お救いください お薬師様 第二話
常磐林蔵様が連載されている「宗盛記」の二次創SSです。
楽しむには「宗盛記」の知識が必須となります。
「読んでおいてほしい本編の話数」は下記となります。チェックいただければ幸いです。
宗盛記0100 永暦二年七月 豌豆瘡対策 から
宗盛記0105 応保元年十二月 帰京 まで
この連載は、プロットを作成の後、AIで文書化したものを推敲して仕上げています。
いままでは梟丸くん視点でしたが、この章は視点がしょっちゅう入れ替わります。
ご了承ください。
永暦二年 七月
武蔵国某所。
川と台地の境目。
行き止まりに見えるその奥。
夜明け前、梟丸は戻った。
戸は開いている。
「……戻ったか」
短い声。顔は見えない。
奥の間に長が座っている。
「報告」
梟丸は、膝をついた。
「宗盛様より、坂東各地へ手紙が送られました」
長は、うなずかない。
続きを促す。
「このままでは、歪みが出ます」
一呼吸、置く。
「伊豆では、宗盛様は一年半かけて実績を積みました。民は従います」
「……」
「ですが、坂東では、みな宗盛様を知りません」
声が、少しだけ低くなる。
「指示は守られません。
守られたとしても、遅れます。
遅れれば、恐れが勝ちます」
沈黙。
「流れを、整える必要があります」
灯芯が、かすかに鳴った。
「黒装束の働きどころです」
長は、しばらく動かなかった。
それから、短く息を吐いた。
「……表に出るか」
梟丸は、うなずいた。
「今なら、まだ間に合います」
長は、目を閉じた。
「久しいな」
そう呟いて、立ち上がった。
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数日後、
夜半 常陸国衙
庭に霧が垂れている。
月は雲に隠れ、灯りは最小限。
平教盛は、一人、縁に立っていた。
気配に、振り向く。
「……来たか」
闇から、黒装束の長が現れる。
「初めてお目にかかります、常陸介様」
教盛は、苦笑した。
「兄上から聞いてはいた。
だが、本当に出てくるとは思わなかった」
「本来、影は影のままがよろしい」
「伊勢平氏は、坂東から離れて久しい。
この地のことは、正直、よく分からぬ」
教盛は、率直だった。
「民を導く、その手助けをしてほしい」
長は、わずかに首を傾ける。
「黒装束は、桓武平氏の中に紛れております」
「噂話を整え、望む流れへ導くことができます」
「ですが」
一拍。
「影の者です。
表に出すぎれば、力を失います」
教盛は、深くうなずいた。
「それでよい。
いや、それがよい」
そして、静かに言った。
「まずは、対策の評定に出てほしい」
長は、わずかに口角を上げた。
「承知しました」
霧が、二人の足元を流れていく。
坂東の防疫戦は、
この夜、静かに動き出した。




