Zwanzig
水を浴び終えて小屋に入ったエーリカは思わぬ来客を迎えることになった。
「久しぶりだねえ、エーリカ。調子はどうだい」
聞き覚えのある声が、彼女の下半身を熱くさせた。乾き切らない水に混じって、冷や汗がうなじから背筋を伝う。
「あ、貴女は……」
存在に対する恐怖がエーリカの全身を包み、思わず足を退いてしまう。
「気持ちは分かる。その節は悪かったよ」
エーリカを視界に収めていた煌めく亜麻色の瞳を持つ女性は、申し訳なさそうに目を伏せた。
「皆の前では、ああする他になかったのさ。正直、私も辛かったよ。まあ、許してはくれないだろうが──」
質素な小屋を見て回りながら、その女性がまた口を開いた。
「自己紹介が、まだだったか。私の名はマリーヌという。一部の者たちは、私をシュプリームと呼んでいるらしい」
苦笑いを浮かべながら、マリーヌはもう一度エーリカを見た。その不器用な笑顔は、エーリカの心を少しずつ解きほぐしていった。そうして、なぜかエーリカは自分に起きている出来事を伝える必要があるような気になっていた。
陰惨な過去を断片的に話して、そんな日々から逃がしてくれた男性のこと、彼の面影を持つ青年のこと、身の振り方に悩んでいること。マリーヌは顎に手を添えながら、エーリカの話を聞いていた。
「ふむ。その青年と会うのはやめたほうがいいね」
マリーヌの言葉は少なからずエーリカの動揺を誘った。
「不死の魔女となった今、青年と友好的な関係は築けないだろうさ。それよりも、エーリカが覚えた魔法があれば、ぜひ見せて欲しいんだが……」
※次回は、10月19日に公開予定です。




