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15、6番目のプレゼント

 四月十日の夕方。大希たきまちは、笠地蔵市かさじぞうしのある場所にいた。人気ひとけは無い。二人は向かい合って立っていた。

大希は茉に言った。

「ごめんね、呼び出して。どうしても、君に伝えたい事があって」

茉は恥ずかしそうに視線を逸らした。

「うん…」

「俺さ、君に色々と世話を焼いてきた。安全の事だったり、お花の事だったりね。話すようになってからは勉強の事だったり。それは、婆ちゃんに良くしてくれている事への恩返しだった。自分を成長させたいという気持ちもあった。そのつもりだった。でも変わっていったんだ」

「変わった?」

「一緒に勉強したり、ウチに来てもらってみんなで食事したりしてさ。それで気付いたんだよね。『この子、可愛いな』って。『自分の将来や家族の為に、一生懸命になっている素敵な子だな』って」

「アハハ…、そうなんだ」

「婆ちゃんが危篤の日、家で俺の気持ちを受け止めてくれた。『怖れ』を受け止めてくれた。その優しさに、どれ程救われたかしれない。今まで婆ちゃんにしてきてくれた事も含めて、君にはどれだけ感謝してもしきれない。こんな素敵な子に、恋人になってほしいんだ」

「う、うん」

大希はかがんで、右足をひざまづいた。右手には、赤くて綺麗な花が一本にぎられていた。

茉は、大希が持っている花を見て言った。

「その花は、ゼラニウム?」

「うん、そうだよ。俺、気付いたんだよね。婆ちゃんだけじゃなくて、『君がいて幸せ』って思える人がいる事に」

大希はゼラニウムを持っている右手を、左手で支えるようにして茉に差し出した。

花梨茉はななしまち

「はっ、はい!」

「あなたの事が好きです。恋人になってください」

茉は両手で、そっとゼラニウムを受け取った。

「私もだよ、歓雫かんだ君」

花梨はななし、ありがとう」

大希は立ち上がった。茉は幸せそうに、両手で持ったゼラニウムを見つめていた。

そんな茉を見て、大希は苦笑いの表情で言った。

「せっかくの告白だから、バラの花束にしたかったけどね。家計の都合でゼラニウム一本になっちゃったんだ。ごめんね」

「ううん、これでいい。バラ百本より、このゼラニウムがいい。一本で気持ちが伝わるよ。キヨさんも含めて、私達が好きな花だもんね」

「『一本で気持ちが伝わる』か…。そう想ってくれるような女性を、僕は好きになるんだね」

「ん? まるでゼラニウムでの告白が、二回目みたいに聞こえるけど?」

「そうだよ。俺は一度、ゼラニウムを持って、歓雫キヨに告白しているんだ。婆ちゃんの空想だけど」

「う~ん、よく分かんない」

「アハハ、だよね。気にしないでね」

二人は幸せそうに微笑み合った。

しばらくして、大希は体を横に向けて言った。

「お前のおかげで、花梨と恋人同士になれたよ。ありがとう」

大希はペコリと頭を下げた。大希の前にはジョンの銅像がある。そう、ここはジョンの銅像がある場所だった。

真剣に銅像へ頭を下げている大希に、茉は言った。

「ジョンの銅像に話し掛けるなんて、キヨさんみたいだね」

「アハハ、そうだね。でも、こいつにはお礼を言いたかったんだ。花梨と婆ちゃんを出会わせてくれたのはコイツのおかげだ。そして元旦に、神社で俺達はケンカをしたよね? 婆ちゃんがいなかったら、あの場で名前も知らずに別れていたんだよ。元をたどっていくと、俺達が結ばれたのは、ジョンのおかげかもしれないって思うんだ」

「確かにそうだね。それにキヨさん。あと、お節介な心子みこもね」

「うん、本当だ。みんなに感謝だよ」

大希はそう言うと、右手を少し振り上げた。そして、軽くジョンの頭をパチンと叩いた。

その様子を、不思議そうに見ていた茉が言った。

「歓雫君、なにしてんの?」

「ああこれ? 挨拶みたいなモノかな」

茉は少しクスリと笑った。

「ア八ッ、痛そうな挨拶だね。でも歓雫君、ジョンの頭を叩いた時、少し寂しそうな顔をしていたよ。どうして?」

「ちょっと事情があって、詳しくは言えないんだ。例えで言うなら、友達が引っ越してしまった後のような感じかな。たぶん、その友達はもういないから」

「ふーん。よく分からないけど、それは良い事かもね」

「えっ、良い事なのかな?」

「寂しさを感じるって事は、ジョンの銅像に関心があるって事じゃない? 好きって事じゃないかな」

「うん、そうだね。好きなんだと思う」

大希は、そっとジョンの銅像の頭に、右手のひらを置いて言った。

「ジョン、俺はお前が好きだ。六神体で人気が最下位。六番目のお前が好きだよ」

「歓雫君はキヨさんの誕生日プレゼントに、ジョンのぬいぐるみをあげたんだよね? キヨさんから聞いたよ。どうしてなの?」

「どうしてって?」

「どうして一番人気のある、おさるのジョニーを買わなかったの?」

「ああ、それはゴリラのジョンが不人気で、売れ残っててさ、安かったんだ。それだけだよ」

「本当に?」

「本当だよ。なにかおかしいかな?」

「ジョンが売れ残っていて安かった。それは本当だと思う。でも、ジョンを買った一番の理由は、不憫に思ったんじゃない?」

「不憫?」

「売れ残っているジョンがだよ。まるで『不必要だ』という感じで、誰の目にも留まらない。寂しそうに、山積みになっているジョンを見て辛かったんだよね?」

「どうなんだろう? それは自分でも、どこまで自覚があるか分からない。でも、思ってたよ。売れ残っているぬいぐるみ。道外れで、忘れられたように汚れている銅像。ジョンを見るたびに『寂しそうだな』って」

「幼少期の自分と重なったのかな?」

「う~ん…。でも、婆ちゃんは言っていたよ。『ジョンがウチに来たのは偶然ではない』ってね」

「そっか、そうなんだ」

「ん? なにを納得しているの?」

「キヨさんは分かっていたんだね、歓雫君の優しさにさ。人気の無いジョンのぬいぐるみを買ってきた時・汚れた銅像に関心があるって分かった時、キヨさんは嬉しかったろうね」

大希は照れた。

「いっ、いや、どうなんだろう?」

「きっとそうだよ。私もそうだから分かるんだ。嬉しかったもん」

「分かるって?」

「私が歓雫君に関心を持ったキッカケは尊敬だった。でも、好きになったのはソコだけじゃないよ。陰で私を支えてくれたり・キヨさんを大切にしているのを知った。それで確信したもん。『この人は優しいんだ』って。その瞬間、嬉しかったから」

「う、うん」

「歓雫君、私はまだ、ハッキリ言葉にしていなかったから、ちゃんと言うね。私は君が好きだよ。六番目のジョンだったり、六番になれるかどうかで苦しんでいる私に、手を差し伸べてくれる。そんな優しい君が好きだよ、歓雫君」

「花梨---」

大希は両手で茉の両肩を、優しく持った。すると、茉の声が少し漏れた。

「ぁ---」

茉は大希の方へ顔を向け、静かに目を閉じた。

大希は自分の顔を、茉に近づけようとした瞬間、ある『声』が聞こえた。


《さてと…、『きゅんきゅん』も見れた事だし、帰るとするか。私はラブシーンを覗き見するほど野暮じゃない。達者でな》


大希は茉の肩を両手で軽く押して、一歩退いた。

茉は驚いて目を開き、大希に言った。

「どっ、どうしたの?」

「今、声が聞こえたよね? まだいたんだ!」

大希はキョロキョロと辺りを見渡した。茉も同様に辺りを見た。

茉はキョトンとした表情で言った。

「『いた』って何が? それに、何も聞こえなかったよ」

大希はもう一度見渡したが、誰もいない。

この辺りに目立つ物はジョンの銅像ぐらいで、他に何もない。

「あれ? そうだよね。ごめん、考え過ぎだったかな」

「もうっ!」

二人はそう言い合いながら、笑い合った。辺りは少し暗くなっていた。陽が半分沈んだという頃合いだった。

すると二人の後ろから声がした。明らかに怒気を込めた、低い声だった。


「楽しそうでいいなぁ。俺も混ぜてもらえるか?」


二人は振り向いた。そこに立っていたのは、身長百八十センチのプロレスラーのようなガッチリした男。顔は無精ヒゲに覆われている。服装は、黒のスエットの上下に、緑色のジャンバー姿。首にはくたびれた茶色のマフラーを巻いていた。

『家着そのまま』という感じで、身だしなみを整えようという雰囲気は微塵も無い。大希は男の顔を見た。見た事がある顔だが、思い出せない。

男が嫌味っぽく言った。

「なにが『一ヶ月の入院』だ。ボロボロで三ヶ月もかかっちまったぞ」

一瞬悩んだ大希だったが、男の目を見て思い出した。

「お前は大晦日のコンビニにいたスーツの男…!」

茉も思い出した。大晦日に冷凍食品で自分を殴打した男だ。

「コンビニの割り込みの…」

コンビニ男は大希の前にズカズカと歩みより、目前に立って言った。

「探したぜ。てめぇは有名人みたいじゃねぇか。このゴリラの像の辺りで見かけたって奴がいてな。連中にこの辺りを張らせていたんだよ」

「連中?」

大希は周囲を見渡した。遠巻きに十人の男達が、大希・茉・コンビニ男を円状に囲んでいた。年齢は、二十代前半といったところだ。服装はコンビニ男と大差ない。

大希はコンビニ男をにらみながら言った。

「なるほどね。サラリーマン兼、半グレのリーダーだった訳だ」

「そんな事言っている場合かぁ? てめぇなんて、背後からの闇討ちができなかったら、ただのヒョロ男じゃねえか。生きて返さねぇからな」

「そうかもな。でも、お前一人くらいは道連れにしてやるぜ」

大希はそう言った瞬間に思い出した。

『もう暴力は振るわない』。そうキヨに誓っていた事を。

戸惑っていると、茉の悲鳴が聞こえた。


「歓雫君!」


先程まで自分のそばにいた茉がおらず、半グレの一人に羽交い絞めにされていた。

コンビニ男が言った。

「少しでも逆らえば、あの女を死ぬまで殴り続ける。いいな?」

「ぐっ…」

コンビニ男は左手で大希の胸ぐらをつかんだ。そして右手を大きく振りかぶり、力強く顔を打ち抜いた。それを何度も何度も繰り返した。大希の顔は晴れ上がり、鼻や口から流血しだした。茉はたまらず叫んだ。

「やめてぇ! もう止めてよぉー!」

それでも男は殴打を止めない。大希は足の力が抜けてひざまずいた。男は間髪入れずに、大希の腹部を力一杯に蹴り始めた。上半身の骨がいくつか折れた。何度蹴ったか分からなくなった頃、男は蹴るのを止めた。

そして薄ら笑いを浮かべて言った。

「もしも~し! 聞こえてる? 生きてる?」

大希は痛みで、顔をあげられなかった。

血まみれの顔で、うつむいて力無く言った。

「お…れは、もう…いい…。その…子…だ…け…助けて…」

「なんだって? 人にものを頼むなら、頼み方があんだろ?」

大希は両手を地面につけ、四つん這いになった。そして涙と血を地面にポタポタと落としながら、残る力を振り絞って言った。

「おねがい…しま…す。その子…だけ…でも、た…すけて…くださ…い」

茉は泣きながら、か細い声で言った。

「かっ、歓雫君…!」

コンビニ男は上機嫌で言った。

「もちろんダメだ。まずはお前からだ。その頭を踏みつぶしてやるからな」

男は大希の頭を勢いよく踏みつぶそうと、右足を高く振り上げた。

その瞬間、大希達から少し離れた場所から音がした。


ゴンッ!


硬い物と硬い物がぶつかったような、鈍い音だった。その音の後に、『ドサッ』という音がした。明らかに人が倒れ込んだ音だった。コンビニ男は足を降ろし、音の方向を見た。他の半グレ達も音の方を見た。

そこには、茉を羽交い絞めにしていた半グレの一人が倒れており、お陰で茉は自由になっていた。

茉の後方に、この場にはいなかった人物が立っていた。男性で、背は百六十五センチで高くなく、かなり細い。頭は耳の上辺りまでの長さで金髪。革ジャン姿だった。歳は二十歳ぐらいで、大希や茉とあまり変わらなそうだ。

その場の全員が、その金髪の青年を凝視した。青年は両手に大きなコンクリートブロックを持っていた。

青年は陽気に言った。

「いやぁ~、やっぱり背後から『コンクリートブロックでガツン!』が爽快だね。こんな悪党にはこれが一番だ。落ちてて良かったよ」

この場の全員が呆気にとられて金髪の青年を見たが、青年は気にする事なくブロックを投げ捨てた。

そして茉の前に立つと言った。

「もしかして、あんたがマミー?」

茉はキヨ以外に『マミー』と呼ばれた事がなかったので、戸惑ったが返事をした。

「はっ、はい。花梨茉です」

金髪の青年は満面の笑顔になり、茉を強く抱きしめて言った。

「うわぁ可愛い! 俺は母ちゃんが一番の美人だと思ってたけど、あんたが一番かも!」

「はっ、はぁ…」

青年は大希の元へ歩み寄った。大希の真横に到着するとしゃがみ、大希の左肩に優しく右手を添えた。そして心配そうに言った。

「先生、大丈夫か? え~っと、まだタッキーだっけ?」

大希は四つんいのまま、痛みをこらえて顔を上に向けた。

そしてかすれた声で言った。

「あ…、あんたは…? 何処かで会った事があるような…?」

青年は困った表情になった。

「えーっとね…。ごめん、名前は口止めされてるから言えないんだよね。そうだな、じゃあ『ブラザー』と呼んでくれよ、タッキー」

「たっ、タッキー…? それに『ブラザー』って、あんたのような兄弟は、俺にはいな---」

金髪の青年『ブラザー』は、大希の話をさえぎって言った。

「あー違う違う! タッキーとキヨちゃんが追い出された家の兄弟じゃないよ。まぁ、俺とアンタは兄弟みたいなもんなんだよ」

大希は、もっと分からなくなった。

「『キヨちゃん』って、婆ちゃんのことか? それに『兄弟みたいなもの』って…?」

ブラザーは大希の質問を無視して、茉に言った。

「マミー、タッキーの事頼むよ」

「はっ、はいっ!」

茉はしゃがみ、大希を自分にもたれさせた。そして、ハンカチで流血している血を拭いた。

二人の様子を見届けたブラザーは、ゆっくりと立ち上がり、コンビニ男達を見た。

大声で怒鳴りつけるかと思いきや、意外にアッサリと言った。

「さて、後はお前らだな。本来ならこの前のアイツみたいに、再起不能まで叩きのめすトコロだが、俺は今、親友に会えて嬉しいんだ。機嫌がいい。だから行っていい。逃げていいよ。もう来るな。あと、群れるのは止めたら? 白アリじゃあねぇんだからよ」

その言葉に、コンビニ男達は失笑した。

コンビニ男は言った。

「お前バカなのか? その自信は何処からくるのか分からねぇな」

「俺は空手家なんだ。しかも『インカレ三位』なんてショボいもんじゃない。『オリンピックで金メダル確実』なんて言われたんだぜ。まぁ、本業が忙しくて辞退したけど」

またもコンビニ男は失笑した。

「空手だぁ? その小さくてペラペラな体でか?」

「信じないならいいけど。さぁ、行けよ。見逃してやるから。アリの巣に帰んな」

「この野郎…。そんなに自信があるなら打ってこいよ。返り討ちにしてやるぜ」

ブラザーは呆れた顔で言った。

「あのなぁ、俺の話、ちゃんと聞いてた? 空手家だって言ってるだろ? つまり---」

ブラザーの話し終えるのを待たずに、半グレの一人が殴りかかってきた。

それを見たブラザーは、笑顔で言った。

「待ってましたぁ!」

ブラザーは半グレのこぶしをサッと避けると、右手の拳を半グレの腹に打ち込んだ。

半グレはうめき声を上げながら、前のめりにゆっくりと倒れた。口に泡を吹いていた。

「ぐっ、ぐぅ…」

その様子を見たブラザーは言った。

「大丈夫? まぁ、一週間くらい我慢したら治まるよ」

その様子を見た半グレ達は、『一対一だと分が悪い』と確信し、残り九人が一斉に襲い掛かってきた。

ブラザーは、またも呆れた顔で言った。

「頭悪いねぇ、お前ら」

ブラザーは半グレの襲撃をかわしながら、一人・また一人と仕留めていく。気が付けば、十人の男達が横たわっていた。

その様子を見たコンビニ男が言った。

「どうやら空手ができるというのは、ハッタリじゃあないようだな」

「まぁそうだけど、それ以前の問題だよ」

「なんだと?」

「クスリやりながら部屋に閉じこもって、詐欺電話かけたりしてんだろ? そんな心身共に不健康な人間に、金メダリスト級の俺が負ける訳ないって事だよ」

コンビニ男はニヤリと笑った。

「フンッ…」

「おやぁ? なにかおかしいかな?」

コンビニ男は、苦しそうにしている大希をチラリと見て言った。

「俺はな、反省したんだよ。そこのバカにやられた時にな」

「へぇ~、反省するのは良い事だ。で、なにを反省したんだい?」

「俺はケンカをする時は、力任せに暴れていた。それで負けた事は無かった。しかし、コンビニで油断して、そいつにやられた。それ以来、『絶対に油断しない』・『相手を冷静に分析する』と決めたんだ」

「もっと違う事を反省してほしいねぇ」

「俺はさっきからお前を分析していた。『メダリスト級の空手使い』っていうのは本当みたいだな」

「『金』が抜けてるけど。まぁ、分かってくれたんなら嬉しいよ」

「空手で思い出したよ。空手の格言にこんなのがあった。『空手に先手無し』ってな」

コンビニ男の言葉に、ブラザーは体をピクリとさせた。そして表情を引き締めて言った。

「へぇ…、良い格言を知ってるじゃん」

「お前は、先に手を出せない。それが規律なのかプライドなのかは知らないがな。だからさっきから、俺達を挑発していたんだろ?『見逃してやる』だの『白アリ』だの言って、殴りかかってくるのを待っていたんだ」

「…」

「ブロックで俺の仲間を背後から殴ったのは、女を助ける緊急事態ってトコだな」

「だからどうだというんだ?」

「空手と言ったトコロで、所詮は武術だ。ルールの下でやるスポーツだ。一対一の死闘なら絶対負けない。殺してやるよ」

コンビニ男の身長は百八十センチ。ブラザーより十五センチ高い。体も一回りどころか二回り大きい。筋肉も隆々。誰が見ても、ブラザーが不利に思える。

ブラザーは、怒り気味に言った。

「じゃあ、試してみようじゃないか。お前の言う通り、『無先手』で勝ってやるよ」

「よし、やってやるぜ」

コンビニ男は内心、『上手くいった』と思った。ブラザーをあえて煽って、『無先手』を約束させたのだ。これで自分がグッと有利になったと確信した。二人は改めて向き合い、距離を目前にまで詰めてにらみ合った。

ブラザーはコンビニ男の靴を見て言った。

「なぁアンタ、靴紐がほどけてるよ」

そう言って、コンビニ男の靴を指差した。

「あん?」

コンビニ男は足元を見た。次の瞬間…


バキィ!


鈍い音がした。なにかが折れたような音。ブラザーがコンビニ男の右足のスネを、右足で思い切り蹴ったのだ。男は痛みで絶叫した。

「ぐわぁぁー!」

コンビニ男は倒れ込み、両手で足を抑えた。顔は苦悶の表情になっていた。顔の汗も止まらない。

ブラザーはしゃがみ、コンビニ男に言った。

「大丈夫? 良い感触だったから、ヒビくらいは入ったよ。たぶん」

コンビニ男は痛みに苦しみながら叫んだ。

「なっ…なにが『無先手』だ。卑怯者めぇ!」

ブラザーは呆れ顔で言った。

「『卑怯』は自覚があるから安心してくれ。っていうか、お前、何言ってんの? これは空手の試合じゃないんだ。お前達がマミーを人質にとった瞬間から、戦闘は始まってるんだ。お前の言っている事は、戦場で『ルールとマナーを守りましょう』と言っているのと同じだよ。その上に十人がかりで襲ってきたお前は、俺より酷い。違うかな?」

コンビニ男は返事をしない。

ブラザーはもう一度聞いた。

「違うかなって、聞いているんだけど?」

そう言うと、右手のこぶしで、コンビニ男の右足のスネをゴリゴリと押し始めた。

「いっ、痛い! 痛い! 止めてくれぇー!」

「俺が『空手の心得』を実践するのは、日常生活と試合だ。お前になんて使わねぇよ」

ブラザーは、拳を押し付けるのを止めた。次にさっき半グレの一人を倒した時に使ったブロックの元へ行き、拾った。そしてコンビニ男の元へ戻ってくると、冷酷に言った。

「俺はタッキーのように甘くない。また復讐されたら面倒だ。ここで死んでもらう」

冷たい目をしたブラザーは、両手でブロックを持ち上げた。誰から見ても、脅しには見えない。コンビニ男は、怯えてブラザーに懇願した。

「やっ、止めてくれぇ~!」

「ダメだね」

ブラザーがブロックを振り下ろそうとした瞬間、大希が叫んだ。

「待てっ! 待つんだっ!」

大希の声を聞いたブラザーは、ブロックを地面に手放した。『その言葉を待ってました』とばかりに、フッと笑った。

大希は茉にもたれたまま、苦しそうに言った。

「あっ…、あんた。この間は、俺はやり過ぎた。今は反省しているし、あんたにも申し訳ないと思っている。だからもう、手を引いてくれないか? 頼むよ…」

コンビニ男は苦悶の表情を浮かべつつも、コクッコクッと何度も頷いた。

その様子を見ていたブラザーは思った。

「(そっか。この頃のタッキーは、もう『黒いモノ』が落ちていたんだな。嬉しいよ)」

 夕方は過ぎ、辺りはかなり暗くなっていた。

ブラザーは大希をオンブし、道を歩いている。その横を茉が並んで歩いていた。

右手で大希の背中を優しく撫でていた。

茉は涙を流しながら言った。

「かっ、歓雫君…」

大希は眠っており、返事をしない。ブラザーは茉を安心させるように言った。

「マミー、タッキーは大丈夫だよ。今、市民病院に向かってるからさ。あそこは救急科があるだろう? すぐに診てもらえるよ。あと数分で着くから、救急車より早いし」

「はっ、はい…。市民病院を知っているって事は、あなたは笠地蔵市の人ですか?」

「そうだよ。それよりタッキーの家に行って、キヨちゃんを連れてきてよ。そうだ、ついでに保険証も持ってきたら?」

茉は泣きながら、不思議そうに聞いた。

「キヨちゃんって、キヨさんの事ですか? キヨさんを知っているんですか?」

「知ってるよ。まだお婆さんだっけ?」

「えっ…?」

ブラザーは『しまった…』という困り顔になった。

「おっとっと。まぁとにかくタッキーの家に行ってきて。頼んだよ」

「わっ、分かりました」


ブラザーは大希をおぶって歩いていた。目をつむっていた大希だったが、茉がいなくなると目を開けた。痛みとケガで半分しか開いていない。ブラザーの方へ顔を向けず、横向きのまま弱い声で言った。

「ちょっとあんた」

ブラザーは前を向いたまま答えた。

「あっ、タヌキ寝入りしてた? 趣味悪いなぁ」

「適当に理由をつけて、花梨を帰しただろう? どうしてだ?」

「同じオンブするなら、タッキーじゃなくてマミーの方が良いのになぁ」

「答えたくないんだ。俺達の会話を聞かれたくなかったのか?」

「さぁねぇ」

「もしかしてあんた、東見大学の学生?」

「…どうして、そう思うの?」

「言ってたじゃないか。『インカレ三位なんてショボい』って。大学で空手をやってるように聞こえたんだよ。その上に笠地蔵市に住んでいる。この辺りに大学は東見だけだから」

「ありゃ、じゃあ認めるよ。東見大学の二回生。奨学金の甲を取った秀才だぜ、先輩」

「先輩って、二回生なら同級生だろう? 甲を取った俺以外の五人は、顔と名前だけは知ってる。でも、あんたじゃないはずだけど…?」

「俺なんだよねぇ」

「やっぱり、あんたは嘘を言ってる」

「言ってないけど?」

「さっきのケンカの時、あんたは言ったよね? 『金メダルは本業が忙しいから辞退した』って。学生が本業なら、空手と両立できるんじゃない?」

「あー俺は大学生だけど、本業って意味じゃないよ。俺は音楽家。ミュージシャンなんだ」

大希は顔は向けず、目だけ上へ向けてブラザーの金髪を見た。

「だから、その髪色か」

「そういう事」

「なぜ、俺を助けた?」

「え~っと、ある『人物』の依頼でね。『人物』で合ってるのかな? ま、いいか」

「…ジョンに頼まれたのか?」

ブラザーはギクリとしたが、平静を装って答えた。

「誰それ? 外人さん?」

「フフッ…。あんな神懸かったタイミングで助ける事ができる。そして、人かどうか迷う依頼者。それはもう、ジョン確定だよ」

「そりゃそっか。でも、あまり話せないぜ。ジョンの旦那には、『余計な事は言わないでくれ』と、口止めされているんだ」

「じゃあ、あんたが何者かは聞かない。だからジョンに頼まれた事だけ話してくれ」

「う~ん、でもなぁ…」

「大丈夫だ。俺とジョンは『友達』だから」

「アハハ。それ、ジョンの旦那も言ってたよ。『友達を助けてほしい』ってさ」

大希は嬉しそうにボソリと言った。

「『友達』か…。そっか、ジョンがそんな事をね」

「恩人で友達のタッキーだから言うよ。俺はね、ジョンからのプレゼントなんだ。『五番目のプレゼント』だと言ってたよ」

「やっと五番目が届いたか。で、どんなプレゼントなんだ?」

「『歓雫大希がピンチの時、助けてやってほしい』ってね。詳しくは言えないが、俺はタッキーがピンチの時、それを知る事ができる感覚をもらったんだ。それでスッ飛んで来たってわけ。人呼んで『お助け宅急便』ってトコロだね」

「どうやってここまで来たんだ?」

「え~っと、自転車だったかな」

「ふ~ん…。てっきり、『勉強机の引き出しから来ました』なんて言うのかと思ったよ」

「…は?」

「あんたは婆ちゃんや俺、花梨を知ってる。花梨を抱きしめるくらいだから、余程の信頼関係があるんだろう。俺達を『マミー』や『タッキー』なんて呼び方をするのは、婆ちゃんの影響を強く受けたって事だもんな」

「…」

「なにより、その顔立ちだよ。その顔は見覚えがある…いや、忘れるはずがない」

「…」

夕空ゆあさんに似た顔立ち。あんたは…いや君は、夕威ゆい創紫夕威つくしゆいだ」

「…他人の空似かもしれないだろう?」

「思い出したんだ。婆ちゃんや夕空さんと話した事があるんだよ、君の将来をね。夕空さんは『ギターを教えたい』と言っていたし、婆ちゃんは『空手がいい』と勧めていた。そう、今の君そのものだよ。そうか、ミュージシャンになって、空手も学んだんだな」

「いやいや、『他人の空似』で、『ギターと空手が趣味』の奴かもしれないぜ」

「フフッ…かもね。でも『お助け宅急便』なんて言葉は婆ちゃんしか言わないと思うけど」

「…」

「嬉しいよ」

「え?」

「君は婆ちゃんに可愛がられて育ったんだな。嬉しいよ。あっ、そういう事か!」

「何を納得してるの?」

「君は言ったね。『タッキーと俺は兄弟みたいなもの』だって。婆ちゃんが以前、夕空さんに言ったそうだよ。『夕威はもう一人の孫だと思っておる』って。

俺も君も、婆ちゃんの孫だ。だから兄弟って訳なんだな」

ブラザーは、深くため息をつくと言った。

「やれやれ、降参だ。そうだよ、俺は夕威。創紫夕空の息子、夕威だ」

「そうか。大学の二回生って事は、二十歳くらいか? 大きくなったな」

「あのさ、つまり俺は『未来からやってきた』って事になるんだけど、よく普通に信じられるね?」

「俺は『不思議な事』には慣れっこなんでね。タイムスリップぐらいどうって事ないよ」

「アハハ、それはすごいね」

「…どうして来たんだ?」

「なにが?」

「なぜ助けてくれたんだ? 君が空手の達人とはいえ、暴漢と戦うには危険が伴う。それにタイムスリップ…で良いのかな? それも安全に行える補償はないんじゃないか? そこまでして、なぜ助けに来てくれたんだ?」

夕威は少し鼻で笑うと、笑顔で言った。

「フッ、簡単な事だよ。タッキーは俺の兄弟同然だし、大好きなキヨちゃんの孫だし、俺の恩人でもあるから。そりゃあ駆けつけるに決まってるじゃないか」

「『恩人』って、さっきも言っていたね。俺、君に何かしたかな?」

「これからしてくれるんだよ。俺の幼少期、母ちゃんは俺の為に一生懸命に働いてくれてさ。でも、おかげで俺にあまり構えなかった。そのままだったら、俺は孤独だったと思う。でもタッキーが…、タッキー達が救ってくれたんだよ。俺と母ちゃんをね」

「どういう事?」

「キヨちゃんが、歓雫家で俺の面倒を見てくれるようになったんだ。キヨちゃんだけじゃない。タッキーやマミー、ミルキーもよく遊んでくれたよ。三人とも勉強ができたから、教えてもらってさ。お陰で俺は東見大学に現役合格できたし、奨学金の甲も取得できた。母ちゃんは安心して働けたしね。俺達親子は、みんなにどれ程感謝してもしきれない」

「そっか、そんな事が…」

「だから、多少の危険なら…、いや、命懸けでも助けるのは当然なんだよ」

「ありがとう、夕威。本当にありがとう…」

「いや、いいんだ」

二人は照れ顔になっていた。

しばらく無言で歩いていると大希が言った。

「感謝してるけど、夕威。一つだけ許せない事があるんだ」

「あれ? 俺、なにかしたっけ?」

「今度、花梨を抱きしめたら許さないからな。ブン殴ってやる」

「ちょっとちょっと! もう暴力は使わないんじゃなかったの?」

「花梨への『せくはら』なら、話は別だ」

「『せくはら』って酷いなぁ。俺とマミーは、一緒にお風呂に入った事がある仲なんだぜ」

「えーっ! ホントかよっ? いっ、イタタタ…」

急に大声を出した大希は、体が痛んだ。夕威は心配するどころか笑って言った。

「アハハッ! そんなに興奮しなさんな。キヨちゃんやミルキーともあるんだからね」

「婆ちゃんや楮乃とも? …それって、君が何歳くらいの話?」

「さてねぇ~。秘密だね」

「タイムスリップの話はするのに、お風呂は内緒かよ」

「ヘヘッ、ごめんよタッキー」

「その呼ばれ方、慣れないよ。そういえば最初、君は俺の事を『先生』と呼ぶか『タッキー』と呼ぶか迷っていたよな? 『先生』って何? 勉強を教えてくれた先生って意味?」

「勉強もあるけど、もう一つは空手。タッキー、あんたは俺の空手の先生なんだ」

大希は驚いた。

「いや、まさか! 俺はそんなの習った事ないぞ」

「これから習うんだよ。タッキーは今回の件を機会に、『護身術を学びたい』って思いつくんだ。それでキヨちゃんが気に入っている空手を選んで、道場に通うんだ」

「ホントかよ? それ」

「メキメキ上達して、四年間で黒帯になったらしいよ。俺はタッキーに小学校二年生から習うんだ。俺も上達して、最近じゃあオリンピックの選手候補になったくらいだからね」

「でも、出場しなかった?」

「うん、空手も好きだけど、俺が一番したいのは音楽だから。『世界一のギターリストになる』。母ちゃんが叶えられなかった夢を、俺が叶えたいんだ」

「そういえば、そんな事を夕空さんは言っていたな。そうか、夕威が叶えるんだな」

「うん、ライブ観に来てくれよな」

「ああ、みんなで行くよ」

さらに歩いていると、夕威の視線の先に市民病院が見えてきた。

夕威は言った。

「タッキー、そろそろ着くぜ」

大希は聞いた。

「夕威。君にはもっと色々な事を聞きたいが、もう止めておくよ。だから最後に一つだけ聞かせてほしい」

「んーっ? なにかなぁ? 一つだけだよ、タッキー」

甲斐広人かいひろとを痛めつけたのは君か?」

夕威は黙った。

大希は重い口調で言った。

「…そうだったか。あいつは左手が動かせなくなって、右目は失明したそうだ。警察は言ったそうだよ。『痛めつけるというよりは、殺し損なったと言った方が正確だ』って。何故そこまでしたんだ?」

今まで明るい軽口の口調を織り交ぜて話していた夕威だったが、怒気を込めた口調に変わった。

「なんだ、右手と左目は残ったんだ。それだけでもありがたいと思ってほしいぜ」

「夕威…?」

「俺はタッキーのピンチを知る感覚を持っている。さらに母ちゃんとキヨちゃん、マミーやミルキーのピンチまで知ってしまえるんだ。これはジョンの旦那も知らない事だけどね。タッキーはみんなへの愛情が強いから、その副作用の様なものかなって推測しているけど」

大希は黙って聞いていた。

「『タイムスリップ』は、完全に目標の時間通りに行える訳じゃあないんだ。さっきのタッキーだって、間に合わなかった。さらにタッキーのピンチ以外は、もっと不正確になってしまう。マミーが大学で左手を切りつけられた時も、上手くいかなくて助けられなかった。でも、マミーの『殺される日』には、なんとか間に合ったんだ。良かったよ」

「こっ、殺される?」

「ああ。今日の連中は、タッキーの事を『殺しても構わない』だったけど、甲斐は『花梨を殺してやる』だった。だから絶対に許せなかった。俺は殺すつもりだったよ」

「…」

「でも、思いとどまった。もし殺したら、タッキーやマミーが疑われるからね」

「俺達に疑いがかかる関係無しに、君は思いとどまったと思うよ」

「なぜ、そう思えるの?」

「こうして君の背中に顔をうずめていると、温もりを感じるからかな」

「タッキー…」

「よく思いとどまってくれた。もしとどまらなかったら、君に重い十字架を背負わせる事になったと思う。苦悩に満ちた人生になった。そんなの、花梨や俺の本意じゃないから。それで良かったんだよ」

「うん…」

「もし俺なら、自制が効かなかったかもしれない」

「キヨちゃんに引き取られた直後までのタッキーなら、そうかもね。でも、今のタッキーなら大丈夫だ、きっと」

「今までの俺や婆ちゃんの事なんて知ってるのか? 君はまだ生まれていないぞ?」

「言ったろう? 俺はキヨちゃんの家に預けられたって」

「ああ」

「あの人はお喋り好きだから、色んな事を毎日延々と聞かされたよ。どら焼き食べながらね。タッキー達が苦しかった頃の話も聞いた。それを面白おかしく話すんだからすごいよ」

「アハハ…、婆ちゃんらしいね」

「だから言えるよ。今のタッキーなら思いとどまった。兄弟の俺が保証する」

「そうか、分かったよ。嬉しいな」


市民病院に到着した。辺りはすっかり暗くなっていた。二人は病院の横側にある『救急外来入口』に来た。夕威は入り口のドアの横に、ゆっくりと大希を降ろした。

「悪いけど、ここで降ろしていくぜ。俺は病院の人に会ったりしたくないんでね」

「分かった。イタタ…」

大希は病院の壁に持たれて座った。

夕威は大希の横に、左膝を着いてしゃがむと聞いた。

「タッキー、最後に一つ聞いていいか?」

「なに?」

「ジョンの旦那が言ってたよ。俺がタッキーを助けに来るのは、『五番目のプレゼント』だって。六番目ってなんだろうね? 心当たりある?」

大希は嬉しそうに答えた。

「あるよ。もう受け取ったからね」

「へぇ~、なんなの?」

「それは夕威、君だよ」

「俺?」

「俺は赤ちゃんの君を見る度に思ってた。『この子の成長した姿を見てみたいな』って。そして、それは叶った。君は心身共に成長した大人になっていたんだな。会えて嬉しかったよ」

「タッキー…!」

「六番目のプレゼント…。俺は六番目の君が好きだよ、夕威」

夕威は大希の右手を両手でつかんだ。大希も夕威の手に左手を添えた。

夕威は両手を強く握って言った。

「俺もだよ、タッキー! あんたのプレゼントになれて良かった! 会えて嬉しかった!」

大希は笑顔でコクリとうなずいた。

二人の気配に病院の人が気付いたらしく、ドアの奥から物音が聞こえ始めた。

夕威は大希の手をほどくと言った。

「さて、俺はもう行くぜ」

「ああ」

「タッキー、あんたは辛い目に沢山遭ったと聞いている。でも、これからの未来は明るいからさ。安心してくれよ」

「うん。君を見ていると、そう思えてくるよ」

夕威は笑顔で言った。

「フフッ、そっか」

夕威は立ち上がると、右手を伸ばして、こぶしの親指を立てた。

サムズアップポーズをして言った。

「じゃあな、タッキー! また会おう!」

「夕威。また君に会える日を楽しみに待っているよ。君と一緒にね」

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