レアエネミー05
隆也が魔法を使うところを始めて見たが、なんだか想像と違った。
「あと一体でレベルアップしそうだな」
「因みにさ、隆也の感電って近接魔法だったりする?」
普通に考えて、後衛職である魔法使いの初期魔法が近接魔法な訳がないのでまずあり得ないのだが、一応聞いてみる。
「そんな訳ないだろ、普通に遠距離魔法だぞ」
まぁ、そうだよな。
「だとしたら使い方おかしくねぇ?」
「命中補正なくてもこれなら確定ヒットだろ?」
「うえぇ…ゴリ押しすぎんだろ」
後、俺背中に乗ってんだぞ?普通に考えて杖でぶん殴るか?落ちたらどうすんねん。
「ま、最初の雑魚敵相手だしな」
「それは…確かにそうだけどさ…」
「それにレベル上がったらAGIもっと上げる予定だしな」
「なんでAGI?魔法使いなら普通MPとかINTじゃね?」
「前線で華麗に攻撃を避けながら魔法を放つムキムキ魔法使い…かっこいいだろ?」
「確かに……それで白髭とか生えてたら玄人っぽてイケてるかも」
「だよなぁ!?」
「じゃあ魔法使いってより、魔法戦士?だな」
前線で敵のヘイトを集めつつ、魔法で火力を出してくれると大分助かるな…
このパーティー、今の所俺と隆也だけだし。
隆也がそのポジションにいてくれるなら俺は本格的にサポートでいられる。
「そして俺は運だけで敵を射抜く、と」
なんかしょぼくね?
隆也は前線で暴れて?俺は後ろからチクチク、しかも命中率は運頼み…情けなさすぎるだろ。
「見た目のせいでカッコ良くはねぇな」
「プリティーだろ?」
なんかムカつくので可愛くアピールしてみる。
「キッッッッ………」
本気で気持ち悪そうにされるとちょっと悲しい…
「てか、ちゃんと前見て走れよ」
なんか文句とか言われそうだったので、前を見るよう促して注意を逸らす。
「へいへい」
そして俺は周りに目を向ける。
レベルアップまでもう少しだし、角兎でもいないかと辺りを見渡していると、遠くの方に林を発見した。
「お、なんか遠くに別エリアっぽいの見えるぞ!」
早速隆也に報告する。
だが、隆也の反応はあまりよろしくなかった。
「別エリア?まずいな...」
「何がマズイって?」
「いや、まだ決まったわけじゃないけど...そのま別エリアって林だったりするか?」
「勿論林だけど...その言い方的にあんまり良くない感じ?」
折角の別エリアで上がったテンションも、隆也の反応のせいで直ぐに引き戻される。
これはなんか嫌な予感がするぞぉ...
「この平原の林って、レアエネミーが湧く可能性があるんだよ」
「レアエネミー?でも場所分かってんならレアでもなんでもなくね?」
何言ってるんだ?最初の村から走って数分の場所にそんなスポットがあるわけ無いだろうに...
「違うぞ、林自体がモンスターだから場所は固定じゃない」
「は?」
林がモンスター?地形がそのまま敵ってどういうことやねん。
「まぁ林があったとしても出現確率は20%だし多分出ねぇな」
「レアなんだろ?倒せるなら倒したいけどなぁ...」
「多分厳しいと思う、レアエネミーのトレントは5Lvだし」
「20%ねぇ...ま、流石にか」
気になったので隆也に頼んで少し近づいてみるが、特に変化はない。
なのでそのまま通り過ぎようとしたとき...林の奥から蔦のようなものが伸びてきた。
それを見た俺は慌てて声を上げる。
「4時の方、攻撃来てる!」
「ッッッ!」
俺の報告を聞いた隆也は直ぐ様その場から飛び退き、迫る蔦を回避する。
「夕陽いるし、レアエネミーなんてこのゲームで見ることないだろうと思ってたのに...」
「おい、それは聞き捨てならないぞ!俺は幸運なんだ!」
隆也の言葉にすぐさま訂正を入れるが、隆也は軽く受け流すのみで聞いちゃいない。
今の俺は幸運全振りのラッキーガールだぞ?レアエネミーなんてレアでもなんでもないんだよ!
「取り敢えず降ろすわ」
林からある程度距離を取ったところで、隆也が俺を地面に降ろす。
林の方を見てみれば、林の中から蔦攻撃を仕掛けてきた主、トレントがちょうど出てくるところだった。
「なんか...木製のマネキンみたいな見た目してるな」
トレントって言うぐらいだから、もっとバリバリ木です!みたいなのを想像していたが、現れたのは木が絡み合ってできたマネキンのような怪物だった。
表面には蔦がびっしりと生え、所々花も咲いている。
「ヘイ、隆也あいつの情報は?」
「えーっと...すまんが詳しい情報は調べてない」
「ちっ、使えねぇぜ!」
いつも通り隆也に聞けば情報でも手に入ると思ったのに、どうやら隆也はトレントについて詳しくは調べていないようだった。
「夕陽とやってて出会うと思ってなかったから...ミスったぁー」
「因みにここで死んだらどうなんの?」
情報がないのはもう仕方がないので、ここは重要なことを聞いておく。
幸いトレントとはまだ距離があるし、動きも遅いので軽く話すぐらいの余裕はありそうだ。
「勿論デスペナだ、ペナルティはアイテムの3割をその場に落とすのと、経験値が半分減るのとがある」
「経験値減るのか!?」
なんてことだ、今の経験値は数字にすると10/9といった所、ここで負けるとそれが半分に減っちゃうのか...
確かLv5だったよな?今の俺と隆也はLv1だけど、勝つしかない!
俺がデスペナ回避のために気合を入れようとしたその瞬間、隆也がぼそっと呟く。
「コイツの経験値...どれぐらいだっけ」
そしてそれを聞いた俺、すぐさま天才的な作戦を思いつく。
その名もラストアタック奪取作戦。
俺の攻撃手段は弓による射撃のみ、そして残弾はたったの8発。
これではダメージが稼げず、俺が最後に攻撃を入れることが不可能になる。
な・の・で!隆也をサポートしつつ、矢を温存、最後の最後で一斉に放って経験値を頂きじゃい!
「俺は魔法を後22回使えるから、それでどうにか削ってみる!」
幸いにも隆也が自分から前線を引き受けてくれたのでね。
ここは負けるかもしれない戦いじゃなくて、勝てる戦いだと思って挑んでいこうか。
「取り敢えず一発...」
矢と弓を取り出し、矢を番える。弓を引き絞り、力を貯める。
狙いはつけない、自分のLUK補正を信じて放つ!
「ふッッッ!」
放たれた矢は軽い放物線を描きながらトレントに向かって飛んでいく。
飛んでくる矢を止めようと何本か蔦が伸びるが、捉えきれず。
俺の放った矢はトレントに突き刺さり、表面を削り本体に突き刺さった。
「隆也!トレントデカいんだから魔法ガンガン使えよ!」
レアエネミーだからか、俺が攻撃を当てた瞬間、トレントの上に赤色のHPバーが出現する。
今の俺の一撃で削れたのはほんの僅か...
「相性とかもあんのか?」
これが生物なら大ダメージなはずなんだけど...相手は動く木だからな。
多少矢が刺さった程度では全く動きに問題がないようだ。
だが、ダメージは僅かでも注意を引くことはできた。
どこに目がついてるのかは分からないけど、確かにトレントはこちらを見ている。
つまり隆也にとっては攻撃チャンスってわけだ!
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「感電!」
まずはトレントに向かって走りながら一発放つ。
魔法を唱えると、手の中にある杖の先端部分に電気の玉が出現する。
後は杖を振ってこの電気の玉をトレントに当てるだけ!
「この距離なら流石に当たるだろ!」
距離にして10mほど、だがトレントは4mはあるほどの巨体。
この距離なら外すほうが難しい!
俺はトレントめがけて杖を振るう。
杖を振るうと先端から電気の玉が放たれ、トレントの右足?の部分に着弾する。
様子を見ていたが、ほんの一瞬だけ動きを止めていたし、感電の効果は効いているようだ。
そして肝心のダメージだが、なんとHPゲージを20/1ほど削っていた。
感電を使える回数は残り21回、かなりギリギリだが、順調に行けば勝てそうだが、一発も外してはいけない状況だなので、やはり杖ごと直で当てるほうが安心だろう。
「夕陽ー!アシストは頼んだ!」
運悪く...低確率のレアエネミーだし運良くとも言えるかもしれないが、出会ってしまったんだから。
本気で戦おうじゃないの!
「こちとらVR格闘ゲーム県内6位だぞ舐めんなオラァァァ!」
俺は杖に魔法を纏わせたまま、トレントに向かって殴りかかった。
低確率のレアエネミーになんとまさかの遭遇...
強敵だから不運とも言えるが、確率的には幸運とも言える......のか?
まぁどっちでも良いよね、どうせ夕陽のせいなんだから!




