世界の成り立ち
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ここに来てから2週間が経った。
「少しこっちにも慣れてきたようだし、街でもみてきたらどうだ?」
そういって、アルバンさんから2週間分のお給料だとお金を頂いた。
宿屋は街道に面しているが、お店が並んでいる通りからは少し離れており、街道を15分ほど歩くと街が見えてきた。店舗だけじゃなく通りには様々な露店も並んでいて賑やかだった。
イーロン伯爵領は畜産が主な産業らしく、加工された肉やチーズを売っているお店が多かった。野菜はキャベツや人参など馴染みの物だったが、たまに見たことが無い野菜も売っていて興味津々で見て回った。
歩きながらふと、休暇終わってるから無断欠勤で会社今頃クビだろうな・・・。なんて思ったら悲しくなってきた。夢落ちでした!ってならないかな、と毎晩寝るときに思いながら寝てたのに、やっぱりそうはならなかったのでもう考えるのをやめた。
かなり長い距離を歩いて段々お店も少なくなってきたところに教会があった。宿屋の奥さんの話では教会の司祭様が色々な事に詳しいから、一度話をしてみたらどうかと勧めてくれたこともあり、話を聞いてもらおうと立寄ることにした。
少し大きいドアを開けると、広い礼拝堂で、正面の壁は光が入るように何本も細い溝が彫ってあり、そこからうっすらと光が差し込んでいた。
光の筋を眺めながら、教会に行ったことなんて一度もないけどこんな感じだったのかな、結婚式とかこういうところでやると素敵だろうな。彼氏いないけど。なんて妄想と現実の狭間でぼんやりしてるところへ
「何か御用ですか?」
と声をかけられて振り返ると、白いローブを着て、背の高い優しそうな眼をした初老の男性が居た。
「あ、あの司祭様にお会いしたいのですがいらっしゃいますか?」
「突然すみません。話を聞いていただきたいことがありまして」
と緊張しながら言うと、こちらへどうぞと先導され、礼拝堂の左奥にある部屋に通された。
「どうぞこちらへお掛けください」
と、勧めてくれたので椅子に座ると、ローブを着たその男性はティーテーブルを挟んで正面の椅子に座った。
「私は司祭のクルムと言います。」
「初めまして。堂上未来といいます。あの・・・今日は聞いていただきたいことがあって来ました。」
何から話していいのか、信じてもらえるのか。もしかしたら頭がおかしいと思われちゃうんじゃないかと不安だったけど、アルバンさんに話したようにこれまでの事を話した。
静かに時々頷きながら私の話をじっと聞いてくれている司祭様。こんな突拍子もないような話をされても驚くことも否定もしないなんて聖職者の方は器が大きいんだなあ、と思うと緊張が取れてきて思ってたこと全部吐き出した。
アルバンさんがいう世界の穴から落ちてきたこと。足首の痛みが手の光と共に消えたこと、この二週間の間宿屋を手伝っている間に手を切ったりした傷が異常に早く治った事。
そう、この二週間の間に食堂の手伝い中に包丁で手を切ったり、薪を運ぶときにできた擦り傷なんかも数分後にはきれいさっぱり治ってしまっていたのよね。変な能力が備わってしまったみたいで気持ち悪かった。
「神がこの世界を作ったのは、星の未来を見たときに人類が大きすぎる火の種を手に入れて、制御できずに使った結果、星が滅びに向かうことがわかり、別の星に元の世界の一部を移したと言い伝えられています。その際、精神が未熟なまま技術だけが進歩してしまわないように人から知恵の一部を奪い、その代わりに一部の人に体内のマナを操作することができるようにしたといわれています。」
それってまさか、核で地球が滅びる未来を見た神様?が別の惑星に地球の一部を人と共に移植したってこと?技術だけが先走って、制御できなくなるくらいならこの世界では科学技術が発展しないように、ある種の人体操作をされたって言えるんじゃない?ハビタブルゾーンがあるとかネットニュースで見たことあるけど、そこに神と呼ばれるいわゆる地球外の人?知的生命体?がかかわったと。そこまで来るともう、なんていうか都市伝説のアレだよね・・・
司祭様の話では、百年に一度程度私のように世界の穴から落ちてくる者がいるらしい。時空の歪みに落っこちたとか?そういったことなのかな、と思うけど科学者じゃないのでそんな難しいことはわかるわけもなく。
「そのマナを自在に使えるというのは、いわゆる魔法でしょうか?」
「そうです。魔法については使える者と使えな者がおり、誰でもというわけではありません。親が使えると大抵その子供は使えるようですが、中には使えない子供もいますね。」
大体は遺伝するけど、しない子供もいるそうだ。この領地を治めるイーロン伯爵は魔法が使えるため王都の魔法省にいるらしい。司祭様は、私の足の話を聞いて私はマナ操作が出来るのではないかと言っていたが、魔法についての詳しいことは領主様に尋ねるのがよいのではないかとアドバイスをもらった。
領主様とは学生時代からの友人だそうで、話を通しておいてもらうことになった。収穫祭には休暇で領地へお戻りになるとのことなので、その時にでもということで話がまとまり、お礼を言って教会を後にした。
今日聞いた話の中で、ほかにも森の奥や山岳地帯には魔物がおり、騎士団や魔法師団で討伐に行くこともあるらしい。
剣と魔法の世界かあ・・・私にとっては非現実な世界だけど、この世界の成り立ちを聞くと地球と平行して存在する別の惑星なのだと思ってしまえばもう、怖いという気持ちは無くなった。
来た道を戻りながら周りをよく見ると、花が沢山自生してるのに気が付いた。植物は地球とよく似ていてバラ種の花が沢山自生してるのを見ながら、アロマオイル作れるかも!と思ったりして、少しうれしくなって顔がにやけてしまった。抽出に必要な道具が売っている店がないか今度さがしてみようかな。
「ただいま戻りましたー」
宿屋に戻ると、アルバンさんと奥さんは夕食に来るお客さんのために料理の仕込みをしていた。アルバンさんから楽しんだかと聞かれたので、見て回った露店の感想や、司祭様に話をしに行ったことなどを話して、今日はこのまま手伝いを休んでいいって言われたので家にもどることにした。
今度はもっとほかの街や王都なんかにも行ってみたいな。この領地内はどちらかというと丘陵地帯で、ほかの領地には海もあり、とても暑い地域もあるんだって。
最近顔なじみになってきた食堂に来るお客さんがこの間話してくれたっけ。
お客さんもここの人たちも、壊れた排水溝から現れた私に対して奇異な目で見ることも無く、親しげにしてくれるのがありがたいよ。
家に着くとお風呂に入ってさっぱりした。楽な部屋着に着替えてから、さっき帰りに買った紅茶を入れて一息。葉を入れすぎたのか渋かったけど、お湯で薄めたら美味しく飲めた。窓の外を見るとすっかり陽が落ちて部屋の中も暗くなってきた。歩き疲れたせいで眠くなったので、今日は早めに眠ることにした。
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