お救いください お薬師様 第三話
常磐林蔵様が連載されている「宗盛記」の二次創SSです。
楽しむには「宗盛記」の知識が必須となります。
「読んでおいてほしい本編の話数」は下記となります。チェックいただければ幸いです。
宗盛記0100 永暦二年七月 豌豆瘡対策 から
宗盛記0105 応保元年十二月 帰京 まで
この連載は、プロットを作成の後、AIで文書化したものを推敲して仕上げています。
いままでは梟丸くん視点でしたが、この章は視点がしょっちゅう入れ替わります。
ご了承ください。
永暦二年 七月
常陸国衙。
朝靄が庭に残る刻。
評定の間には、坂東の顔役が揃っていた。
上座に平教盛。
左右に、佐竹隆義、上総広常、千葉義胤、畠山重能、那須資隆。
宗教方代表として西光寺の僧が控える。
そして、末席。
名もなき代表。
黒衣の男と、まだ幼さの残る少年。
誰も名を問わない。
だが、誰も軽んじもしない。
この席にいるという事実が、すでに異例だった。
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【基本方針】
「宗盛の書状、読んだな」
教盛が言う。
全員がうなずく。
上総広常が嬉しそうだ。
「基本方針は一つだ。
宗盛の手紙に従う」
沈黙。
「だが」
教盛は一同を見回した。
「坂東は伊豆ではない。
理屈だけでは、人は動かぬ」
佐竹が口を開く。
「その通りです。
伊豆では宗盛様は、すでに実績を示している。
しかし坂東では――」
言葉を切る。
「名だけでは、民は従いません」
上総が頷く。
「流通を止めれば、不満が噴き出す。
船乗りは特に荒れるでしょう」
千葉が渋面を作る。
「だから無理に止めてはならん。
抜け荷が増える」
畠山が短く言った。
重苦しい沈黙。
その中で、黒衣の男が、初めて口を開いた。
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【名もなき代表】
「上位下達は、必ず歪みます」
声は低く、静かだった。
一斉に視線が集まる。
「命じられた者は、
自分に都合の良い形で解釈する」
「それが、人の流れです」
教盛が、わずかに口角を上げた。
「では、どうする」
「庶民に分かる形を、示すことです」
黒衣は、淡々と続ける。
「誰が、何のために、動いているのか。
それが見えれば、流れは整います」
梟丸が、一歩前に出た。
小さな声。
「……合言葉を作りましょう」
視線が集まる。
「短くて、覚えやすくて、
意味が一つに集まる言葉です」
西光寺の僧が、静かに唱えた。
「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ。薬師如来様のご真言です」
上総が、顔をしかめる。
「……覚えられん」
間が生まれた。
梟丸が、ぽつり。
「オン・コロコロ、で」
一瞬の沈黙。
そして、誰かが吹き出した。
教盛が、笑う。
「よい。
それでいこう」
合言葉
・手を洗ったら、オン・コロコロ
・人に会ったら、オン・コロコロ
・熱湯で洗って、オン・コロコロ
・何をやっても、オン・コロコロ
・迷ったならば、オン・コロコロ
「呪文は、理屈より強い」
黒衣が言う。
「恐れを、行動に変えます」
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【統率の形】
黒衣は、さらに続けた。
「陣立てを、明確に」
教盛を見る。
「大将は、常陸介様」
教盛がうなずく。
「副将は、宗盛様。
伊豆より東海道と水運を統制」
「同じく、知盛様。
武蔵守として東山道を抑える」
一同の顔に、納得が広がる。
「清盛公が、坂東のために動いている。
その形を、民に示します」
千葉が、低く言った。
「……それなら、船乗りも、納得する」
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【黒装束の役目】
「黒装束は、庶民対策を担います」
黒衣が言う。
「噂を整え、恐れを鎮め、
流れを、歪ませない」
「表には出ません」
「ですが、流れが淀む場所には、必ずいます」
梟丸は、黙ってうなずいた。
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【資金】
佐竹が、前に進み出る。
「相馬御厨の件でいただいた対価、すべて出す」
上総も続く。
「我が分も、提供する」
千葉が、首を振る。
「うちは無理だ。
船乗りの暮らしを守らねばならぬ」
教盛が、笑った。
「誰かを忘れていないか?」
一同を見る。
「儂は、常陸介だ。
国司の取り分は、自由になる」
さらに続ける。
「清盛兄より、武蔵国の遙任分も任されている。
加えて初期投資用に銭八千貫、預かっておる」
間に、静かなざわめき。
「資金は十分。
しかし、申し出は、ありがたく受け取る」
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【決定】
教盛は、深く息を吸った。
「坂東の防疫は、ここに決する」
誰も反対しなかった。
その瞬間、
目に見えぬ網が、坂東全土に張り巡らされた。
梟丸は、心の中で思う。
(……流れが、動いた)
黒衣の男は、何も言わず、静かに立ち上がった。
影は、再び影へ戻る。
だが、もう、
坂東で痘瘡は、自由には歩けない。
坂東防疫体制
宗盛くんが持っている巻物がポイントです。




