第6話 少年と食事
ベル姉ちゃんの持ってるゲームは、結構古いものが多い。
ファミコンから、スーパーファミコン、プレステ、プレステ2、64、
ゲームボーイ、ゲームボーイカラー、ワンダースワン、
「どうしてゲームが好きなの?」
ぼくはお姉ちゃんに率直に聞いた。
「暇つぶしにちょうどいいから。」
それはそうだけど、なんとも単純な・・・
「真面目に答えると、人間の技術の進歩、思想の、設計の、娯楽という意味のないものに対して、
これだけの技術造形をつぎ込む執念。人間の文化そのもの。それを島の中に居ても研究できるから。
人間の科学技術の進歩スピードは我々悪魔の想定をはるかに超えている。
もしかしたら、神が人間を産み出した理由はここにあるのかもしれないと思っている。」
「ほぇ・・・」
急に真面目な話になった。
その話をするときのベル姉ちゃんは、仕事をする大人の顔になっていた。
ぼくは、ベル姉ちゃんの大人の部分を見て、すこしドキドキした。
ベル姉ちゃんはゲームなら何でもやる。
RPG、シューティング、格ゲー、アクション、歴史もの、パズル、エロゲまであった。
好きなゲームは何?と聞いた。
帰ってきた答えは「暇つぶしになるゲーム。」だった。
適当な答えだ。
僕が見たところ、アクションものが好きなんだと思った。
ファミコンのヨッシーアイランドを全部100点にしていた。凄いけどちょっと引く。
僕もゲームはするけど、そこまでやりこんだりはしなかった。
1000年も暇だと人間はそこまでやりたくなるんだろうか。
そこまでやるほど暇なんだろうか。
たしかにゲームは楽しい。おもしろい。でも、毎日毎日ゲームしてご飯食べて寝るだけの生活。
そんな人生・・・大丈夫?とは思った。
僕が家に居た頃は、親に、ゲームばっかりしてはダメだ。とよく言われた。
うるさいな、と思っていた。いやだった。
でも、ここまでゲームしかしない生活をしてる大人を見ると、これはダメだ・・・と思わされた。
「ベル姉ちゃんは勉強とかしないの?」
思ったままのことを聞いてみた。
「なんで?」
不思議そうに聞き返された。
「だって・・・仕事とか・・・」
「島に閉じ込められてんだから仕事しようにも何にもできないじゃないか」
「島から出た時のことは?」
「そんなもん1000年もあるんだから考えてもしょうがないだろう」
「こ・・・向上心とか・・・」
「そのためにはこの島では何も出来ん。魔界にいかないと話にならん。」
「そっか・・・」
「退屈。それが私に与えられた刑罰だ。永遠に退屈。だからゲームをするしかないのさ。」
僕は、不用意に、ベル姉ちゃんの悲しい部分に手を入れてしまった。
ベル姉ちゃんは別に悲しい顔をしたりはしないけど、楽しそうではなかった。
「変なこと聞いてごめん。」
僕はあやまった。
「なんだ?気を使ってくれたのか?ふふ。」
ベル姉ちゃんは僕を抱きしめた。
僕も、ベル姉ちゃんの背中にてをまわして、ぎゅっと抱きしめた。
その日、晩御飯はベル姉ちゃんが作ってくれた。
理由は、退屈だから。料理でもしてみるか。だった。
作った料理はパスタ。ソースは缶詰の中身を温めただけ。
でも、それがぼくにはとてもうれしかった。
僕のために、ベル姉ちゃんが、料理を作ってくれた。それがすごくうれしかった。
ミートソーススパゲティを食べて、ぼくはわかった。
僕が欲しかったのはこれなんだ。
普通の家族。
それが欲しかった、ただそれだけなんだ。
普通に愛されて、愛して、傷つけて、傷つけられて、少しずつつながっていく。
普通の家族。
僕はスパゲティを食べながら泣いた。
ベル姉ちゃんは驚いていた。なぜ?と、
僕は、一人ぼっちだったぼくを迎え入れてくれて、
家族になってくれて、うれしくて涙が出た。と説明した。
それを聞いたベル姉ちゃんは、優しく微笑んで、ゆっくり食べろと言ってくれた。
悪魔なのに、優しい。ぼくはベル姉ちゃんのことが大好きになった。




