表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/31

Neunzehn

 青年の呼び止める声に振り向きもせず、エーリカはひたすら走った。

 今の生活を捨てて外に出たとして、より良い未来が待っているとは、どうしても思えなかったのだろう。

 気が付くとエーリカは、自分が寝泊まりしている小屋のそばまで戻ってきていた。ちょうど、あの青年と会った池の畔だった。

 身を知る雨に降られて、エーリカは震える身体を抱きしめた。今まで経験したこともないような熱いものが、体中を巡っていることに、恐ろしささえ感じていたに違いない。

 重い足取りで小屋に戻ったエーリカに、他に何かをする余力は残っていなかった。質素な、とはいえ彼女の人生の中では最高の、ベッドに倒れ込むとすぐに眠りに落ちていった。

 明くる日、いつもならば心地よい小鳥のさえずりが、やけにうるさく聞こえて目が覚めた。

 まとわりつく肌着が気持ち悪く感じて、そういえば水を浴び損ねたことを思い出した。芋づる式にあの青年のはにかんだ笑顔を思い出す。

 気怠さを伴った眠気とともに、邪魔な記憶を振り払うように頭を振る。勢いをつけすぎて少し眩暈がした。そのくらいが今のエーリカにとってはちょうど良かったのかもしれない。

 今日こそはという確かな決意をもって、エーリカは小屋のそばにある池に向かった。一抹の不安を抱えたままで。

 エーリカが畔に着きそうなころ、昨日の馬を連れた青年の足は一人、鬱蒼と茂る森の方へ向いていた。昨日の少女がまだ森の中を彷徨っているかもしれない。そもそも何故、彼女が森を出ることを拒んだのか。彼の表情はいつしか険しくなっていた。

※次回は、10月12日に公開予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ