第13話 10年目
地獄の最下層、コキュートス。
その中でも最深部の一歩手前、氷結地獄ジュデッカにある監獄。
針で埋め尽くされたり炎で焼かれたり血の池地獄に落とされるわけじゃない。
そこには何もない。真っ白な部屋。
少し寒く、とても広く、ぼんやり明るい。それだけだ。
虚無の部屋と呼ばれる部屋で、これからベルフェゴールは1000年を過ごす。
これのどこが刑罰なのか?と思われるかもしれない。
しかし、悪魔にとってはこれが最もつらい。
何もない苦痛というものは人間でも耐えられるものではない。
退屈。退屈という苦痛。
ベルフェゴールは島では一人だったが、子供を捕まえて一緒にゲームをしていたように、
完全に一人ではない。買い物に行ったり、海を見たり、ある程度の刺激はあった。
それすらもない。完全な虚無。
そこに容れられたベルフェゴールは、壁際に座り、ただ、白い壁を見つめるしかなかった。
そして一ヶ月が過ぎた。
何もない。ただ時間がすぎるのを待つだけだ。
・・・
一年が過ぎた。
べつに日数を数えたりもしない。
何かを考えたり悩んだりもしない。
たまに、立ち上がり、部屋の中を歩き、また座るだけ。
その牢獄には窓も扉もない。証明もない。
上下左右、ただ白い壁があるだけだ。
・・・・・・・・
2年、3年、時間が過ぎていくが、
ベルフェゴールの感覚ではすでに10年以上経っていると思っている。
時計もない。カレンダーもない。確認する方法もない。
何もせず座っている。
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・・・
そして10年が過ぎた。
もうピクリとも動かない。石のように、木のように、ただじっとしている。
あと990年。あまりにも苦しい。
棺桶に入れられ、地面に埋められ、その中で生き続けてるような、地獄。
たしかにここは地獄だ。
・・・
・・・
・・・
ベルフェゴールがそう思ったとき、ガチャン。と音がした。
10年ぶりの、自分以外の音。
驚いた。これにはベルフェゴールも心底驚いた。
一体なんだ?と7年ぶりに顔を上げると、そこには黒いモノ、小さな箱、小さなモノが散乱していた。
立ち上がり、歩いて近づく。
そこには、テレビがあった。そしてファミコン、カセット、コントローラー。
なぜ?どうやって?とベルフェゴールは思った。
しかし、そのテレビを見て、理解した。
そのテレビは、ベルフェゴールの島の家に置いてあったものだ。
他のものも同じだ。すべてベルフェゴールのものだ。
誰が、とは思わなかった。
これをやれるのは一人だけだからだ。
ベルフェゴールは10年ぶりに心を動かした。
落ちているテレビを広い立て直し、ファミコンをつなぎ、電源を入れ、
星のカービィを始めた。




