お救いください お薬師様 第五話
常磐林蔵様が連載されている「宗盛記」の二次創SSです。
楽しむには「宗盛記」の知識が必須となります。
「読んでおいてほしい本編の話数」は下記となります。チェックいただければ幸いです。
宗盛記0100 永暦二年七月 豌豆瘡対策 から
宗盛記0105 応保元年十二月 帰京 まで
この連載は、プロットを作成の後、AIで文書化したものを推敲して仕上げています。
いままでは梟丸くん視点でしたが、この章は視点がしょっちゅう入れ替わります。
ご了承ください。
永暦二年 七月
評定後
人の気配が消えた国衙の奥。
灯りは一つ。
教盛と、黒装束の長だけが残っていた。
庭の虫の音が、遠い。
「……見事だった」
教盛が、ぽつりと言う。
「ここまで整うとは思っていなかった」
「表の方々の働きです」
長は、淡々と答える。
「我らは、流れを壊さぬだけ」
教盛は、小さく笑った。
「いや。
流れを作る者と、流れを守る者が揃わねば、盤面は持たぬ」
「黒装束の役目を、改めて聞かせてほしい」
【黒装束の役目】
「庶民対策です」
長は、即答した。
「噂話を整えます」
「誤った情報は、正します」
「同じ内容を、少しずつ形を変えて、何度も流す」
教盛は、目を細める。
「……なぜ、変える」
「人は、一つの話は疑います」
「ですが、似た話を複数聞くと、
それを“真実”だと思う」
「だから」
長は、静かに続ける。
「同じ流れを、別々の形で、何度も」
教盛は、深くうなずいた。
「理に適っている」
【破綻点】
「次に、破綻しそうな場所」
長は、指を三本立てた。
「国境。特に甲斐と武蔵、信濃と上野、越後と上野」
「川の渡し場」
「港」
「人と物が、必ず滞る」
「滞れば、不満が溜まる」
「不満は、噂になり、
噂は、恐れに変わる」
教盛は、静かに言う。
「そこに、人を出す」
「はい」
「目立たず、
しかし、常に居る」
【伊豆について】
「伊豆は」
教盛が、問いかける。
「大丈夫です」
即答だった。
「伊豆守様が、
一年半かけて築いた流れがあります」
「我らが手を入れると、
逆に歪む」
「見守るのみ」
教盛は、わずかに笑った。
「やはりな」
【追加事項】
教盛は、しばし考え、言った。
「他には?」
長は、少しだけ間を置いた。
「子供です」
「……子供?」
「流行歌、手遊び、数え歌」
「これらは、噂より早く広がります」
「『オン・コロコロ』は、
子供から先に流します」
教盛は、思わず吹き出した。
「なるほど」
「子が唱えれば、
親は止められぬ」
「はい」
【最後に】
教盛は、長をまっすぐ見た。
「頼む」
「この坂東を、守ってくれ」
長は、頭を下げなかった。
代わりに、静かに言った。
「我らは、影です」
「影は、守るとは言いません」
「壊れぬよう、
支えるだけです」
教盛は、深く息を吐いた。
「それで十分だ」
夜風が、灯りを揺らした。
この夜、
坂東には、二つの防壁が築かれた。
一つは、『表の制度』
もう一つは、『影の流れ』
痘瘡は、まだ消えない。
だが、備えはできた。




