激な力を受けた事で軌道が変わり、口から吐き出す途中だった槍が首ごと180度回転する。

「ダメだな。お前にはちゃんと俺に売ったケンカを清算してから他にちょっかいを出してもらおうか。」

 その様子にここは任せて大丈夫そうだと判断したロイドは、暗くなった王都の中宿屋に向かって走る。

「ローガ、ソイツはお任せたぞ!」

「ああ、きっちりと潰しておく。」


 こうしてお祭りの前夜祭が始まった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


最近初めての感想をいただきました。

感想をくださった方ありがとうございます。


次回も読んでいただけたら幸いです。

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