世界の穴
ご訪問ありがとうございます。よろしければ最後までお付き合いください。
アルバンさんの宿屋の1階は食堂になっており、今は昼食時間の後のせいかお客さんはいなかった。
アルバンさんの奥さんの好意で、汚れたセーターやスカートを洗濯してもらうことになり、私はこの国の人が着る一般的な服を貸してもらった。
奥さんはグレーの瞳に赤みがかった髪を三つ編みにしており、なかなかの美人だ。メレンさんという名前らしい。アルバンさんと言えば、ちょっといい方はアレだけどずんぐりむっくりの髭もじゃおじさんといった感じで鳶色の瞳に明るい茶色の髪。
そんな二人に私は、今日起こった事を身振り手振りを交えながら、一生懸命説明をした。
「ミライは世界の穴から落ちてきたってことか。」
「世界の穴?」
世界の穴?ワームホールとか、タイムスリップとかそういった類の話だろうか。都市伝説ですよねそれ。
「どうした、具合でも悪くなったか?」
アルバンさんの目を見たまま遠い目をして考え込んでしまったからか、心配そうに声をかけられた。
まずはここがどこなのかを確かめたくて、国の名前や町の名前などを思いつくままに尋ねた。
もしかしたら知ってる情報があるかもしれない、という私の期待は裏切られ何を聞いても全く聞いたことも無かった。
この国はラストニア王国で、この町はイーロン伯爵領地内のセロンという町らしいこと、貴族制度があり普段、貴族は王都の屋敷に住んで王都で仕事をしているため、領地にはあまり来ない事などを詳しく教えてもらった。
アルバンさん夫婦のご厚意で、宿屋から少し離れた場所にある、小さな空き家をしばらくの間無料で貸してくれることになった。以前はおばあさんが一人で暮していたが、亡くなって以来空き家になっているとのことで、家具類はそのまま使っていいとのこと。とてもありがたい。
今日でかけるときに持っていたはずのショルダーバッグは見つからず、スマホも財布も無い。これから食べ物や生活をどうしよう・・・不安しかないが、そもそもこの状況で日本のお金が通用するとも思えないしどうしようもない状況に陥ってる事だけは確かなので、諦めて眠ることにした。
ドアをノックする音で目が覚めて、玄関へ出ると宿屋の奥さんのメレンさんが洗濯をしてくれた私の服と、朝食を持ってきてくれた。ここにはキッチンもあるので自炊はできそうだが、しばらくは宿屋で食事を提供してくれるとのこと。(なんていい人達!)何も持っていない私は衣食住のお世話になる代わりに、宿屋の仕事をお手伝いさせていただくことになった。
「おはようミライ。昨夜はよく眠れたか?」
「ありがとうございます、お陰様でぐっすり眠れました。これからお世話になります。よろしくおねがいします。」
アルバンさんも私の申し出を快く引き受けてくれてほっとした。昨日言っていた、【世界の穴】の話をもっと詳しく聞きたかったけど、仕入れと仕込みに忙しそうなので私はメレンさんの手伝いでベッドメイクや洗濯をすることにした。
こうして、落っこちてきた世界での生活が始まった。
最後までご覧いただきありがとうございました。子供の頃の空想を思い出しながらの執筆です。また、初めての執筆活動となりますので拙いものではありますが、もしよろしければ感想などを頂けると今後の励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。




