町中にいる生物を探してみよう
今日も昨日に引き続き調査を行うローガとロイド。
「で、今日はどんな調査をするんだ?」
待ち合わせ場所で落合って開口一発ローガが聞いてくる。
「昨日は俺が調査方針を決めて空振りだったからな……。逆にローガならどう調査するか参考までに教えてくれないか?」
正直ロイドとしてはローガが王都から出ていかないように足止めすることが真の目的だあるため、今日の調査内容など特に考えていなかった。
「俺ならどうするかって?そうだな……王都には腐るほど人がいるからこの中からあの時の取引相手を探しだすのは無理だと思う。だったらいっそ王都内にいる魔物を探すってのはどうだ?」
「ほう、なるほどな。確かに人がわんさかいる王都で人探しするよりも魔物を探してその付近にいる人にあたりを付けて調査したほうがいいかもしれないな。よし、今日は王都内にいる魔物を探してその周辺にいる人を調査するとしよう。」
と、いう訳で今日は|王都(町中)にいる|魔物(生物)を探してみることになった。
とはいえ実はこれが中々難しかった。王都内には人が溢れかえっておりローガの気配感知能力をもってしても人の気配が多すぎて魔物の気配がかくれてしまい感知できず、臭いはご婦人達が競うように付けまくっている香水のせいでまともに追えない。
かといって、人に聞こうにも道行く人に突然「この辺で魔物がいる場所を知りませんか?」なんて聞こうものなら確実に変人と思われ下手をすると衛兵を呼ばれる可能性すらある。
どうやって魔物を探すか頭を悩ませるロイド。
そうやってロイドが少し目を離した隙にローガは躊躇なく道行く人に突撃する。
「すまない、そこの人。俺達は魔物を探してるんだが、この辺で魔物とかがいるような場所知らないか?」
「なにドストレートに変な事聞いてんだーーー!」
慌ててロイドが駆けつけツッコミを入れた後愛想笑いを浮かべながら俺達は怪しい人たちじゃありませんよアピールをするが、時すでに遅し。
ローガが突撃した通行人(派手なメイクのオバチャン)は完全にローガ達を不審人物と認識しているようだった。
この反応はある意味仕方ない反応だった。ローガはズボンしか履いていない毛むくじゃらの大男で止めに顔が狼だ。ただでさえ普通じゃない見た目の人物がそんな事知ってどうするのかという情報を求めて来て不審者と思われない道理は無い。
通行人(派手なメイクのオバチャン)は警戒するようにジリジリと距離を取り始める。
ロイドは初っ端から諜報員として鍛えた話術を駆使し誤解を解くために奔走するはめになった。
「はぁ~~~~~。ローガ………、頼むからもう勘弁してくれないか……。」
精神的な疲労が強いのかロイドのため息はいつもよりも大きかった。
あれからロイドが必死で誤解を解こうとする中ローガは凝りもせずまた同じように通行人に声をかけまくった。
最終的にはロイドのフォローが間に合わず衛兵を呼ばれその場を逃げ出すこととなった。
「ん?俺なんかしたっけか?」
ローガは自分の姿が周りから浮いている自覚が無いようである。
「はぁ~~~~~。自覚も無しか……。」
調査を始めてまだ間もないがロイドの精神的な疲労は相当なようだ。
ローガにしばらく休憩するから何もするなと言い含めてロイドは近くにあったベンチに座り込む。
ローガはしばらくはおとなしくしていたが、ふと何かに気が付いたようで耳をピコピコと動かし始める。
「はぁ~~、今度は何だってんだよ。っていねえし!」
それを察したロイドがため息を吐きながらローガを振り返るとそこにはすでにローガの姿はなかった。慌てて辺りを見渡すと周辺の建物で一番高い3階建ての宿屋の壁をよじ登っていた。
幸いにも出来るだけ人気が無い場所を選んで休憩していたことと、ローガが素早く壁をよじ登ったことで誰にも見られずに済んだため騒ぎにはならなかった。
ローガは高いところによじ登ったことでお目当てのものを発見することができ、ローガは満足気に声を漏らす。
「やっぱりあそこに魔物がいるな。しかし、なんか人だかりもできてるみたいだけど何かあったのか?」
ローガが謎の人だかりに疑問を持っていると下からロイドが声をかけてくる。
「何やってるんだ!そんな所にいたらまた騒ぎになるだろ!とっとと降りてこい!」
どうやらお怒りのご様子だったのでおとなしく降りることにしたローガ。
「ローガお前はもう少し自分がインパクトがある外見をしていることを自覚しろ。普通の人がやらないような奇怪な行動は慎め。」
降りてくるなりさっそく説教を始めるロイド。いい加減堪忍袋の緒が切れたんだろう。
そんなロイドの説教をスルーしてローガが口を開く。
「向こうに魔物がいるみたいだぞ。それと何か人だかりができた。」
ローガのその報告にまだまだいいたいことが山ほどあったロイドであるが一旦飲み込むことにした。騒ぎが起こっているなら早く行った方がいいと判断したからだ。
「はぁ~~、わかった。案内してくれ。」
こうしてロイドはストレスを溜めながら調査を続けるのであった。
ローガに案内されて王都の少し開けた広場に来た二人は人だかりの正体が大道芸をみる観客であることに気が付いた。
人だかりの奥を見ると魔物の使役能力者と思われる男の笛の音に合わせて、腕が4本ある猿の魔物とグレイハウンドがキャッチボールをしながらジャグリングをしていた。他にも小さな鳥の魔物が使役者の足元に置かれた籠から花を銜えて観客たちに渡して回っていた。
「おおっ、何かわからんが凄いな!」
ローガは人生初の大道芸の鑑賞に興奮したように目を奪われている。
「ラッシュモンキーにグレイハウンド、フェアリーバードだな。全部小型の魔物に部類され単体でのランクは2~3位の魔物だな。」
ロイドが魔物についての情報を解説するがローガは当然のように聞いていなかった。
調査目的が目的で来ている以上、本来なら大道芸に見とれている場合ではないのだがロイドの真の目的は調査ではなくローガが王都に飽きて出ていかないように監視することである。
ローガが王都での出来事を楽しんでいるのに水を差しては本末転倒なのでロイドも黙って大道芸を鑑賞することにした。
やがて大道芸も佳境に入り笛の音がどこかコミカルな曲調だったのが一転しテンポが早い曲調になる。
それの呼応するかのように魔物達のジャグリングも激しさを増してきており、花を配り終えたフェアリーバードも参戦し三匹で息の合った激しいジャグリングを見せる。
最後に一斉に投げたボールが空中でぶつかり合い一塊になって落下し、その下に配置してあった籠にすっぽりと全てのボールが収まって大道芸は終了となった。
拍手の中魔物達が小さな籠を持って観客の元へおひねりをもらいに行く。
ローガも興奮した様子でおひねりの籠の中にポケットに入れてあった金を取り出し、金額も確認せずに放り込む。
普通の大道芸のおひねりの相場は銅貨か大銅貨数枚であるがローガは金額を確認しなかったせいで銀貨を数枚放り込んでいた。
やがて人だかりがまばらになりだした頃、ロイドがそっとローガに問いただす。
「で、どうだった?この前の取引相手とやらはアイツだったのか?」
「いや、違うな。あの時のヤツはもっと色々な種類の魔物の臭いがこびりついていた。」
そうやって話している所に先程大道芸をしていた男がやってくる。
「すみません。僕はフレディといいます。あなたは先程銀貨を入れてくださった方ですよね。」
まさか声をかけられるとは思ってなかった二人はどうしようと目線で会話をするが、そんな二人に気づかずフレディと名乗った男は続ける。
「実は僕達はまだまだ駆け出しの大道芸人で銀貨なんてもらったことが無かったものですから。僕達の芸を気に行っていただけたようだったので思わず声をかけてしましました。もしよかったら僕、この近くに宿を取ってあるので僕達の芸の何所が良かったかもしくは何所が良くなかったか教えてもらえたらと思って。」
銀貨をもらえたことがよっぽどうれしかったのであろう。ローガとロイドの困ったような表情にも気づかずフレディは一気にまくしたてる。
ちなみに、フレディのテンションがこんなに高いのは大道芸人達の間で『大道芸人は貴族以外の客から銀貨をもらえたら一人前』といわれているからである。
「あ~、悪いが俺達は先を急いでるんだ。」
長くなりそうだと判断したロイドがフレディの申し出を断るのをよそに、ローガはふと気になった事を質問する。
「宿を取ってるって言ってたけど後ろの魔物達はどうしてるんだ?」
「え?ああ、この子たちですか?王都位の規模の町になると結構魔物も一緒に宿泊できる宿屋はあるんですよ。流石に部屋までは一緒ではないですがね。」
ロイドに申し出を断られて冷静さを取り戻したフレディはローガの質問に答える。
「へ~、魔物も泊まれる宿があるなんて都会はやっぱり凄いんだな。」
ローガの田舎者まるだしのこの発言にフレディはローガが大道芸のおひねりの相場を知らなかっただけで、自分の芸を特別気に入ってくれたわけじゃないという可能性に気が付いたようだった。
「すっ、すいません。何か僕舞い上がってしまっていたようで。」
「いや、普通に面白かったぞ。俺は他の大道芸は見たことないけどな。」
勘違いしていた可能性に気づき急に恥ずかしくなったフレディをローガが無自覚にフォローする。
そんな中、ロイドはなにかひらめいたようでフレディに質問する。
「そうなんだよ。コイツは凄い田舎者でな。大道芸を見たことないなんていうものだから今俺が大道芸を見せて回ってるんだよ。どうやら魔物を使った大道芸を気に入ったようだから他にも見せてやりたいんだが、アンタお仲間がどこらへんで大道芸やってるか知らないか?」
ローガも大道芸を気に入ったようだし、魔物を使役した大道芸をやっている者なら魔物の臭いも染みついているだろうからアタリの可能性があると判断したロイドはこれはチャンスと他の大道芸人の情報を仕入れようとする。
「はい、わかりますよ。王都みたいな大きな町では近場で同じような芸をする者たちが鉢合わせしないように事前にそのあたりの事を話し合っていますから。」
こうしてロイドのもくろみ通り情報を得られた二人はその後も魔物を使役する大道芸人を中心に調査を進めるが、この日は全員空振りという結果に終わった。
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