第18話 大・大逆転! 第7戦オートポリス・決勝
どうも!ラドロです!いよいよチャンピオン争いの最終決戦の切符が確定します…!
それでは、どうぞ!
ポイントランキング上位勢が上位から下位にまで散らばって始まりを迎えたチャンピオン争いの天王山。天候や路面状況は予選とさほど変わらず、予選で前にでたものがより有利と考えられている。そして類を見ないほど緊張感の高いフォーメーションラップを終えてスタートの時を迎えた。
『さあ今シグナルグリーン!!各車一斉に加速をはじめました。まずは無双がポールショットを決めた!それにタキオンNSXも続く!
そして後方の動きも見ものだぞ?!ファースターがストレートでひときわインによって…ブレーキング勝負!一気に2台抜き!これで13番手だ!』
チャンピオンの権利も決まりはじめるだけに皆、血気盛んだ。
『皆が皆、血気盛ん。それは当然アクシデントの可能性が高まっていることを意味します。そして隊列はもう、第2ヘアピンに差し掛かろうかというところです。これはよりなにかが起こる可能性が高くなることを示唆します!
さあどうだ!団子のまま綺麗に通k…ああっと!2台がコースオフした!これは?…あKONとNTTだ!ランキング1-2の2台がここで痛いコースオフ!』
ブレーキング勝負を仕掛けた足立だったが抜き去るスペースを見極めきれず追突。2台でコースオフしてしまった。
「マシンは大丈夫?足立」
「走ってる感じは問題ないです。…KONにごめんって伝えてもらえたら助かる」
「わかった。…外から見てもマシンは問題ないのでそのまま走ってください」
一方KONは
「なんだよあいつ!思いっきり当ててきやがった!」
「大祐落ち着いて。一応向こうからごめんって来てたので伝えておきます。またマシンは外から見る限りは大丈夫なので走り続けて」
「こっち(中視点)も問題ないけど…ゴメンじゃねえんだよ!」
結局これでKONは14番手にNTTは最下位にまで落ちた。
全21周の九州決戦も、早くも2周目に突入した。すると早くもトップの無双が悲鳴を上げ始めた。
「ハンディの関係もあって後半で差を作れてるけどタイヤが全然グリップしないから前半のヘアピンとかで一気に詰められてるよ」
「了解。もともとミニマムと1周でピットインの予定だったのでそれまでもたせてください。3位以降は差が大きいのでもう少し粘ってください」
しかし相手はランキング上位に食い込む格上。ペースが落ちたことに気づいたタキオンは一時的なプッシュで一気にその差を縮めた。そして
「やばい。もう来た」
そしてその言葉通り3回目の第2ヘアピンに差し掛かりブレーキを踏んだタイミングで漆黒のNSXは無双のサイドミラーから左ドアの左へと姿を移し最終的には前に出た。これで順位が入れ替わった。
「だめだ。全然ブレーキのタイミングが違う」
「ついてって。まだ2番手だよ」
予選でフロントロウに並んでいながらなぜ決勝では無双を上回るほどのペースを刻めるのか。答えは予選のスローダウンにあった。
佐藤春樹がトップタイムをマークしたあのとき、こんな無線がとんでいたのだ。
「春樹。もういいよ。低速走行でタイヤにほぼ一切のダメージを与えず、ピックアップも極力ないままピットに帰ってきて」
こうすることでタイヤの体力を無双と比べ遥かに温存することに成功した。これが決勝での余裕につながったのだ。トップになった春樹の兄、大輝はタイヤをいたわりながらも攻めた走りを続ける。
レース5周目。トップから大きく引き離されていたNTTに運営からの追い打ちがかかる。
『さて、ペナルティの情報が入ってきました。カーナンバー71番のNTTがKONへの接触でドライブスルーペナルティです!ランキング1位の彼らにとってこれは大きな痛手です!』
これでKONの姿すら捉えられなくなってしまった。再び空気が重くなるチームだった。
レース7周。なんとか2位を走っていた無双NSXが1ドライバーが走る最低周回数を満たすやいなや真っ先にピットインした。今回はオートポリスがタイヤの摩耗が激しいコースということもあり、タイヤは四輪交換が義務付けられている。ドライバー交代、タイヤ交換、給油を済ませ、35秒6でピットアウト。
「百合、頼んだよ」
「了解。頑張るわ」
ちなみにタキオンを筆頭とした多くの上位陣はその2周後にピットインした。ここまではまだ想定内。巻き返しを図る無双だった。
レース10周。俺ーー厚志ーーはオレンジ色のスープラのポジションを9番手まで押し上げていた。そして今、眼前にはスタート時より1つポジションを下げたファースタースープラの姿があった。こちらはーーおそらく相手もーーピットを終えている。もともと難しいピットでの逆転ができない以上ここで仕留めたい。うねうねと曲がった上り坂を通過しているとあることに気づく。
(…差が縮んでいる…最終コーナー前にはテールトゥノーズになる?)
そうとなればすることは決まった。最終コーナー手前の85Rで抜く。
(ここで少しアウトに…!!)
突然タイヤのグリップが著しく下がり、曲がらない。あっという間にコースアウトし制御できない。
(くそ...!ピックアップか…!)
気づいてももう遅い。スピンしつつもなんとかメインストレートに横切る形でマシンを戻すが、最終コーナーにはファースターが。
(まずい!)
ガツン!!
右リアに衝撃がかかり、マシンが弾かれる。接触によって反転したマシンは反対側のコンクリート壁に左側面を打ち付けてようやく止まった。みるとファースターは左フロントが大きく歪んでおりマシンの後方が中途半端にメインストレートにのっている。同士討ちだ。
「厚志、大丈夫!?」
「大丈夫。ごめん」
落胆していると目を疑う光景が飛び込んできた。
「NTTがピットイン?」
直後ミニパネルが変色し、FCYが出た。
「最終コーナーでスープラが同士討ち。FCYです」
俺ーー佐藤春樹ーーは後半の上り坂区間でその知らせを聞いた。了解、と返そうとしたその時。
「…あ、まずいぞこれ、NTTにピット入られた」
「!?…2回目じゃないの?」
「いや、1回目だ」
(まずい…まずい)
つまりこういうことだ。先にこちらがピットインしNTTに実質周回遅れにされる→本来ならNTTのピット時にこちらが抜き返すが、FCYが入り低速走行→こちらが抜く前に向こうはピットアウトする→アウトラップだがFCYなので抜けない→トップを奪われるというのだ。もちろんNTTは最下位+ペナによる遅延でもともとの差も大きくなく、トップの座はなんとか守れる可能性が大きい。しかし不穏な何かを感じずにはいられない。そして運命のメインストレート。
「あぁぁ…」
純白のLC500の姿が1コーナー手前にあった。トップが入れ替わったのだ。マシンのスピードとともに気分を落とす俺だった。
FCYは周回数12周までサーキットにアナウンスされた。そして
『さあレースリスタートです!ピットで14台を一瞬にして後ろに追いやったNTTはバックストレートからリスタート!
そしてメインストレートはどうだ!KONがインを取っている!インで1コーナーに入って…1台をオーバーテイク!さらにもう1台とサイドバイサイド!立ち上がりはどうだ!なんとか並んでいるが…あぁ、やはり燃リスが大きいか、ジリジリと後退していく!さあそして3コーナーどうだ!3コーナーでは…KONがイン、そして前に出たぁ!』
残り8周。トップ奪還のため、タキオンはNTTを必死に追いかける。ブレーキングとコーナーでは大きく差を詰めるもストレートではマシンの特性の関係で向こうが有利なため結局のところ差の縮みかたが小さい。間に合うかはギリギリのところだ。加えてピットのタイミングによってタイヤの余力も違う。さらには
「春樹、クイーンが来てます。今6秒後ろだけど1周前は7秒差あったからね」
「え、もう!?」
なんと無双が走っていると思っていた3番手には緋色のZの姿があったのだ。しかもこの3台の中ではクイーンが最もハンディが軽いのでラップタイムもわずかにではあるがクイーンが先行している。ここが正念場というわけだ。
「絶対守りきってやる…!」
そんな覚悟を胸にジェットコースターコーナーへとステアリングを切った。
一方後方でも激しく争っているマシンがいた。11番手のマザーと12番手のKONだ。
マザー自体のチャンピオンの可能性はとても薄いが、ここでKONを抑えることができればホンダ勢の積冠を大きく後押しできる。必死で私ーー凛ーーはブロックする。最終コーナーもかなりイン攻めして通り抜ける。当然立ち上がりが鈍いがハンディの差もあってポジションには響かない。そして長めのメインストレートを駆け抜け1コーナーへと向かう。
(ここでしのげるかしら…)
マザーは燃リスがないので立ち上がりで有利だが重りの重さだけでいえばこちらが圧倒的に重くブレーキングでは不利になっている。だからこそKON相手にここまで詰め寄られているのだ。そして辛くも1コーナーを通過したときあることに気づく。
(あれ…ウィダーとの距離が縮んでいる)
ハンディが軽かったにも関わらず予選ではタイヤの引き出しがうまく行かず下位に沈んでいた(私も人のことは言えないけど)ウィダー。もしタイヤの摩耗に苦しんでいるなら…
(むしろポジションを上げられる。)
KONを抑えつつもウィダーとの間合いをさらに詰める。
コーナー、ブレーキングスポットを過ぎるごとに銀色のテールはその姿を大きくする。
(これは…第2ヘアピンでいける)
そう確信した私は第1ヘアピンの立ち上がりから防御を捨て間合いを限界まで詰める。いくつかの高速コーナーを抜け例のヘアピンへ。レイトブレーキでサイドバイサイドに持ち込み並びかける。
(あとは立ち上がるだけ…)
しかしその見立ては甘かった。オーバースピードで突っ込んだマシンは曲がり切れず…
ガッ
軽くではあるが同胞ウィダーと接触してしまった。その横を横目で見てもわかるくらい落ち着いた動きをしたKONが通り過ぎていった。心の折れる音が聞こえた気がした。
『佳境を迎えた九州決戦も再びトップ争いが激しさを増し始めました!
ピットで逆転したNTTは現在タキオンとクイーンから攻め立てられています!果たしてその座を守りきり、チャンピオンに大きく近づくことはできるのか!それとも残り5周でタキオンとクイーンが待ったをかけるのか!』
空力パーツやマシン特性の関係でコーナーはほぼ互角。ストレートはLC500が有利だがスリップに入ったNSXとZがその差を広げさせない。ほんの一瞬のミスも許されない状況だ。3周の膠着を経て状況が動いた。場所はやはり第2ヘアピン。
『さあ100Rのあたりからタキオンが今にも並びかかってきそうな雰囲気だ!
マシンを横に振った!そして第2ヘアピン!NTTの後輪にタキオンの前輪が並んだ!立ち上がりは少し出遅れるが…何とか食らいついて…そしてクイーンがNTTのスリップについた!NTTの後輪にタキオンの前輪が、そしてタキオンの後輪にはクイーンの前輪が並んだ状態だ!バックストレートを団子で駆け抜ける!どうだ!ジェットコースターコーナーに入って…クイーンがタキオンの前に出た!』
クイーンはトップNTTに狙いを変えた。
(後ろはもうそこまで気にしなくていい。大事なのは前をとらえられるか)
私ーー由衣ーーは火照った体とは対照的に冷静な思考で前を睨む。タキオンを抜いたはいいが後半のコーナーでは抜きづらいうえ無理に抜こうとラインを外せばピックアップを拾ってアミューズメントの二の舞を踏んでしまう。よってチャンスをうかがって進んで今に至るのだがもう残り1周のメインストレートにまで来てしまった。改めて気合を入れ直す。もう残りの距離もタイヤのライフもわずか。賭けに出ることにする。
「1コーナーで…レイトブレーキ…!」
あまりの集中に無意識に思考が口からこぼれる。マシンを少しづつ外側に寄せて…
「…ここっ!」
一気にインに寄せ、レイトブレーキで並びかけ追い抜く。そこまではよかったが
(行き過ぎた!)
あわててマシンをコースオフするギリギリのところで正常な位置に戻す。NTTに抜き返されたものの2位は死守することができた。めげずに攻め続ける。しかし
「…!」
3コーナーでここをチャンスとばかりにタキオンが再び攻めてきた。すぐに切り替え4コーナーではNSXの相手に徹する。そうこうするうちにNTTの後ろ姿は小さくなってゆく。望みを託したファイナルラップだったが、結局タキオンの相手に精一杯になりかなわなかった。
そしてレースは
『崖っぷちの茂木で勝利を挙げたNTTが勢いそのままにチャンピオン争いの天王山、オートポリスでも勝利を飾ろうとしています。後ろからランキング上位のZとNSXが来ていますが彼らとの差は2.5秒!今最終コーナーを通っているLC500には十分なマージンでしょう!NTTLC500、トップチェッカー!』
奇跡のテールトゥ・ウィンを飾ったNTTは76ポイントという他のどのチームをも寄せ付けない圧倒的な差を築いた。一方のKONはというと10番手フィニッシュ。なんとか首の皮一枚繋がったがそれも数値上の話。次戦ではノーハンディであることを考えると逆転はかなり絶望的だろう。GT-R使いたちは最後のハンディ戦の勝者の姿を目に焼き付けた。ちなみにポイントランキング2位にはタキオンが63ポイント、3位に59ポイントでクイーンが食い込んだ。KONはこの下の4位なのでチャンピオン争いはこの4台に絞られた。
(続く)
今回も読んでいただきありがとうございました。もし本作品を高く評価してくださるなら次回以降も読んでいただけたらと思います。それでは!




