第4話 少年と夕日
夢を見た。何もない真っ白な部屋で、一人ぼっち。誰も無い。
ずーっと一人。叫んでも走っても、何も起こらない。
目を覚ますと、そこはベル姉ちゃんの家のベッドだった。
そう。ぼくはベル姉ちゃんの家に居るんだ。
ほっとすると同時に、不安がこみあげてきた。
ここはぼくの家じゃない。
ぼくの家はもう僕の家じゃない。
帰る場所が無いんだ。
そう思うと、また涙が出てきた。
「どうした?」
ベル姉ちゃんが、起き上がり、ぼくを抱きしめた。
「ぼく、いつまでここに居られるの?」
ぼくは子供だけど、いつまでも他人の子供を一人家に置くことはできない、ということはわかる。
「何を言う。お前は私の家族になったんだ。これからお前はこの家で暮らすんだ。お前が出ていこうと思うその時までな。」
ぼくを抱きしめるベル姉ちゃんから、体温が伝わってくる。あたたかい。
そう言えば、お母さんに抱きしめられたことって、あんまりなかったな。と思った。
「本当にいいの?迷惑じゃない?お金は?」
「せいぜい100年しかいないだろう?私にとって一瞬の出来事だ。コップの中の氷が解けるほどの時間でしかないのさ。」
そう、ベル姉ちゃんは自分は悪魔と言っている。どこまで本当かさっぱりわからない。
「今日は何して遊ぶ?」
ベル姉ちゃんはぼくを抱きしめたまま優しく聞いてくる。
「とりあえず・・・食べ物とか・・・歯ブラシとか・・・服とか・・・」
「む・・・、そうだな。」
ベル姉ちゃんはベッドから出て、ぼくを呼び寄せる。ついてこいと。
廊下をあるいて、本棚のおいてある部屋に入った。
そこには大きな机が一つあり、お姉ちゃんが引き出しを開けると、無造作に、大量のお札が入っていた。
その中から適当に10枚ほどつかみ、ぼくに渡した。
「それで自分で買ってこい。私は面倒だからいかない。」
あっ・・・怪しい・・・。
店はまだ開いてない。朝ごはんはクッキーとコーラ。それを食べながら、
お姉ちゃんと一緒にゲームをする。
11時になったので、買い物に行くことにした。
嫌がるベル姉ちゃんを説得して一緒についてきてもらった。
子供が一人でこんな大金持って買い物するなんて怪しすぎるからだ。
バス停まで30分ほど海を見ながら手をつないで歩き、バスで街に行く。
この島は大きな街が二つ、小さな町が三つ。あとは牧草地や火山で人は住んでいない。
ぼくの住んでいた家がある街には行きたくなかったから、わざと遠回りしてもう一つの街で買い物をした。
服、日用品、食べ物。調理道具。帰るころには二人の両腕一杯になって大変だった。
ベル姉ちゃんは常識というモノが欠落してて、生活するのに何が必要で何が必要じゃないか全くわかってない様子だった。
ベル姉ちゃんの方がこどもで、ぼくの方が親みたいだった。
家に帰る途中、バスから降りて歩くとき、お姉ちゃんに聞いた。
「ベル姉ちゃんの家、すごい綺麗に掃除されてたけど、あれはお姉ちゃんがやってるの?」
「そうだ。私がやってる。魔法で綺麗にしてるんだ。」
まだ信じれない。魔法て。でも、ベル姉ちゃんの性格であんなきれいに掃除するのか?という
疑問はある。他に家政婦?お金で人を雇って?うーん。わからない。
「じゃあさ、魔法でこの重い荷物を運ぶのは出来ないの?」
「できるさ。でもな。それだと退屈だろう。この面倒なのがいいんじゃないか。」
うーん。家の掃除は魔法でやるのに。なんだかよくわからない。
ゲーム好きなのとも関係してるのかな?
ぼくと姉ちゃんは休憩のために荷物を置いて、海岸に座って夕陽を見る。
昨日と同じ夕陽だけど、昨日より、明るく感じる。
同じ場所で、同じ夕陽を見てるのに。どうしてだろう。二人だから?帰る家があるから?
ぼくはそのことを考えながら、ベル姉ちゃんの家に、帰った。




