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平行世界ファンタジア  作者: 秦 多喜
4/6

収穫祭

ご訪問ありがとうございます。最後までお付き合いいただけると幸いです。

 今日は収穫祭。その名の通り作物を収穫できたことをお祝いする日で、2日間にわたって開催される。収穫されたものを持ち寄って売ったり、屋台なんかも出るみたい。ほかの領地の特産品や、輸入されてきた珍しいものを売りに来る行商人もいるらしく、期待度はかなり高い。私も地元のお祭りは大好きで、実家に住んでる時はいつも法被を着て山車の後ろを練り歩く列に参加してたっけ。屋台のりんご飴は毎回買ってたのよ。地元の同級生と久しぶりに会える日でもあったのですごく楽しかったな。就職して上京してからは一度も行けなかったけど。                     


 収穫祭ということもあり、いつもより宿に泊まっているお客さんも多くて食堂も忙しい。だからいつもより早くから仕込みをしていて、もちろん私も早めに店に来た。あと1時間もしたら朝食を提供する時間なので、焼けたパンをかごに詰めたり、サラダをボウルに分けたりする。そうこうしているうちに宿泊客が徐々に食堂へ集まり始めた。


「おはようございます。よく眠れましたか?」と、メレンさんがお客さんに声をかけながら、手際よく朝食を配膳する。私もソーセージと卵をのせたお皿を各テーブルに配った。

 1時間ほどで食堂からお客さんが居なくなったので、洗い物や片付けをし、軽めの朝食を食べてから3人で街へ行くことになった。


 町の中は人でごった返してまっすぐ歩けないほど。仕入れがあるらしいので、メレンさん達とは広場で別れた。夕食の準備までに宿屋に戻ればいいので、目につくままお祭りの露店やお店を見て回った。

 野菜のワゴンや加工肉、乳製品、干した魚などのワゴンが立ち並び、食べ物の屋台も多くあってあちこちからいい匂いがしていた。



 広場の中央付近にガラス加工品を売っている店があり、興味を惹かれて店に入ると、棚にはグリーンや薄い茶色のどちらかというと厚めのグラスや、様々な形の装飾品、柄の刻まれているキャンドルボウルなんかが沢山あった。

 私好みの薄青いガラスにバラを刻んでいるキャンドルボウルがあったので1つ買った。もともとキャンドルが好きで、アロマキャンドルだけじゃなくて、柄や形が可愛いキャンドルやキャンドルスタンドなんかも集めてた。しまいには置く場所が無くなって、段ボールに入れっぱなしの物もあったけどね。


 お祭りは街の中央広場で開催されており、噴水の前にそれほど大きくはないステージが組まれている。

 すれ違う人の会話で、あと数時間で領主のイーロン様が来られて挨拶をされるということだった。     


 ドンッ!「あっ!」

「すまない、大丈夫か?」

 よそ見しながら歩いていたせいで、前から来た男の人に気が付かず、ぶつかった拍子に尻もちをついてしまった。

「いたたた・・・」尻もちをついただけなので大したことないんだけど、ぶつかった男性が立ち上がらせてくれた。


「すいません。ありがとうございます。」


 ・・・あぁ!さっき買ったキャンドルボウル割れてるー!!手提げの中をみてがっくりした私を見て、男性はお詫びをさせてほしいと言ったけど、よそ見してたのはこっちも同じなのでと丁重にお断りしたのに、それでは気がすまないからって半ば強引にガラス細工店に連れていかれ、同じものをと探したけど、1つ1つ手作りのために全く同じものがなかったし、ちょっといいなーと思うものは、先日もらったお給料では買えない金額だったので、「同じものがなさそうなので、お気遣いなく」といったのに、その男性は店主と話をして購入したものを渡してくれた。割れてしまった私のキャンドルボウルはお店で処分してもらえるそうだ。



「ほんとにすなまかった。同じものがないというのでこれで許してもらえないだろうか」


 手渡されたものは、金属製のキャンドルスタンドで、平らな部分に小さめのキャンドルボウルが置けて、持ち手の部分は猫が立ち上がってる姿になっているもの。

 うわー、これはかなりかわいい。でもきっと高いものなんだろうなぁ。そう思うと受け取るのもためらわれて、どうしようと考え込んでると、嫌がってると思われたのか、同じものじゃないから怒ってると思われたのか、ほかに気に入ったものがあれば何でも言ってほしいと言ってきた。

 うーん・・・これ以上黙ってると相手の方も困るだろうし。丁重にお礼を言って受け取ることにした。 


「なんか、申し訳ないです。私がよそ見をしてたのに・・・」

「いや、私こそ不注意でぶつかってしまって貴女のガラスも割ってしまったのだから」

「ありがとうございます。ほんとにすみませんでした。」


 何度も謝る私がおかしかったようで、くすっと笑われてしまった。日本人あるあるだよね。何回も頭下げちゃうのって。

 お店を出たところで、よければ一緒に昼食でもどうかと誘われた。知らない人についていくのもちょっと躊躇われるけど、お祭りで沢山の人がいるから大丈夫だろう。というか、正直なところ、屋台から漂ってくる美味しそうなにおいのせいで私のお腹が催促してたので、これも何かの縁。なんて心の中で言い訳しながら一緒に昼食を食べに行くことにした。

 各屋台の前には丸テーブルやベンチが置かれていて、座って食べられるようになっていた。あ、この薄いクレープの様な生地にお肉とチーズを挟んだやつ食べたい。と思ったけど、彼は屋台の前を通り過ぎてどんどん歩いていく。そして、広場を横切り反対側にあるお店に案内された。

 高級って感じの店内を見て、こっ・・・これは高そうじゃない?屋台にって言ったほうがいいやつだ。セレブな奥様達が行くランチくらいの金額だったら払えないからね・・・



「あの・・・ここだとお財布がちょっと・・・」



 消え入りそうな声で下を向いてつぶやく。

 あぁ恥ずかしい。見ず知らずの人にお金ないからって言わなくちゃいけないとか恥ずかしすぎる。     

 顔を真っ赤にして目が泳いでしまうのは仕方がないよね。


「気にしなくていい。座わって。」


 窓側のテーブル席に促され、椅子を引いてくれたので断り切れなくてそのままちょこんと座る。      


「ここは領地内で一番うまい店だよ。」

「あの・・・」

「あぁ、名乗るのが遅れたね。私はライジェル。ライジェル・セルヒスと言う。貴女の名前をお伺いしても?」

「えっと、堂上未来といいいます。周りの人からはミライと呼ばれています。」



「よろしくミライ」というとおすすめ料理を二人分オーダーしてくれた。食事が出てくるまで色々な話をした。ライジェルさんは短かめの金髪で、濃いブルーの瞳をしており、なかなかにいい男なのだ。

 そんなライジェルさんは、主に工芸品を外国から輸入したり、外国にこの国の名産品を輸出するいわゆる貿易商会を営んでいるいうことで、さっきのガラス工芸店のご主人とも付き合いがあるんだとか。        

 私は、落っこちてきたっていうこと言わず、街道沿いにある宿屋で働いていることだけ軽く話をした。

 明日の収穫祭二日目は夜遅くまで広場は盛り上がるんだとか。ダンスだったり、大道芸だったりその他の出し物も多いんだって話してくれた。



「お待たせしました。牛肉のワイン煮込みと香草チーズのパンになります。」とテーブルに置かれた料理があまりにも美味しそうなので、思わずお腹が鳴ってしまったのはご愛嬌ですね。

 彼がどうぞ、と言って私が食事に手を付けるのを待ってから食べ始めた。なんか紳士だわぁ。こんな扱いされたことないよ。ちょっとお嬢様気分に浸りながら食べた。

 流石領地一番というだけあって、肉はやわらかく口の中でほどけた。香草チーズのパンはチーズとバジルを練り込んだパンで、野菜と茹でた卵が挟んであった。これもまた美味しくて、ついつい、「んー美味しいー」なんて言いながら食べていたもんだから、ライジェルさんに声を出して笑われてしまった。(ちょっとお行儀わるかったわよね・・・)


 すっかり初対面の人にごちそうになってしまったけど、いつか会うことがあったらお返しをしなくちゃね。この後ライジェルさんは商談があるとかで、お店を出たところでお礼をいって別れた。

 

 広場中央に人だかりができているのでそっちに目をやると、ちょうど広場のステージで領主様がスピーチをはじめるところだった。    

 領主様はシルバーグレーの髪で刻まれた皺も優しそうな雰囲気にマッチしていた。領地内が潤っているのは皆のお陰だといい、それを聞いた人々は盛大な拍手を送っていた。この領主様はみんなから好かれてるんだろうな。この人が司祭様の言っていた魔法省に勤めてる方なのよね。とても優しそうな人。お話をできる日が楽しみだ。


 そろそろ宿屋に戻って手伝いをしなくちゃね。そのまま街道を歩いて宿屋へ戻り夕食のための仕込みを手伝う。

 夜の食堂は宿泊客の他に食事だけに来た人も多く、初めて見るくらいの盛況ぶりだった。店じまいの頃にはもう腕や足ががくがくするほど疲れてた。


 翌朝、宿屋に馬車が来て、「領主様よりドウジョウ・ミライ様をお迎えに上がるよう申し付かってまいりました」と言われたそうで、メレンさんが慌てて家まで呼びに来てくれた。



 

最後までお付き合いいただき、有難うございました。

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