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僕は君たちが好きなんだ  作者: セルセ
ゴールディ編
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10/29

開演

 今回のステージは前見たときより少し大きく立派になっていた。

 黄の頂点が守っているという意味がそこに近づいてようやくわかった。黄色があるのだが、関係ないものは触れることすらできない。そのためステージには誰一人として立ち入れない。

 はじめに降り立つのはローズ。そして前も見かけたやられ役の人たち。


「ようやくここまできたわ、早くルビー姫を返してもらうわ!」


 5人のやられ役たちは動き周り、彼女の銃撃とナイフでやられていく。


「こうして、ようやく彼女はルビー姫のいる場所へたどり着いたのです」


 ネルの声が響く。同時に黄色の結界が真っ黒に染まり外から見えないようになり、小声で「早く奥の立ち位置に……良いよ」声に合わせてローズに対してネルの前に立ちふさがり、立ち位置へ。

 黒から透明へ再び外から見えるようになった。


「ようやくたどり着いたわ、ルビー姫を解放しなさい!」


 急に静まり返った。5秒ほどしてネルが小声で「セリフ」と何が起きてるのか察した。というかそれは聞いてない!

「何言えば」と小声で返すと「続けて、小娘ごとき――」とネルが小声で教えてくれる。


「小娘ごときが、雑魚を、倒したくらいで、いい気になるな!」


 ネルの言葉に合わせ、区切り区切りに精一杯、ギャラリーもその違和感は気づかれていて笑い声がちょくちょく聞こえてきて恥ずかしい。 

 突然の銃声、自分の顔の横をかすめ、後ろにいるネルの身体をすり抜け、結界にあたるとバリバリと音をたてながら発光しながらステージ上に落ちた。

 明らかにさっきと空気が変わる。実弾であることにギャラリーは気づき熱気が帯び始めた。


「小娘扱いしたこと後悔するわよ」


 銃口にキスをしながら煽ってくる。

 後ろから「彼女があれをやるまで適当にお願いします」

 ネルの言葉に頷いて大剣を構えた。

 それに合わせて走り出す彼女、こちらに向けて銃弾を二発。

 対して自分は大剣を盾にしながら射程内入ったら大げさに横薙ぎ、後ろにステップして回避しながら銃口がこちらに向いているのが見えた。

 それを避けるように体勢を低くして近寄り、下から上へと切り上げる。

 キンっと甲高い金属同士がかち合う音。大剣とナイフが重なり、彼女の体は浮いた。

 宙を舞う彼女の手には銃口が向けられ、連射。

 正確に自分へと放たれる弾丸に大剣で受け止めるのに精一杯。

 

「さあ、もうこれで最後!」


 セリフと共にあの構えを、彼女の腕に赤い光が帯びていた。

 見覚えはある、『シアン闘劇』で、異常に固いと感じた黄の力と同じ空気。

 明らかにやばそうな雰囲気にネルのほうを見たが。小さく「がんばれー」と囁きながら目を逸らされて予定外なのは理解した。


「赤く輝き、白く煌めく衝撃があなたを倒す力となる、『ローズキャメロット』!」


 言い終えると同時に始まる。

 速い、以前より倍早くなったかと勘違いするほど。初撃、大剣に同時に襲う銃撃と剣撃は受け止めきれず、身体ごと押されるように地面を滑る。

 続く二撃目、三つの弾丸。

 足が動かない、破れかぶれに大剣振り上げる。下から胸、喉の銃弾は切り払う。頭は反射的に反らしてかすめる程度に避けきれた。

 ミスだ、突きをしないといけないのに剣を振り上げたままになっている。

 

「3、3よ」

 

 ローズから聞こえた言葉、意味はわかった。そのパターンなら繋がる。

 記憶を頼りに彼女へ向けて振り下ろし、彼女はナイフで真っ向から受け止め金属音が響く。

 大剣の威力にひるむ彼女に向けて、もう一度振り上げ、叩きつける。

 だが、そこには誰もいなかった。

 彼女は二撃目の隙に後ろへ飛び、すでにこちらに向けて走り出す。

 大剣はステージにめり込み、引き抜くことはできない。手を放して彼女に立ち向かう。

 

 「食らいなさい!」

 

 声と共に銃弾が一発、胴体に向けた弾はかわし、地面に突き刺さった大剣を橋に渡って迫ってくる。

 近づいてきた彼女に向けて拳を振るうが、空振り。自分の身体を飛び越えるように飛んで後ろへ・

 止め、背中に銃と剣がバツ印に刻む、

 実際来たのは背中に火薬の衝撃が三発。それに合わせてうつぶせに倒れた。

 背中がちょっと涼しく感じる、服が少し破れたようだ。

 聞こえるのは歓声、それによる振動を感じる。やり切った充実感はすごくあった。外の声が徐々に落ち着いてきているが、いつ起き上がればいいんだろう。

 足をけられる感覚が、立てということか。

 起き上がると溢れかえってる思うほどの人だかりがこちらを見ている。始める前よりもかなり増えている気がした。


「えー、本日の『ブレードガンナー リボーン』のお披露目を終わります」


 ローズの言葉に「えー」と残念そうな声。


「ごめんねー! 明日は試合だから本当にここで終了なの。でもね……」


 急に息を大きく吸い込む、こっちにもはっきりと聞こえるほどに大げさに。

 

「『ABCオーケストラ』、見てるかー!!! 見てるなら返事しろー!!!」 

 

 彼女の言葉に手を振ってぴょんぴょんと跳ねてる三人組。周りのギャラリーが空気を読み、ステージまでの道を作られ、笑顔でこちらへ向かってくる。

 その間にネルが彼らのことを小声で説明してくれた。


「先頭に歩いてるのがバッド、傍にいる男の子がクラッシュ、女の子がオーロラです」


 あの三人が『ABCオーケストラ』か。見た目はバッドは老け顔でノリの良いおじさんっぽい雰囲気。傍にいる二人は跳ねながら楽しげにくる様子だけで活発な明るい少年少女というのがわかる。


「どう? 新チームをみて怖気づいかしら」


 彼女の言葉に三人ともが楽しそうに笑みを漏らしており、バッドはわざとらしく拍手をしながら煽り始めた。

 

「いやー逆に燃えたね。いきなり俺たちに挑むなんてな。もしかして、舐められてる?」

「バッド以外は私以下の雑魚! だからね」


 ギャラリーも「おー!」と声を上げてどう返すのか注目を集めた。

 バッドはゆっくりと何度も頷いて、彼女の声を受け止める。

 

「まあ、否定するつもりはないが――」

「おい! ふざけんな!」

「なに認めてんの!」


 オーロラとクラッシュが彼を殴る蹴るの暴行が始まった。それにもめげずこちらへ人差し指を向けるが攻撃は止まらない。


「いたっ、邪魔すんな! くっ、彼氏が出来て気が強くなったな、嬢ちゃん」

「ちっ、違うわよ! 友達! 友達! 友達だから!」

「なんだよ、これくらいで焦るなんて可愛らしいところあるじゃねえか」


 バッドは反応が予想外だったのか、やたら手を振って話を切り替えろとアピールしてくる。


「この話はおしまい! 終了! 『ABCオーケストラ』今回の挑戦はいつも通り全力で挑ませてもらう。あなたたちはどうなのかしら」

「もちろん、本気で潰させてもらうぜ。ローズちゃんは雑魚だし! 謎の新人ランドくんの評判は聞いてるが俺にとっては雑魚に変わらん。ただ、赤の頂点はずるくないか?」


 視線がネルへと注がれる。

 対して彼女表情は笑顔、それも嘲り見下したような笑み。


「あらあら、バッドくんは負けるのがそんなに怖かったのですねえ。その言い方だと負けても私がいたから? そういう言い訳でごまかすんですか、ねえ?」


 対してバッドは頭を掻いており、そばにいるクラッシュが「言われてるぞ! 早く言い返せよ!」と煽り「なんでネル様を煽るかなぁ」とオーロラは呆れている。

 言葉を思いついたのかネルに向けて人差し指を出して、隠した。

 

「ごめんなさい」


 頭を下げた。

 その言葉はブーイングの嵐。その最中ネルが声を張り上げた。


「許しましょう! もと私も手加減! しますから。負けないようにね、雑魚のローズちゃん、手加減してあげている私、謎の新人ランドですが」

「わかりました、精進いたします。せっかくだ、新人君もなんか言っていいんだぜ!」


 唐突に話を振られてしまう。ネルとローズの方を向くと頭に衝撃。紙と石ころ。中には『あおれ』と書いているだけ。

 煽れと、でもこの熱気だと何も言わないわけにもいかない。

 

「ここで出た言葉を借りれば、俺はみんなよりもっと雑魚になる。だけどな『ABCオーケストラ』、俺に負けたらこれからそのもっと雑魚以下なるのを覚悟しろよ!」


 少し間があった、笑い声が響く。

 これで良かったのだろうか。


「いいぜ! 負けたら『ABC雑魚』に改名してやるよ!」

「なに勝手に決めてんだよ!」

「バカバッド! もしなったら解散だからね!」


 そばにいる二人は本気で嫌なのかまた殴る蹴るの威力がさっきより強い。

 ローズが一つ深呼吸、終えると少し不安げな表情で自分とネルを見ていた。

 ネルが近づいて肩を叩いて先頭に立つ。


「少し長くなりましたが、オチもついたところで終了となります。本日は大勢集まり、私も嬉しく思います。赤の頂点として、明日と続く大舞台は黄の頂点と共に非常に楽しみにしております。皆様、全力で楽しみましょう」


 頭を下げ、拍手が響く。

 自分はその言葉や拍手よりもローズが堪えるような表情で鼻をすする音を静かに鳴らす様子が脳裏に焼き付いた。

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