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人狼村開拓記  作者: やまぐ
21/43

VSムカデ盗賊団

「状況はどうなってるんだ?」

 制圧作戦を開始したはいいがローガと本体のロイドは周辺のジャイアントセンチピートの制圧が終わるまで盗賊のアジトに踏み込めない。ローガはソワソワしながらロイドの状況を確認する。

「少しは落ち着け。今は各分身達が一匹目を始末し終えたぐらいだ。突入はもう少し待て。」

 一方のロイドは分身達から送られてくる情報を捌きながら分身達に次のジャイアントセンチピートの位置を指示しており忙しそうだ。

「うぅ……。どうにも自分が体を動かしていないのに戦況が進んでくのは落ち着かない。もう俺一人でもアジトに殴り込んでいっていいか?」

「ダメに決まっているだろう。周辺のジャイアントセンチピート達も呼び集められたら作戦が台無しになる。落ち着かないならアジトに踏み込んでからのイメージトレーニングでもしていろ。」

「むう、わかった。」

 ローガは目を閉じてイメージトレーニングに集中し始めたのでロイドはようやく分身達への指示に集中できるようになった。

(今のところは順調だな。ローガのヤツもようやく静かになったし。このままイレギラーな事が起こらずに行けばいいんだけど……。)




 初めに周囲の異変に気づいたのはこの盗賊団のリーダーであり、ジャイアントセンチピートを使役する能力を持つ男、ドドコルだった。


 昔から粗暴な性格であったドドコルは生まれ育った村を追い出されるようにして冒険者となったが、その性格が災いし長続きせず弱者から生活の糧を奪うことで食いつなぐ盗賊になり下がるにはそう時間はかからなかった。

 体格にも恵まれていたドドコルは自分と同じく弱者から奪う事の蜜の味を覚えたゴロツキ共を束ね王都周辺の村をを荒らしまわるそこそこ大きな盗賊団の頭に成り上がったのだが、東国連合で開催される武道大会に参加するために各地から移動してきた腕自慢の冒険者達にあっさり蹴散らされ冒険者達から逃げているうちに王都から遠く離れたこの辺境の地に追いやられてしまった。

 ボロボロになりグレイハウンドの群れに襲われたドドコルは必死に信じてもいない神に祈った「助けてくれ」と。するとどこからか現れたムカデ型の魔物がドドコルを助けその命を救った。

 これは単純に命の危機に瀕したことでドドコルに受け継がれていた神祖『壷蟲師神ジャルジャレ』の種族特性が覚醒したまたま近くに居たジャイアントセンチピートに「助けろ」とうい命令を実行させた事が原因であった。

 ジャイアントセンチピートを使役する能力に目覚めたドドコルは、自分が能力に目覚める前に率いていた盗賊団を壊滅にまで追い込んだ二人の女冒険者が、アナンダの町を拠点として活動していることを突き止めアナンダ周辺の洞窟に拠点を構え行商人を襲いながら力を蓄え復讐の機会をうかがっていたのであった。


 そんなドドコルが異変に気付いたのは実力ではなくただの偶然によるところが大きかった。

 ドドコルはこの日も日課となった酒を飲みながらかつての自分の盗賊団を壊滅させた女冒険者の二人組に復讐をはたす妄想に耽っていたが、酒がきれたので追加を持って来させようとジャイアントセンチピートに命令しようとした。(本来なら命令ど出来ない凶暴な魔物を自分だけが使役出来る優越感からドドコルはこの様なしょうもない小間使いのような事までジャイアントセンチピートにやらせていた。)

 そこで初めて外で警備させていたジャイアントセンチピート達の存在がほとんど感じられなくなっていることに気付いたのだった。

 しかし、元から頭の回転が早いほうではないドドコルは酒が回っていたこともあり、奇襲を受けているという可能性にすぐには結び付かなかった。

「おい!誰かいないのか!酒が切れてんだよ!誰でもいいから酒持って来い!」

 喚き散らすと手下の一人(魔物ではなく人間)が酒を持って来た。

「お頭。酒ぐらいはいつものようにご自慢のムカデ共に持ってこさせて下さいよ。」

「すまねえな。なんか外で警備させていたムカデ共が居なくなっちまってるみたいでよ。」

 それを聞いた手下は慌ててドドコルに詰め寄った。

「おっ、お頭。そいつはつまりひょっとすると俺達は奇襲を受けているって事になるんじゃないですかい?」

 ここで初めてドドコルはその可能性に気づきドドコルは大声を張り上げた。

「やっ、野郎どもっ。カチコミだ~~~。」




 一方、ローガ達はすでに周辺のジャイアントセンチピート達の掃討を終え洞窟の中に侵入していた。

 盗賊がアジトとして使っていた洞窟はそこそこ大きく通常なら二人だけで捜索するのは少しばかり手こずりそうな規模だったが、ここでもローガの五感は存分に発揮されていた。

「こっちから人の臭と話声がする。」

 洞窟の分かれ道でも全く迷うことなく盗賊がいる方向を特定し駆け抜ける。

「よし、その調子でどんどん進んでくれ。分かれ道の別のルートにはジャイアントセンチピートの掃討が終わった俺の分身を向かわせるから捕まってる人がいたとしても大丈夫だ。作戦通り俺達は魔物を使役している盗賊を最優先で倒すぞ。」

 ロイドもローガの後を追いながら分身達に指示を出す。

(なるほど、確かに全体的なスペックは極めて高い。ローガみたいなヤツらで編成した部隊があれば戦場では強力な遊撃隊として活躍できるだろう。しかし、五感の鋭さは敵わないが戦闘能力なら今まで観察した結果から判断して、俺のもう一つの種族特性を使えば俺一人でもローガを仕留めるのは可能なレベルだ。総合的に見てもレイザール閣下が自ら情報を欲するような者ではない。となるとやはり、大蛇の討伐の際にローガが垣間見せた謎の種族特性に何か秘密があるんだろうが……。)

 ロイドが考え事をしていると不意にローガから体を揺さぶられた。

「おい、聞いてるのか?この先に盗賊のほとんどが集まっている広い空間があるみたいだぞ。」

「おぉ、そうか。すまない、少し考え事をしていた。」

「それでどうする?このまま突入って事でいいんだよな?」

「ああ、ここから先は特にジャイアントセンチピートの増援を呼ばれる前に制圧するスピード勝負になる。隠密行動の必要性は無い。」

 それを聞くやいなやローガはまたもロイドを置いて洞窟の中を疾駆し始めた。

「……アイツの頭の中にはチームワークって概念が無いんだろうな……。」

 もはや完全に諦めた口調でロイドは呟いた。




 ローガが盗賊たちがたむろしていた場所に踏み込んだ時、盗賊たちは呑気にカードでの賭け事に興じていた。

 ローガは問答無用の先手必殺とばかりに一番近くに居た盗賊に走りこんだ勢いのままドロップキックをかまし一人を仕留めた。

 ここで初めて盗賊達は侵入者による奇襲を受けている事に気づき慌てて各々が武器を構え始める。

「なっ、なんだ?コイツは?魔物か?」

 ローガの容姿を見て始めは大抵の者が抱く疑問を仲間に問いかけながら盗賊たちはローガを囲むようにジリジリと包囲網を形成する。

「俺が知るかよ!いや、待て。あの血走った目……人間のソレじゃねえ。血に飢えた魔物に違いねえ。」

 この時ローガは確かに、さんざん「待て」をされていた影響でフラストレーションが溜まっており、ローガの事を知らない者が見ると魔物としか思えないような感じになっていたので何も知らない盗賊たちが魔物と判断したのはある意味当然だった。

 ゆらゆらと体を揺らしながら相手のリズムに合わせて動き相手の意識を誘導し一瞬の間隙を突いて肉薄する歩法『ゆらぎ』。ローガが最近覚えたこの技は、皮肉な事に盗賊たちが連携のためにリズムを合わせようとすればするほど全員がローガの術中にはまり易くなる。もちろん全員の意識の間隙を同時に突くことは難しくなるが、一人一人の力量がたいしたことない盗賊相手ならローガの身体能力と合わせれば十分すぎるほど通用する。

 ローガは包囲網を完成させ仲間と同時に攻撃するタイミングを目線で相談しあっている盗賊たちの一人に狙いを絞るとそれまでのリズムを一転させて一瞬で距離を詰め肉薄する。

 あまりに堂々と行われた奇襲に包囲していた誰もが反応できなかった。


 ローガが狙いを定めた一人に繰り出したのは掌底、狙った場所は心臓の真上。この技もローガが最近習得した技の一つで心臓が脈動した瞬間に強い衝撃を与える事で強制的に心臓麻痺を起こさせる一撃必殺の技『鼓動貫』。殺人技であるが故にグレンのとの組み手の時には使うことは無かったが相手が殺しても問題ない相手なら使うことに躊躇は無い。

 仲間が何の抵抗も出来ず一撃で殺されたのを見て盗賊たちは始めて自分達が狩られる側であることを自覚した。


 そこで場違いに洞窟内に響く自分たちの頭が上げた声。

「やっ、野郎どもっ。カチコミだ~~~。」


 窮地に立たされた盗賊たちは全員で心の中で叫んだ。

(((((おせぇよ!!!)))))

ここまで読んでいただきありがとうございます。


実は密かに只今、毎日投稿に挑戦中です。

頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします。

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