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第9話 少年と首


僕はじっと見ていた。汗でびちょびちょになりながら、ガタガタ震えながら。


白い服の人間たちが、一人ひとり、槍のようなものを掲げて、なにか呪文を唱え、


倒れているベル姉ちゃんの体と頭を突き刺した。


そして、体を持ち上げ、一人が白いものを取り出し、包帯だ。


ベル姉ちゃんの体をとても大きい包帯でぐるぐるにし始めた。


頭と体。別々にぐるぐるまきにされている。


そこで僕は思った。ベル姉ちゃんは・・・死んだの?死んでないの?


悪魔・・・は首を切られたら死ぬの?もしかして、まだ生きてる・・・かも?



お姉ちゃんが生きてるかも、と思った瞬間、考え方が切り替わった。


助けないと。僕が。


僕はまず呼吸を整える。ゆっくり息をする。


その間にも、あいつらはなにか儀式のようなことをやっている。


はー、はー、息を整える。整ってくれ。


ということは、えっと、つまり、それをやんなきゃいけないってことで、


ベル姉ちゃんはまだ動く可能性がある・・・っぽい?死んでたらわざわざそんなことしないし・・・


そういえば、ここに来る途中の廃墟に、見慣れない車が止まっていた。


あれだ。と思って、僕はゆっくりと草むらを抜ける。


荷物はここにおいて、一歩ずつ、音を立てないように。


重い。ずっとじっとしてたから、体が固まって、痛い。


気づくな。気づくな。気づくな。と100回思いながら、ゆっくり離れる。


ある程度離れて、見えなくなったら、僕は走った。必死で。


怖い。体に力が入らない。全然進まない。夢の中にいるようだ。


自分も、世界も、すべてがスローになっている。


殺される。見つかったら殺される。


一時間も走ったような気がした。ほんとは5分も経っていないだろうに。


やっと廃墟についた。ここはもともと畑で、崩れたビニールハウスや小屋がある。


そこに車が止めてあった。それはなんとも奇妙な車だった。


軽トラのように、荷台のある車なんだが、なんと言えばいいか、


普通の車に、荷台をくっつけて、背を高くしただけのようなアンバランスさ。


車に詳しくないけど、明らかにおかしいと思えるほどの奇妙さ。


きっとアイツらはここに戻ってくる。どうする?


と思っていると、足音が聞こえてきた。


僕は咄嗟に車の下に隠れた。


車の背が高いから、子供一人が入る隙間は十分にあった。


息を殺して、考える。


どうしよう。どうすればいいんだ。


地面に伏せる。冷たい。たくさんの足が見える。ドサッ、と音がする。


ベル姉ちゃんを荷台に乗せた音だ。


次々と車に乗る。


エンジンを掛ける音がする。


まずい。出発しちゃう。


僕は慌てて後ろから這い出て、バレないように荷台に潜り込む。


見えないように後部のガラスの下に体をくっつける。


ガタンガタンと荒れ道を走る振動が痛い。


どこに行くかわからない車で、真夜中。寒い。


ベル姉ちゃんの体と頭は、ぐるぐる巻きにされて、なにか、針のような、釘?


釘を打ち込まれている。


包帯をよく見ると、なにか文字がびっしりと書き込まれている。


東洋の漢字のような。なんの意味があるんだろうか。


床に這いつくばって頭を取りに行き、それを持ってまた窓際に隠れる。


この包帯を外そうとしたが、釘・・・クサビ?がめちゃくちゃ硬い。


っていうか痛い。


ひし形の鉄の金属で、奥まで入ってて取れない。


包帯を剥がして、ベル姉ちゃんの口に手を突っ込み、中からクサビを押し出す。


痛い。ナイフを手づかみしてるのと同じだ。でも我慢して、力いっぱい押し出す。


一本が少し動いた。僕の手からは血が滴り落ちている、僕の血だ。


それでも頑張ると、ようやく一本が上から掴めるほどに浮き上がった。


それを上から手で掴み引っこ抜く。このクサビはひし形で両刃で刃物の塊だ。


僕の手は血でじゅくじゅくになっていく。叫びたいほど痛い。


痛いけど、怖いけど、僕はベル姉ちゃんを助けるんだ。そう思うとやるしかなかった。


刺さってるクサビはあと三本。


抜いたクサビを使って、ベル姉ちゃんの頭に刺さってるクサビを手術みたいにほじくり出す。


手術みたいに皮膚を切り裂いて行く。でも血は出ない。断面も肉じゃない。骨も無い。


半透明の、エメラルドのような、深い緑色の柔らかい宝石。それがベル姉ちゃんだった。


全部抜いたあと、ベル姉ちゃんの頭は切り傷でいっぱいだった。


「ベル姉ちゃん・・・ベル姉ちゃん・・・生きてる?」


僕は小さな声で呼びかける。


普通の人間なら絶対に死んでるけど、普通の人間じゃない。悪魔なんだ。


でも、なんの反応もない。


やっぱり無理だったのか。


僕の両手は血まみれで、ベル姉ちゃんの顔はその血で赤く汚れている。


僕はベル姉ちゃんの頭を抱きしめて声を殺して泣いた。



「ここはどこだ?暗くて何も見えんぞ。」


「・・・・・・・・」


「何を泣いている。」


「ベル姉ちゃん・・・!!」


血だらけの傷だらけのベル姉ちゃんが、喋った。


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