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10、人生の曲がり角

 色々あったが、時間はゆっくりと進んでいった。大学は春休みに入った。

二月二十日の奨学生認定試験に向けて、大希たきまちは勉強に励んだ。茉の苦手な個所は、

大希が熱心に助言した。大希と心子みこの仲も良好で、三人でお昼休みを過ごす日も増えた。

キヨと茉のお茶会は中断している。キヨの提案で、試験後に再開しようという事になった。ラインはよくしているようだ。

夕空ゆあとは将来の約束を解消したが、現在でも良好な関係を保っている。今も歓雫かんだ家にお弁当を届けてくれているし、大希とも楽しく会話している。キヨと夕空の仲の良さは変わらずで、二人で昼食を供にしているのも変わらずだ。

こうして皆それぞれ、日々を過ごしていった。


そして二月二十日に試験が行われた。結果発表は約十日後。大希・茉・心子。そしてキヨも、その結果を心待ちにするのだった。

 三月四日。奨学生認定試験の結果が、掲示板に張り出された。

大希が廊下を歩いていると、後ろからバタバタと走る音が聞こえた。

そして心子の大きな声がした。


歓雫かんだぁ!」


大希は振り返り、二人は向かい合った。

楮乃かみの! 俺もお前を探していたんだ! 花梨はななしを知らないか?」

「いない、いないんだ。何処に行ったのかな?」

「掲示板を見て、すぐ帰ったって事はないか?」

「う~ん---」

二人で話していると、心子の後ろから声がした。


「あれ? 二人とも、廊下で何をしているの?」


声の主は茉だった。茉の目が真っ赤になっている事を、大希と心子はすぐに気付いた。

何処か一人になれる場所で、泣いていたのだろうと察した。

心子が言った。

「茉…」

「アハハ、落ちちゃった。結果七位でおつ決定だね。六位になればこうだったんだけどなぁ。六位とは六点差だって。仕方ないよね。ヘヘっ!」

大希と心子は、無理に笑っている茉が痛々しかった。

心子は心配そうに茉に聞いた。

「これから茉はどうなっちゃうの?」

茉は普通に答えた。

「うーんとね、二回生になったら一回生の時と同じで、授業料半額免除の乙ランクの奨学生として過ごすよ。甲の全額には及ばないけど、とても助かるんだ。ありがたいね。ただ、かなり忙しくはなると思う」

「どういう事?」

「ウチにはもう、貯金は無いんだよね。だから私は、アルバイトをする必要があるの。これまで家計が苦しくてもアルバイトをしなかったのは、理由があってさ。歓雫君なら、気付いているんでしょ?」

「うん、まあ…」

「私の勉強には弱点があるの。習得するのに、人の倍の時間が必要なんだよ。だから好成績を残すには時間が必要で、アルバイトの時間が作れなかった。でも、そうも言ってられなくなっちゃった」

「えっ? でもそれじゃあ、アルバイトするから勉強の時間が減って、成績が下がって、来年の認定試験に悪影響が出て…。悪循環になっちゃうよっ!」

「大丈夫だよ。私ちょっと寝すぎだからさ、睡眠時間を減らせばいいよ」

「体壊しちゃうよ!」

「それにさ、出費を抑えれば、そんなにアルバイトしなくても済むと思うし」

心子はポロポロと泣き始めた。

「そんな! 茉はもう限界まで倹約しているじゃない! もうこれ以上無理だって!」

「泣かないでよ、心子。本当になんとかなるよ。一年間休学して、アルバイトと勉強に充てる方法もあるしさ」

大希は言った。

「でもそれだと就職が先送りになって、お母さんの苦労が長引いてしまうんだよな」

「そうなんだけどさ…」

そう言うと、茉は黙ってしまった。

心子は不安気に言った。

「まさか茉、大学を辞めるなんて思ってないよね?」

「…」

「だめだよ茉! それは絶対にダメだよっ!」

「アハハ、辞めるなんて言ってないじゃない。二人とも、心配してくれてありがとう。あと歓雫君、君には謝りたいと思ってたの」

「謝る?」

「たくさんの時間を割いて、一生懸命教えてくれたのに。こんな結果になってごめんね」

「いや、それは逆だよ花梨。俺を信用して教えを受けてくれたのに、結果に結び付けられなかった。本当に申し訳ない事をしたよ」

「ううん、謝らないで。

心子・歓雫君。何があっても二人は私の友達だからさ、それは忘れないでね」

「茉…」

「花梨…」

 その日の夕方。大学の中庭で、大希と心子はベンチに座っていた。

心子は言った。

「ねぇ歓雫、茉は大学を辞めたりしないよね?」

「恐らく、辞めるつもりだろう」

「そんな! 何か方法ないの?」

「体を壊す覚悟で乙の奨学生で二回生になるか、休学して母親に苦労をかけるか…。どちらにしても、花梨にとっては辛い選択になってしまう」

「ウチの親に頼んでお金を借りるって方法もあるけど、それは茉が絶対に受けてくれないしね」

心子がふと大希を見ると、歯を喰いしばって視線を落としていた。

「歓雫…?」

大希は右手の握り拳を振り上げると、ベンチを力一杯に叩いた。

「くそっ! ちくしょうっ! 油断した! うかつだった! もっと慎重に・丁寧ていねいに勉強を教えるべきだった。俺が甘かったんだ!」

「違うよ、私が悪いんだよ。茉が忙しいのを分かっていたのに、バレンタインチョコをけしかけて引っ張り回してさ。私だよ、私が悪いんだ」

「…」

「私の好きな漫画で六つの玉を集めると、どんな願いも叶うっていうお話があるんだ。そんな事が本当にあればいいなって思い始めた。もうなんでもいいから、茉を助けたい…」

「『どんな願いも叶える』か…」

「どうしたの? 歓雫」

「いや、なんでもない。それより楮乃、俺達が花梨にしてやれる事は少ないかもしれない。だから、できる事をしよう」

「どういう事?」

「お前、言ってたよな? 『骨折しているのに、無理に立ち上がる必要はない』って。今の花梨は、励まさない方が良いと思う。俺達は、いつも通りに花梨と過ごそう」

「そうだね。励ましたら気を使って『明るく振舞わなきゃ』って思うだろうし、一緒に落ち込んでいたら『私のせいで、雰囲気を重くしている』と思うだろうね」

「うん。しかし、俺達は本当に無力だよ。悔しいな」

「私もそう思う。本当に悔しいよ」

三月五日の朝六時、大希は目を覚ました。すると、ふと異変に気が付いた。

いつもなら早起きのキヨに起こされるのだが、まだキヨは寝ている。

大希は部屋の電気を点け、キヨの布団の横でしゃがんだ。

「あれ? 婆ちゃん、起きているの?」

キヨは力のない声で言った。

「うむ…、おはよう大希。ちょっと起こしてくれんかのぅ」

大希はキヨの上半身を支えて持ち上げ、身を起こした。

「婆ちゃんどうしたの? 具合が悪い?」

「いや、ちょっと力が入らんだけぢじゃ。膝は相変わらずぢゃがの。いたた…」

「そっか。朝ごはん食べたら大丈夫だよ、きっと」

「大希よ、ワシもそろそろぢゃ。時間がきたのぢゃ」

「なんの事?」

「あの世に行くんぢゃよ。もう、あまり日は無いかもしれん」

「ちょっとちょっと! 馬鹿な事を言わないでよ! そんな事はないよ!」

「ワシはもう九十ぢゃ。九十年間、自分と付き合うておる。だから分かるのぢゃよ。お前も実は気付いておるのぢゃろう? お前はこの世で、一番ワシの事を分かっている人間ぢゃ。だから薄々は感じておったぢゃろぅ?」

「…うん」

「大希、お前に頼みがある」

「なに?」

「ワシが倒れても、病院に連れて行ったりしないでおくれ。口に管を突っ込まれたり、あちこち切られたり、刺されたりしとうない。この家で死にたい。お前と暮らしたこのボロ家で、眠るようにして逝きたい。ワシの望みは、それだけぢゃ」

大希は左手でキヨの左肩を抱き、右手をキヨの右腕に添えた。

「うん…分かったよ、婆ちゃん。二人で良い時間を過ごそうね」

「うむ、ありがとうな、大希」

 三月六日の夕方。あと十分もあれば日が暮れそうだった。大希はジョンの銅像の前に来ていた。銅像前でしゃがみ、じっとジョンを見つめている。

「約束の日まで、あと二十五日。仮に合格してコイツから金を得たとしても、それを花梨が受け取ってくれるだろうか…?」

そう考えていると、左側から人影を感じた。見上げると茉が立っていた。

大希は立ち上がると言った。

「あっ、花梨。どうした? こんな時間に」

大希は茉の表情が気になった。

不機嫌そうというか、悲しそうというか、微妙な表情だった。

茉は力の無い、小さな声で言った。

「家に行ったらいないからさ、ココかと思って来たんだよ」

「花梨…?」

淡々とした口調で、茉は話し始めた。

「今日、事務局から呼ばれたよ。奨学金の事でね。甲の合格者から一人、辞退者がでたんだって。おかげで順位が一つ上がって、六位になったんだよ。甲になったんだ、私」

「そう」

「あれ? 驚かないね?」

「…」

「辞退者は誰なのか、事務局は守秘義務があるから言えないってさ。でも甲の合格者で、今年の四月から休学する人がそれに違いないから、隠しても無駄だけどね。時間の問題だよ。…で! どうなの? 認めるの?」

「…認める」

「へぇー。それでなに? 私が泣きながら『ありがとう歓雫君! 一生恩にきます!』とでも言うと思った?」

「…いや」

ふと大希は、茉の手に目をやった。両手が握り拳になり、小刻みに震えていた。

「私は怒ったぞ---」

「えっ?」

「私は怒ったぞっ! 歓雫大希ぃ!」

茉は大声で叫んだ。誰もいない広い道に、茉の声が響いた。

「私より少し勉強ができるからって、いい気になるなよっ! 同じ貧乏人のクセに偉そうなんだよこの野郎! 施しをして気持ちよくなってんじゃねぇ! 『お恵み』がどれだけ屈辱なのか分かんねぇのかっ!」

「はっ、花梨…」

「私はお前の事なんか、最初から嫌いだった! 大嫌いだった! いつも斜に構えて、いつも私より一枚上手で、いつも私の事を気にかけて…。そういうトコロが大っ嫌いなんだよっ!」

「すまない」

「謝ってんじゃねぇよ!」

茉はうつむいて泣きじゃくった。両手で拭いても拭いても、涙は止まらなかった。

しばらくすると、流れる涙は少なくなった。そしてゆっくりと顔を上げた。

頬は濡れ、目は赤くなっていたが、いつもの穏やかな表情の茉に戻っていた。

そんな茉の顔を見て大希は言った。

「すまない花梨。君のプライドを、ひどく傷つけてしまったな」

「違う、違うの歓雫君。君に助けてもらった喜び・甲を譲ってもらった申し訳なさ・大学を辞めなくていいという安心・自分の不甲斐なさに対する怒り…。色んな感情が頭に流れてきて、パニックになっちゃったんだ。ごめん、ごめんね」

「いや、いいんだ」

「歓雫君。私、この件は辞退するよ。甲の奨学生にはならない。乙で合格したんだから」

「そっ、そんな! なぜ?」

「歓雫君の成長が、キヨさんの夢でしょう? それは君自身の夢でもあるじゃない? 早く社会人になって、立派になった姿を見せたい・キヨさんに楽をさせてあげたいっていうね。二人の夢を押しのけてまで、私は大学に残りたいと思えないの。嬉しくないよ」

「夢を押しのけるだなんて…」

「歓雫君、教えてほしい。君が私の為に尽力してくれるのは、もう友達の域を超えているよ。それに、友達になる前から私を見守ってくれていたよね? しかも、見返りを一切求めない。なぜそこまで私の事を? 教えてほしい。私にはそれを聞く権利があると思う」

「…分かった。話すよ。そんな複雑な事情じゃないよ。以前にも言っただろう? 君は婆ちゃんの話し相手になってくれた。友達になってくれた」

「本当にそれだけ?」

「もう少し詳しく話そうか。婆ちゃんはお喋り友達が多いけど、特に仲の良いお婆さん達が五人いたんだ。『お喋りババァ六人衆』なんて言っておどけてたけどね。いつも喉がカラカラになるまでお喋りしてさ、楽しそうだったよ。でもみんな高齢だから、三~四年前くらいからかな? 一人・また一人と亡くなっていった。そして六人衆も婆ちゃん一人になってさ。寂しそうだったよ。そして辛くて・怖かったと思う。年の近いお婆ちゃんが順に亡くなっていったら、『次は自分だろうか?』と思うだろうからね。

俺一人では、婆ちゃんの孤独や苦しみを救えないから」

「…うん」

「それがキッカケかどうかは言い切れないんだけど、その辺りから急に婆ちゃんの体力と記憶力が衰え始めたんだ。花梨、君は老人と同居した事ある?」

「えっ? 無いね。祖父母とはお盆や年末年始に会うぐらいかな」

「衰えた老人と暮らすって、本当に大変なんだよね。楽しい事ばかりじゃない。自分の言った事を覚えていないし、間違いを指摘したら怒り出すし、できない癖に自分でやりたがるし。とにかくプライドが高くて気難しいんだ」

「それはキヨさんも?」

「そうだよ。普段は仲がいいけど、そういう一面もある。老人だから仕方ないって割り切ってた。でも、親友のお婆さん達が亡くなってから、急激にひどくなった。ワガママ言って・偉そうで。しかも相手をするのは俺一人だから大変で。俺自身も精神的に追い詰められていった。俺は婆ちゃんが大好きだし、尊敬している。でも、辛く当たり続けられたら怒りも沸くよ。婆ちゃんに向かって手を振り上げそうになったの、一度や二度じゃない」

「そんな…」

「それがある時を境に、急に機嫌や体調が安定して、ボケる以前の婆ちゃんに戻ってさ。俺に当たる事も無くなって、俺自身の生活や気持ちの安定も取り戻せた。何が婆ちゃんを回復させたと思う? だいたい四年くらい前なんだ」

「四年前…? まっ、まさか私?」

「そう、君と出会った。一人寂しく銅像を磨いてたら、優しく声を掛けてくれた。友達になってくれた。嬉しかったろうな。俺がそれを君だと知ったのは、お正月の神社だけど」

「でも私、そんなに大した事はしていないよ。話し相手になっているだけなの。しかも、私も楽しんでいるし」

「理由は二つあるんだろうな。一つは、花梨自身の魅力だと思う。困った人を放っておけない、情の厚さ。明朗に楽しく話ができる。人に優しくしている事を、『自分も楽しんでいる』と思える感覚。シンプルだけど、素晴らしいよ」

「もう一つは?」

「女だからかな」

「女?」

「うん。やっぱり、女性は特別なんだよ。男とは違う、何か大きな力があると思う。花梨、『孫娘まごむすめ』って言葉を聞いた事ある?」

「うん、あるよ」

「だよね。単純にとらえれば、『孫を娘の様に可愛がる』っていう意味なんだろうね。でも、『孫息子まごむすこ』なんて言葉は聞かないだろ?」

「本当だ、聞いた事が無い」

「女性には男にはない、可愛がりたくなるような何かがあるのかもね。君は情に厚くて・優しくて、その上に可愛い女の子。そんな子が、孫のように自分を慕ってくれた。男の俺とは、また違う可愛さだろうね。それに婆ちゃんは、自分の子がいないんだ。『もし産めたのなら、女の子が欲しかった』と言っていたのを聞いた事があるよ。花梨の存在は、本当に嬉しかっただろうね。生きる活力になったと思うよ」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、ただの偶然かもしれないよ? それに、私と友達になったからといって、そこまで劇的に体調が改善するかな?」

「こんな話を聞いた事がある。あるお爺さんが終末医療で入院していた。もう飲食をしたがらないくらい、衰えていたらしい。『最後は自宅で過ごしたい』という本人の希望を叶えて、自宅で看取る事にしたんだ。自宅で過ごして、大好きな孫達と話すようになった。すると、水すら飲むのが辛いハズだったのに、大好物のバナナを欲しがったんだって。そして丸々一本食べたらしいよ。そして数日後に、穏やかに亡くなったそうだ」

「それは、気持ちの部分が大きいのかな?」

「そう思うよ。『機嫌が良い・今を幸せに感じる』という感覚は生きる活力になって、身体に大きな影響を与えるんだろうね。『病は気から』なんて言葉もあるくらいだから。婆ちゃんは君と出会わなかったら、前後不覚の痴呆老人の道へまっしぐらだった。君がそれを止めてくれた。救ってくれたんだ」

「でも、それは結果がそうなっただけで---」

「そして、俺も救ってくれた」

「えっ?」

「もし婆ちゃんがあのまま俺に悪態を続けていたら、俺は苦しみ続けていた。そして、最悪な行動をとったかもしれない。花梨、君は俺も救ってくれたんだよ」

「そんな事無いっ! 歓雫君は、キヨさんに手を上げたりしないって!」

「花梨茉」

「えっ? はい!」

「君は婆ちゃんの命の恩人だ。そして、俺の人生の恩人でもある。だから、何か力になりたかった。今もだけど、当時はもっと人と接するのが苦手でさ。特に可愛い女の子を相手になんて絶対無理。だから、こういう形でしかできなかったんだ。許してほしい」

「許すだなんて…。歓雫君、こんな大きすぎるお礼は受け取れないよ」

「そんなに重く考えないでくれ。君のしてくれた事に比べたら、些細な事だよ。例えるなら、神社でジョンの絵馬を買おうとしたら、女の子と取り合いになった。その女の子は可愛かった。だから絵馬を譲った。それ位の事なんだよ。君のしてくれた事に比べたらね」

「これは…、これは絵馬じゃないんだよっ!」

「あと、大切な事を君に伝えないといけない」

「なに?」

「婆ちゃんは…キヨ婆ちゃんは、もうそんなに長くない。あと数日かもしれない」

「えっ、そんな…」

「俺は大学を休学して、婆ちゃんと静かな時間を過ごすつもりだ。もう奨学金辞退も、休学の手続きも済ませた。だから、もういいんだ。これは婆ちゃんから孫へのプレゼントだと思って、受け取ってほしい」

「プレゼントって、そんなのないよ!」

「婆ちゃんは二十歳には結婚させられていたから、社会に出て働いた経験が無いんだ。同じ女性の君が、社会でバリバリ働いてくれたら、婆ちゃんは喜ぶよ。婆ちゃんの叶わなかった夢を、君が引き継いでほしい。叶えてほしい。お願いできないかな?」

「…分かったよ、歓雫君。私、頑張るよ。キヨさんの分も、休学する歓雫君の分も頑張るからね」


《不憫だな、花梨茉…。よし、お前に試練を与える。乗り越えられたのなら---》


大希はジョンの銅像を見て言った。

「あれ? 今聞こえたな…。なんと言ったんだろう?」

「何も聞こえないけど…。歓雫君、ジョンがどうかしたの?」

「ううん、なんでもない」

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