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TSしても俺は男だ! 第2部 ――体が覚えていくのが、一番怖い  作者: らび


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3/7

女子の世界の歩き方

 三宅葵は、宣言通り田中を「観察」した。そして観察のついでに、やたらと世話を焼いた。


「その下着の選び方、間違ってる。サイズ合ってないでしょ、苦しくない?」

「……なんでわかるんだ」

「肩の食い込み方。見てればわかる。付き合いなさい、買い直すから」


 休日、田中は三宅に連れられて、女性用品の店を渡り歩く羽目になった。第1部でも一度、店員に勧められるまま買い物をしたことはあったが、あれは「なし崩し」だった。今回は違う。三宅は、田中に「理屈」を教えた。


 なぜこのサイズなのか。なぜこの丈が楽なのか。なぜ女はこの角度で座るのか。すべてに理由があった。三宅の解説は、まるで理科の実験の手順書のように理屈立っていて、田中は初めて「女の世界」を、感覚ではなく理論として理解し始めた。


「あんた、詳しいな」

「私も、"女らしくしろ"って言われ続けて生きてきたから。攻略本を丸暗記させられた感じ。……嫌々ね」


 その「嫌々」に、田中は引っかかった。三宅の口調に、初めて温度のある感情が滲んだ気がした。だが、三宅はすぐにいつもの淡々とした調子に戻ってしまった。


 試着室で、三宅に言われるまま新しい下着を着けてみる。確かに、体が楽だった。今まで感じていた締め付けや違和感が、嘘のように消えた。


(……ちょっと、感動してる場合か、俺は)


 鏡に映る自分に苦笑する。だが、二ヶ月間ずっと「敵」だと思っていたこの体と、初めて少しだけ「折り合い」がついたような、そんな感覚もあった。


 帰り道、三宅がぽつりと言った。


「あなた、この体を嫌ってるでしょ」

「……当たり前だろ」

「でも、嫌ってるだけじゃ、しんどいよ。一生続くかもしれないんだから。――嫌いでもいいけど、"使い方"は覚えたほうが、楽になる」


 使い方。その言葉は、田中の中に妙に残った。戻ることばかり考えていた。この体と「どう付き合うか」なんて、考えたこともなかった。


 三宅葵は、田中が二ヶ月間、一度も持てなかった視点を、事もなげに差し出してくる。田中はまだ、それを素直に受け取れずにいたが、少なくとも――一人ではなくなった、という事実だけは、確かに胸を温めていた。

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― 新着の感想 ―
TS作品には必ず登場する服選びのシーンですね!田中が自分の女性的な側面についてもっと教えてくれる人を見つけたのが素敵です。
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