準備
青い建物の下、そこにはすでに人だかりができ始めていた。薄いピンク色のファンだけでない一般の客もかなり集まっている。
気づかれないように建物の中へ入ると、ネルが観客の様子を眺めていた。その雰囲気は明らかに暗く、怖さが言葉使いにも表れていた。
「ちっ、黄の頂点に頼んだC地区が4割もいない。手を抜きやがって。妥協ラインは越してるからまあいいか」
「ネル様、地が出てますよ」
「あっ、あらら、さすが時間通りね」
すぐに切り替えておっとりした雰囲気に。
「ローズちゃん、そして今から君はランドくんとして頑張ってね、ローズちゃんも元気になって安心したわ」
恥ずかしそうに髪をいじりながら「えへへ」と笑みをこぼしていた。
「少し早く来てもらったのはクロウことランドくんの衣装が大丈夫か確認したくてね」
後ろでちらりと最初から見えていた黒い鎧。見たことある映画の悪役そのままの鎧がそこにあった。
「ちゃんとクロウくんに合わせてあるんだ」
「あれ、マスクは?」
「今回は『ブレードガンナー リブート』のためのショーだから隠す必要無いからいいんです」
「そうか」
てっきり全身纏うもんだと思ったから少し残念。
「そんなに落ち込まれるとは。すべて終わったら考えておきますよ。いっそ新しく『ブレードガンナー リブート』を映像で作ることだって――」
「ちょっ、それは私が考えようとして……あーえっと」
妙な間が生まれた、二人とも気まずそうにこっちをもて困り顔。
「良いよ、俺は」
返事に呼応するようローズが飛びつてくる。
「ほんと! 約束よ! もちろん君の友達も連れてくるのよ!」
鼻が付いそうなほど近い距離で話す彼女の勢いに「はい、もちろん」と返事するので精一杯。
「ローズちゃん」
「あっ、はーい」
手招きしながら呼ぶネルの声に彼女は我に返ったのか照れた笑みを浮かべながら「ごめんね。うれしくってつい」と言いながら離れていく。
ネルのそばにまで行くと躾とばかりにパンっとおしりを叩かれ、痛かったのか睨んだ。しかし、睨み返されるとすぐに目をそらしている。
「とりあえず着て見てごらん、そこに試着室があるから」
指さす方向にカーテンで覆われた一人が入れそうな空間があった。
黒い服はぴちぴちのスーツ、そこに鎧が縫い付けているような感じった。背中当たりには石ころが入った袋のようなものが縫い付けられている。これはいったい何だろう?
着心地は不思議な気分だった。肌の層が一つふてたような感覚のぴちぴちのスーツ動きやすく、重さも元の服よりもだいぶ軽い。
「着替えました」
二人がジロジロと全身を見回しながらくるくると回っていく。
「いいね、問題なさそう」
「ですね」
「着心地はどうですか?」
「軽くて動きやすいです。問題ないと思いますよ」
「良かった。実弾でやるのは考えてなかったので素材変えたり大変だったのですよ」
二人そろって彼女に頭を下げあう「いいのいいの、やりたいことをやりあうというのは私から見れば友達らしくて微笑ましくて嬉しいわ」
その言葉に不意に目が合い不思議とお互い笑いが漏れた。
「そういえば、小石みたいなのが入ってる袋がついてたけどあれは一体?」
「それは火薬です。今回のラスト3発は直撃するけどさすがに空砲なので。その代わりそれが爆発します。少し衝撃がある程度なので大丈夫、音に合わせて倒れるふりをお願いします」
「なるほど」
付いてた辺りを見ていると扉が開く音、そこにはコハクが来ていた。
久しぶりだ、偽造パスポートを作ったり、修行してるって聞いていたが変化はあまり見られない。ぱっと見の変化は服装が綺麗になってるくらいか。
「すみませんっす」
「コハクくん、待ち合わせは何時でしたか?」
「い、一時間半前っす」
頭を下げながら小包を手渡すコハク。それを開けながら「そうですね、予定通りに持ってきたことですしこれ以上不問にはしますが」言い終えると開演時間を指さされ、わざと早く時間を早く伝えられたことを知り、地面にへたり込んでいる。
入っていたのは黄色に輝く小鳥がおとなしく立っていた。
「全く、来なかったら開演延期でしたよ、黄の頂点」
「似たようなことは君もできるだろう」
「私はルビー姫、メインヒロインですから」
そういいながら衣装に服装が切り替わっていた。
「やれやれ、これからしばらくは赤の動きがが活発になりそうだ」
ぴょんぴょんは跳ねながら次は自分に「君とは初めましてだね、先に礼を言っておくよ。君の存在で僕では救えなかった子たちが救われそうだ。ありがとう」
返事を聞くことなく次はローズのほうへ向く。
「ローズ、ごめんね。僕も赤も君のことはいつも見ていたよ。ずっと盛り上げようと色々ありがとう。映画の新作、待ってるからね」
「は、はい。ありがとうございます」
次はコハクへと動いていく。
「コハク、この二日間。短い期間で教えられるのはほんの少しだけどうまく活用してほしい。僕は君たちの帰りを待ってっているからね」
再びネルの方へ向き直り「さて、時間もそろそろだ。君たちは気にせず楽しみなさい、それが僕の楽しみだからね」羽を広げると離散した。
「では、そろそろ行きましょう。二人とも、下のステージは黄の頂点が外への衝撃を絶対に防ぐから、跳弾も誤射も気も気にせずやりなさい」
「わかりました」
「じゃあ、始めるよ『ブレードガンナー リブート』のお披露目を」




