VSムカデ盗賊団⑤
ローガは戦闘態勢をとるが百足蛇は威嚇をするのみで自分からは仕掛けてくるような様子は無い。
(向こうからは仕掛けてこないか……。ひょっとするとコイツまだ急激に変化した体が馴染んでいなくて本調子じゃないんじゃないか?)
振り返ってみると確かに先ほどドドコルを捕食した時の動きもどこかぎこちなさがあった。
「本調子じゃにとこ悪いけど俺は相手が全力を出せないからっていって手加減してやるほど甘くないんでな。」
ローガは相手が本調子じゃないことを察すると今が攻め時だと言わんばかりに一気に距離を詰める。
「ここで!」
走りながら自慢の爪に力を籠める。
「おとなしく!」
狙いを百足蛇の左側の足に絞る。
「死んどけ!」
百足蛇の左側の足の関節を爪で引き裂きながら一気に駆け抜ける。
ローガが駆け抜けた後で一拍遅れて引き裂かれた足から一斉に体液が吹き出す。
その臭いを嗅ぎながらローガは冷静に分析する。
(普通にクセェが毒がありそうな臭いじゃないな。後で水浴びしないとマズイだろうが多少派手な攻撃をしても問題なさそうだ。案外今回の相手の方が前にやり合った蛇よりもやり易そうだな。)
一方で一瞬で左側の足の大半を失った百足蛇は体液をまき散らしながらのたうち回る。
「これで機動力は殺した。次はその長すぎる胴体を引きちぎってやる。」
ローガは未だのたうち回る百足蛇の追撃を仕掛ける。
片足を何十本も失った事が気付けになったのか百足蛇は今度は機敏に反応した。
走りくるローガに尾を横なぎに叩き付ける。
「なんだよ。ちゃんと反応できるじゃねぇか。」
ローガはこの叩き付けを上に跳んで躱す。
ここで空中で動けないローガに百足蛇は予想外の攻撃を繰り出す。
「なにっ!」
ローガを襲ったのは石で出来た槍。魔法の知識があるものならこれが土系統の魔法『ストーンランス』であることに気づいたであろう。
(くそっ!完全に予想外だ。)
ローガはかろうじて左腕で防御し致命傷を避ける。
(いってぇ……。こりゃ骨までイッたかもしれねぇな。)
その代償は大きく左腕に大きな損傷を受ける事になった。
(しかしなんだ今のは?地面から突然槍が飛んできた。攻撃の直前に魔導師とかが魔法使う瞬間に感じるビリビリした感じがしたから魔法なのか?どっちにしても不用意に跳ぶといい的だ。)
そうしてローガが考察している間も相変わらず百足蛇は積極的に攻めようとせずあくまでもカウンター狙いのようだ。
(とはいえアイツの尻尾の凪払いは攻撃範囲が広過ぎて跳ばないと避けきれない。)
圧倒的なリーチと攻撃範囲から繰り出される攻撃とかわした先の狙い撃ち。単純だが極めて厄介な戦法であった。
(さて、どうしたものか。……いっそもう避けずに正面から打ち合うか。)
ローガが考えついた攻略法はほとんど正気とは思えない方法だった。百足蛇の全長は約20メートルでありその巨体から繰り出される一撃に正面から打ち合うなどまともな人間ならまず考えないだろう。
しかし、ローガの頭は外見を含めてまともではない。
(俺の一撃とアイツの一撃どっちが上か力比べといこうか!)
ローガは腹を括ると先程と同じように駆け出す。
対する百足蛇も先程と同じように尾を使った凪払いを繰り出さす。
迫る尾に対しローガは腰を落とし構えると渾身の一撃で迎え打つ。
「ダアァァァァァァラアァァァァァァァァ!」
腰を落とし体の捻りを加えて体全体で拳を繰り出しインパクトの瞬間に拳をえぐり込むように回す。
ローガの拳と百足蛇の尾が壮絶にぶつかり合いそして……。
打ち勝ったのはローガの拳であった。
「あれっ?」
ローガの拳は本人の予想を超える威力を叩き出し打ち勝つどころか百足蛇の尾を消し飛ばし、くしくも当初の宣言通り長すぎる胴体を短くするまでの威力を発揮していた。
……実はローガはこれまで全力で拳を繰り出すということをしたことがなかった。今までは狩の時は大概ローガが全力を出さなくても事足りており全力での戦闘は数えるぐらいしかやったことがなかった。
加えて格闘技をある程度習得し正しいパンチの仕方を学んだこともこの威力を叩き出せたことに大きく関係していた。
(なんか予想よりだいぶ凄い威力が出たけどとりあえず結果オーライだ。このまま一気に頭を潰す!)
百足蛇は先程のローガの一撃で全長の3分の1を失い痛みののた打ち回っている。ここで追撃しないローガではない。
(頭部にもう一発さっきの拳をぶちこんっでやる!)
一気に頭部に近づくローガ。ローガの接近にのた打ち回ってる場合じゃないと気づいた百足蛇は矢継ぎ早にスートンランスを繰り出しローガを近づけさせまいとする。
「平地でそんな物に当たるか!」
ローガは『連歩一躍』であたる瞬間に小さく跳ぶ事で最小限の動きでコレを全て避ける。
百足蛇の懐に入り込むと百足蛇はストーンランスでの迎撃を諦め直接顎で噛み砕こうと迫る。
それを今度は全身のバネの使ったすくい上げるよなアッパーで迎え撃つ。
ローガの拳はまたも百足蛇の巨体に打ち勝ち百足蛇の頭が跳ね上がる。
がら空きの胴体に追撃の蹴りを叩き込み体をくの字に折る。
落ちてきた頭部に渾身の拳を叩き込む。
「こいつで死んどけ!」
ローガの拳を受け全長の3分の1を失ってはいるがまだ十分巨体といえる百足蛇が吹き飛ぶ。
尾よりも頭部の方が頑丈なのか消し飛びこそしなかったがもはや頭部は原型を留めていない。
顎は砕け牙は折れ眼球は片方完全に消失していた。
どう見ても今や瀕死の重体であったがローガは百足蛇の背中から嫌な気配を感じ咄嗟に距離を取る。
その直後、百足蛇の背中が割れた。
その直後、割れた背中から翼のような何かが噴出し辺り一面を地獄に変えた。
(なんだこりゃ!?周りの木が一気に死んだ。いや…これは腐ったのか)
まるで強力な毒を浴びたように周囲の木々が瞬時に朽ちていく。
(翼?………違うあれは毒が背中から噴出してるのか!?)
噴出す毒の翼は留まることを知らず拡大していき周囲をどんどん生物が存在できない地獄に変えていく。
ローガも大きく距離を取り対策を考える。
(なんかドえらい事になってきたな。流石に今は近づけそうもないしどうするかな。)
ローガが手をこまねいていると不意に百足蛇が毒の翼の放出をやめ倒れた。
「あれ?もしかして死んだのか?」
ピクリとも動かないがまだ周囲に毒の翼の粒子が残っているので確かめにいくこともできない。
「参ったな。周りも酷い事になってるし。」
ローガのいう通り周囲はローガが暴れまわった影響と最後の毒の翼によりエライ事になっていた。
「とりあえず………。葉腹減ったな。まずは飯にするか。」
確かに周りは凄い事になっているが腹が減っていては何もできないとばかりに、ローガはとりあえず問題を全て放置して周囲に狩れそうな魔物がいないか気配を探り始めた。
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