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人狼村開拓記  作者: やまぐ
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事件の裏側

 その男はローガと大蛇の戦いの一部始終を木陰から観察していた。

(はぁ~~~面倒なことになったな……。なんでこんな面倒な事態になるかね~まったく。)

 男は深いため息を心の中でつきながらことの経緯についてを回想する。




 男の名はロイド。ガハルード帝国の諜報員であった。

 

 ガハルード帝国

 世界最大の国土と軍事力を誇る大国であり全世界の統一を帝国が誕生したときからの目標として掲げている軍事大国である。その目標のために常に他国に対し侵略する機会を窺っており男はその一環としてこの町アナンダに送り込まれていた。


 彼の仕事は普段は冒険者として生活しながら担当エリア内の情勢を監視し情報を集めその情報を本国に流すことだった。


 そんな彼の下に帝国上層部の勅命の指令が下ったのは一月ほど前だった。

 内容はとある遺跡から発掘された神話の時代の遺物の回収だった。本来なら帝国本土の研究施設で詳しい調査を行う予定であったが輸送前に何者かによって持ち出され行方がわからなくなってしまった。それが一ヶ月ほど前にアナンダの周辺に持ち込まれたとの情報を掴んだらしくおはちが回ってきたという経緯であった。


 もちろん拒否権なんてものはなくしかたなしに調査を開始する。

 当初は指令書に記載されていた場所に奇襲をかけ遺物を回収するだけの任務であったがいざ現場に行ってみるとすでにそこから遺物は持ち出された後であった。


 そこからは苦労の連続であった。

 そもそも回収しなければならない遺物の情報が上層部の秘密主義のおかげで説明文もなくスケッチ図が一枚指令書に同封されているだけであった。当然のように調査は難航し本国にもっと詳しい遺物についての情報を要求するが返答はなかった。

 独自の調査を続けどうやら遺物を盗んだ者達は何かの実験のために遺物を盗んだらしいことが見えてきた。

 そして、ようやく遺物の足取りを掴んだ頃にはすでに遺物は実験によって使用された後であった。

 その結果が今回の大蛇である。締め上げた研究員によると遺物は神話の時代の魔物の体の一部であり、その細胞をのそ辺にいる小型魔物のグリーンバイパーに移植したところ急激に変化しあの大蛇が生まれたようだ。

 予想以上に強力な魔物となったグリーンバイパーは研究施設を破壊し逃亡。

 本国に指示を仰ぐとともに事態収拾のための時間稼ぎとしてゴロツキ上がりの冒険者達に金を握らせ調査の攪乱工作をすることにした。

 ゴロツキ共に調査依頼を受けさせ変異したグリーンバイパーの発見を遅らせる計画だった。


 しかし、ここで大きな誤算が生じた。ローガの存在だ。

 彼の介入により調査は攪乱工作を行う暇もなく驚くほどスムーズに進行してしまった。念のために雇ったゴロツキ共に見つけた場合は同行者達を始末し自分たちも魔物から逃げていた事にして事態の露見を少しでも遅らせるように指示をしていたが、ゴロツキ共はそれすらも満足にこなせなかったようだ。

 結果、調査依頼が出されて僅か二日後に討伐依頼が出されることとなった。

 想像以上に役に立たなかったゴロツキ共は森から逃げ出してきたところですでに始末している。(ロイドがチェイス達と同じ依頼を受けていながら一人別行動したのはこのためだった。)


 不幸中の幸いで現在アナンダには高位の冒険者たちがほとんど居なかったため討伐に出た冒険者達は帰り討ちになるだろうからまだ事態収拾にための時間はあると高を括っていたが、蓋を開けてみればローガが一人で倒してしまう事態となっていた。


 ロイドは生産性のない現実逃避をやめ今後の事を考える。

(どうするかな~。毒で万全に動くことができない冒険者達だけならサクッと殺し大蛇の死体を処分する事も可能だろうが、正直あの大蛇を単独で撃破しまだ余裕がありそうなあの狼男君バケモノを相手にしてそれができるかは怪しいところだ。特に大蛇に巻き付かれた後急激にパワーアップしたあの力……おそらく何かしらの種族特性とみて間違えないだろうが、あの力は不確定要素として強すぎる。大蛇に止めを刺した最後の一撃に至っては俺でも目で追うのがやっとのスピードだった。幸い俺がここに居る事は本国から貸与されたこの気配を消す効果があるペンダントのおかげで気づかれないはずだから、ここはひとまずアイツらがこの場を離れるのを待って大蛇の死体を処分するべきか。)


 ロイドが頭を考えをまとめていると不意にまだ仲間内でギャーギャー言い合っていたはずのローガの声が響いた。


「ところでさっきからそこでこっちを覗いてるそこのヤツ。いい加減に出て来て自己紹介でもしたらどうだ?」





 ローガは先程からずっと困惑していた。大蛇を倒した後仲間の冒険者達が駆け寄ってきて色々と質問攻めにあっていたからだ。ローガとしてはちゃんとまともに受け答えしていたつもりだったが、なぜかローガが質問に答える度にツッコミとボルテージが激しくなっていく気がする。

 いい加減質問攻めにされるのにもうんざりし始めたのでローガは無理やり話題を変えることにした。


「ところでさっきからそこでこっちを覗いてるそこのヤツ。いい加減に出て来て自己紹介でもしたらどうだ?」

 大蛇と戦っている途中(ローガ風に言うとブワァっとなったあたり)からその違和感に気づいていたのでカマをかけてみたのだ。

 チェイス達も突然ローガが何の変哲もない木の方を向いて突然しゃべり始めたので困惑し口を噤む。


 程なくして、

「わかったわかった。今出ていくからそんなに威嚇しなさんなって。」

 そう言いながらロイドは木陰からゆっくりと姿を現す。

「あんたは……ロイドさんじゃないか。」

 何度か一緒に仕事をしたことがあるチェイスが親しげに声をかける。

「おう、応援に駆け付けたんだがもう終わっちまった後のようだな。」

「まったくだぜ、いったいどこで油を売ってたんだ?」

「すまんな。ちょいと別件の依頼が立て込んでて出遅れちまった。それよりお前、ローガっていったか。よく俺があそこにいると気づいたな。」

 帝国の諜報員としては本国から貸与されたペンダントをしておきながら居場所を気取られた事を看過は出来なかった。なぜわかったのかを聞き出しておかなけれはならない。

「あんたなんか変なもん持ってるだろ。今もだがあんたの周りだけ気配が何もしないんだ。森の中で何の気配もしないなんてありえないからな。誰かが何かをしなければそんなことにはならないだろうからカマをかけてみたんだ。」

「なるほどな。確かに俺は先日あるルートから気配を消せる魔道具を入手し装備している。しかしそうか、気配がしないから逆に怪しまれたということか。」

 ローガ達が話し込んでいるとベルルカが口をはさむ。

「なんにせよ依頼は果たしたんだ。ならばここで時間を無駄に使うよりさっさと毒の原液を採取し撤収すべきだ。早くしないとグレン達は手遅れになるぞ。」

「そうだな。遅れて来た詫びとして大蛇の死体は調査隊がくるまで俺が見張っておくからお前たちは一度町へ帰還したらどうだ。」

 ベルルカの言葉にロイドはこれ幸いと乗っかることにした。

「見張りという事なら一人に任せるわけにはいかないから私も残ろう。」

 シアンが口をはさんでくるがロイドとしてもここで引き下がるわけにはいかない。

「まあまあ、今回俺は何も活躍してないからな。ここは俺に花を持たせると思って任せてくれよ。それにお前たちは毒と疲れで本調子じゃないだろ。」

「しかし、調査隊が来るの早くても明日、ヘタをすればそれ以上になる。私はケガもしてないし毒さえ抜ければ問題なく……。」

 そこでその先を遮るようにロイドは口をはさむ。

「なんだい?お嬢さんはそんなに俺と一緒に見張りをして一夜を過ごしたいのか?いやぁまいったな。これは久しぶりに本気を出さなければならないか。」

「っつ!なんでそう話が飛躍する。もういい、一人で見張りでも何でもしていろ!」

 シアンが真っ赤になりながらそっぽを向く。

 ロイドは諜報員だけあって会話の誘導がうまい。今回もシアンに若干のツンデレ気質があると瞬時に見抜きツンの部分をうまく刺激しまんまと一人になることに成功した。

 こうしてロイドは一人アナンダの調査員が来るまで大蛇の死体を見張りローガ達はアナンダへ帰還することとなった。




 ローガ達を見送ったロイドは大蛇の死体を見ながらつぶやく。

「一人になったのはいいが、この巨体をどうやって処分したらいんだ?」


 帝国諜報員ロイドの苦労はもう少しだけ続きそうだった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


小説を書き始めて一ヶ月ほど経ちましたが最近ようやく段落の下げとルビのつけ方を理解しました。


これより前の話も読みやすいようにおいおい調整していきます。誤字とか教えていただければ助かります。


今回でチラッとさ出て来たガハルード帝国ですがネタバレの恐れがあるのでまだ補足説明はしません。


次回も読んでいただけたら幸いです。

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