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人狼村開拓記  作者: やまぐ
17/43

王都に向けて

ローガがグレンから体術の手ほどきを受けて早くも一ヶ月の月日が流れたていた。




この間ローガはグレンと共に依頼をこなしながら体術の手ほどきを受け、稼いだ金で体術・格闘術の指南書を買い漁り読んで実戦で試し思考錯誤して自分の技とする事をひたすら繰り返していた。


この日ローガとグレンはグレンの仲間が冒険者に復帰することになったため最後に模擬戦をしていた。

いつものようにローガとグレンは対峙する。グレンはすでに虎咆を使用した状態であり、ローガもまた戦意を漲らせている。


グレンは自分では積極的に仕掛けずあくまでもカウンターから狙いに徹する。これは虎咆を使った状態で激しく動くとその分タイムリミットが減るので動きを最小限にして長く戦うためである。

一方でローガは以前のようにがむしゃらに突っ込むことは無くジリジリと慎重にグレンとの距離を詰める。

次第に近づいてくるローガの動きに意識を集中するグレンだが意識を集中しているにも関わらず気が付いたらローガがすでに攻撃範囲内まで距離を詰めており拳を繰り出すモーションに入っていた。

(なにっ、意識の間隙に滑り込まれたのか!)

慌ててローガの目線を探り拳の狙いと軌道を読み取ろうとする。

(狙いは頭か、ローガ殿を相手に下手な防御は殆ど意味をなさない。あくまでも攻撃をいなすようにして躱し可能ならカウンターへつなげるようにして戦わなければ虎咆を使用した状態でも一瞬でやられる。)

ローガの狙いを予測し攻撃に備える。予想通り頭部を狙った拳が繰り出されるがそのスピードがグレンの予想を超えていた。首を傾けながら手を添えて軌道を逸らしギリギリで躱すがそこでグレンは己の失策に気づく。ローガが繰り出した拳は確かに鋭いが重さが無かったのだ。

(しまった!この拳はフェイントで本命は次の攻撃か!?)

グレンはすぐさまローガの次の攻撃を警戒するがここでさらにローガはグレンの予想を覆す行動に出る。


指パッチンだ。

すでに躱したと思い意識の外側にあった拳を繰り出した手がグレンの耳元で音を鳴らした。

音の発生源を確認しようとして反射的に動こうとする体とローガの次の攻撃を見極めようとしている意識がグレンの中でせめぎ合い体が一瞬硬直する。

ローガを相手にその硬直は致命的過ぎた。当然ローガはその硬直を見逃さず本命の攻撃に移る。

体ごとぶつかるように踏み込み、空いている手でグレンの腰に手を回し自らの腰をぶつけるように体を密着させる。そして密着状態から繰り出す技は地球においては発勁と呼ばれるものだった。

「ガハッ」

グレンが苦悶の声を漏らしながら悶絶する。その様子からこれ以上の戦闘は不可能であろうことが見て取れた。


こうしてローガとグレンの模擬戦は終了した。




「まいりました。もう私が教えられることは無さそうですね。」

「今までありがとな。おかげで俺だいぶ強くなれた気がする。」

模擬戦終了後二人は体を休めながら会話する。

「しかし、僅か一ヶ月でこうもあっさりと追い抜かれるとは………。ローガ殿、強くなりすぎでしょう。」

「全部お前のおかげだよ。お前に勧められたとおり色々武術の指南書を読んで俺なりにアレンジしたらだいぶいろんな事ができるようになった。」

「後学のために私が先程の模擬戦で何をされて戦闘不能になったか教えていただけますか?」

「いいぞ、まず初めにグレンの意表をついて近づいた技はあれは『ゆらぎ』っていう一種の歩法だな。体を動かすタイミングを調整して相手の意識の波を誘導しその間隙を突いて一気に肉薄する歩法らしいぞ。次は技名は特になく単純に指パッチンだな。『ゆらぎ』について書いてあった本に相手の意識を誘導する方法の一つにこういう手段があるって書いてあったから試してみた。最後の一撃は『発勁』っていうらしいぞ。体の内部で生み出した力を一気に放つ技だな。」

ローガは解説しながら二冊の本を取り出す。

「『奇攻武闘術全集その一』と『発気攻拳指南書』……ですか。良く読んだだけで習得できましたね。」

「俺がやりやすいように色々とアレンジを加えたりしてるから俺が覚えた技は純粋にこの本に書いてある技と全く同じってわけじゃないけどな。」

グレンはローガが取り出した本をパラパラとめくりながら内容を読んでみる。

「これは……『発気攻拳指南書』の方はまだ内容がわからなくも無いですが『奇攻武闘術全集その一』は殆ど技名とってつけたような技の原理の解説が書いてあるだけで具体的なやり方なんて書いてないじゃないですか。本当によくこんな説明で『ゆらぎ』なんて高等技術を習得できましたね。」

「実は俺、相手の意識の波を読むってのは狩りの時とかに無意識にやってたみたいでな。原理がわかればその応用だから色々試してるうちに習得できみたいだ。」

この言葉にもはやグレンは苦笑いしか出ない。


「依頼はすでにこなしましたし、今日はこの辺で引き上げてギルドに戻りましょうか。」

「そうだな。グレン今日までありがとな。」

「僅かでも恩返しができて良かったです。」




ローガ達が依頼の報告をしようとギルドに戻るとそこには見知った顔があった。

ガッデムだ。

「グレン、悪いけど依頼の報告しといてくれるか?ガッデムさんがいるみたいだから一言挨拶してくる。」

「ローガ殿は領主様と面識があるのですね。わかりました報告はこちらでやっておきます。」

依頼の報告をグレンに任せローガはガッテムに話しかける。

「ガッデムさん、久しぶり。」

「ローガか、久しぶりだな。………ほう、しばらく見ないうちにまた一段と筋肉に磨きをかけたな。以前にもまして筋肉が怪しい魅力を醸し出している。」

「最近格闘術に凝ってるからな。そういうガッデムさんも相変わらずキレキレだな。」

「当然だ。」

二人はそう言って笑い合う。

「そういえばガッデムさんも普段から何かの格闘術を修めたような身のこなしをしてるな。」

「ほう、それに気づくか。この一ヶ月で成長したのは筋肉よりもむしろ中身だったか。格闘術に興味があるなら今度俺の技を伝授してやろう。」

「ホントか!ありがとう。」

「しかし、あいにく私は数日後に王都に行かねばならない。今日もそのための護衛の依頼をしにきたのだ。」

「そうか。………なあ、その護衛の依頼俺でも受けれるか?」

「今回の依頼はランク4以上なら受けることは可能だから問題ないぞ。しかし、ローガは護衛の依頼を受けるのは初めてだろう、採取や討伐とは勝手が違うが大丈夫か?」

「確かにやったことないけどたぶん俺、結構役に立つと思うぞ。索敵能力にも自信あるし、道中野宿とかになっても慣れてるから少なくとも足を引っ張ることは無いだろうし。」

「確かにそうだな。考えてみればローガは戦闘能力、索敵能力、野営能力いずれのおいても死角が無いな。わかった出発は三日後の予定だ。詳しいことは依頼書にかいてあっるから受けた後読んどいてくれ。」

「了解。ところで護衛の空いた時間に………。」

「わかっている。その時に私の技を伝授しよう。」

「よっしゃ!じゃあさっそく依頼を受けてくる。」

喜び勇んで依頼を受ける手続きをするローガ。


この時ローガはその様子を陰から観察している者がいることに全く気づいていなかった。




陰でローガを観察しているその人物、ロイドは観察を続けながら少し前の事を回想していた。

帝国の諜報員であるロイドの下にその指令が下ったのはガッデムが護衛の依頼を申請する一週間程前にさかのぼる。

この日、ロイドは旅の商人に扮した帝国の仲間に接触し定期報告と使用した物資(遠距離通信用の魔導具)の補充をしていた。

いつものように買い物をするふりをしながら金と共に定期報告の内容をまとめた紙を渡し、買った品物に紛れ込ませてある物資を受け取る。

宿屋の自室に帰り補給した物資を確認しているとなぜか高価なはずの遠距離通信用の魔導具が二つ複数入っており他にも見慣れない魔道具と思われる物があり便箋のようなものまではいっていた。

(なんだこれ?っておい!この便箋に書いてある紋章は………。)

手紙には帝国の王家の紋章が書かれていた。

(王家の紋章だと!なんだって俺みたいなただの一介の諜報員に王族からの勅命が下るんだ。)

驚愕しながら内容を読む。




やあ、いつも我々帝国のためにご苦労だね。君たちの活躍のおかげで帝国の未来は明るいものになっていくよ。

さて、今回は帝国のひいては世界の未来をより明るいものとするために君にお願いしたいことがあるんだ。

実は私の方でそちらの国に先日の大蛇の件に着いての裏情報をリークしてね。近いうちに気にが居る町の領主が大蛇の件の報告のためにそちらの国の国王から呼び出しを受けるはずだ。

君は例の人狼族の先祖返り君とともにその時に護衛の依頼を受け王都まで先祖返り君を連れてきて欲しい。優秀な諜報員の君なら必ずこの御願いを達成できると信じているよ。

その後の事については王都に着いたときに改めて指示を出すのでよろしく頼むよ。


レイザール=ネスティア=ガハルード16世


追伸

普段から頑張ってくれている君に色々と役に立つ便利な魔導具を用意した。使い方は別紙にまとめさせているから確認して有効活用してくれたまえ。


内容は以上だった。この勅命を受けてロイドは毎日ギルドに顔を出しガッデムが護衛依頼を出しているか確認したり、どうやってローガを護衛依頼にさそうか頭を悩ませたりすることとなった。

回想から戻ってきたロイドはローガが護衛依頼を受けたのを確認すると何食わぬ顔で自身も護衛依頼を受ける。

(なんか知らんがローガのヤツ自分から護衛依頼を受けやがったな。せっかく色々と誘い文句を考えていたのに。でもまあ仕事が減ったと思って喜んどくか。)


こうしてロイドもまた、王都への旅に参加することとなった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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