計画
ローズは赤の力を吸い取ってもらい落ち着いたところでネルがこれからのことを説明し始める。
「さて、少し落ち着いたとこたところで、まずは明日の君たちの動きお伝えします」
「あ、あの。明日は昼頃予定がファンサがあって」
「わかっていますよ、そこに私も参加しますから」
「はい? ネル様が?」
露骨に嫌そうな声でローズが問いかける。
「な、何でそんなに嫌そうなのですか!」
「えーっと、ネル様。それはギャラリーとして?」
「違いますよ、お姫様。ルビー姫です」
そういえば、あの映画。お姫様を救いにいくお話だったな。
「えぇ、そこですか」
「衣装だって、ほら」
薄いピンク色のドレスにパッと服装を変化。ローズは一瞬驚きの表情をし「へえ」と感心するように言葉を出るも、表所は曇り眉間にしわが寄っている。
「ネル様って、『ブレードガンナー』に興味あるような感じでしたっけ」
「もちろん……今は」
その言葉に納得はいかず、少し頬を膨らませて不満げな様子が見て取れる。
「何か意図がありますよね、ネル様のことですし」
彼女はこちらを指さし「クロウくん」次にローズに指が動き「ローズちゃん」最後は自身に指を向けて「私」
「三人で明後日の試合を出場します」
「ネル様は運営ですよね?」
「偉ければ、何でもできますから。私たちは『ブレードガンナー リブート』として『ABCオーケストラ』と組み合わせが決まりました」
嬉しそうに話すネルに対して、左手で頭を抑え右の手のひらを見せるように腕を伸ばして「待て」と呪詛のように呟いて、徐々に声が大きくなっていく。
「待ってネル様! 何で次の予定しているタイトル名を、まさか日記を見たんじゃないですよね!」
「読みました」
「ほかのページも?」
「すべて目を通しましたよ」
ローズは頭を抱えている。それをしり目にネルはおもちゃを見つけたように目を細めた。
「不思議だった、救世主様みたい、力がわいてきた、怖いけど決めた、私は――」
さえぎるように銃声、ローズは真上に向けて放ち、ネルへと銃口を向けた。
「それ以上続けてみなさい! 撃つよ!」
「……組んで」
再び銃声、容赦なく彼女の顔面に向けて放たれたが、すでに彼女の手はそこにあり銃弾は掴んで床へ落とした。
「本題に戻すからもう撃たないように」
ため息を少し漏らして「はーい」子供っぽくいいながら銃をおろすた。
「試合中、事故が発生します。そこに乗じてコハクくんが用意した偽造パスポートで私たちは脱出します。逃げる最中は私は来るであろうキングの足止めをしますので傍にはいないのでコハクくんについていってください」
「かわいそうに、キング」
「あら、分が悪いのは私のはずですが」
「分かってるくせに」
ローズの言葉を無視するようにこちらに視線が向いた。
「脱出したら私たちは黒の頂点の住む『黒の城』へ向かいます」
「そこにアルクが居るんですね」
「今はいる可能性が高い、実際に私も見たわけではないので」
「わかりました、ありがとうございます!」
そこにアルクが。目覚めてここに来たときはどこにいるのか分からず、途方の無い旅になるのかと思ったが、一気に核心へ近づいて気分が高ぶる。
「良かったね、クロウくん」
「あぁ、ありがとう」
笑みで返事を返すと彼女はネルへ顔を向けた。つられるように自分もネルのほうへ向く。
「私から以上になります。質問は……ローズちゃんがありそうですね」
「当たり前です。明日の昼にやるファンサ、ネル様も参加ってことですけど、何かするつもりですか」
「いえ、立っているだけですよ。下手に演技したらローズちゃんが怒りそうなので」
ローズは納得いかなそうに彼女をにらんでいる。そして彼女の視線はこっちに向いて「あっ」と思い出したように声を漏らしていた。
「言い忘れてました。明日からクロウくんはランドという偽名になります」
「え? でも試合をして知ってる人いっぱい居ますよ?」
「そこは宣伝も含めた刷り込みを、クロウという人がいるすごく面倒なことになってしまうので、協力してもらいます」
「は、はい」
拒否権はなさそう。ただ、自分が思っていた以上に大事になってきているのが伝わっていく。とにかく脱出する、ぐらいに考えてたのに仲間ができて巻き込んで街も巻き込んでいくなんて。
「期待の新人、前期A4、赤の頂点が『ブレードガンナー リブート』として参戦。ネームバリューとしても悪くはないと思います。明日はステージの周囲人いっぱい盛り上がり、次の日は盛り上がる最中に脱走。我ながらいいですね、刺激的で」
「暴動になったししませんよね、ネル様。帰ったら家が無いとか嫌ですよ」
「そこは……」
彼女の言葉が止まった。困っているというより、悔しそうに拳を震わせていた。
「大丈夫、黄の頂点がやるさ」
急に機嫌が悪くなり、口調が悪くなった。
「珍しいですね、黄の頂点が動くのあんまり聞きませんし」
「色々あるの、今回のことはお前を中心にみんながめちゃくちゃに動いてる。退屈だった反動だろう」
自分を指さし圧をかけてくる。
「はい、わかりました」
返事を聞くとネルの表情が穏やかになった。
「それでは、このあたりで解散しましょうか」
頷いて返事を返すと隣にいたローズが「明日朝の時間にきて、直前に一度練習したいから」耳打ちに「わかった」と、小さく返事を返す。
意識がネルのほうへ向くと彼女は目を細めてこちらを見る。
「距離感、意識しないと危ないですよ。アルクちゃんとか、ね」
急な忠告、ローズが自分の代わりに返答する。
「ち、ちがいますよ、練習しておきたかったから明日来てっていっただけで」
「まあ、いいでしょう。見られて困るものがあるというなら一緒に出口まで案内したほうがいいんじゃないですか?」
「は、はいわかりました! いくよクロウくん」
焦って立ち上がると腕を強く引っ張り来た道を足早に階段を上り、散らばるゴミをけり飛ばしながら出口へとたどり着いた。
「今日は、はぁはぁ。本当にありがとう、明日もよろしく」
「あぁ、またね」
彼女の後ろにはネルが立っており、気づかず扉を占めていく。直後「キャー!」と断末魔が聞こえ、ネルが彼女に何かを言っているが扉越しには聞き取れる感じではない。
気にはなるけど、それ以上にネルの言った距離感という言葉が、自分の中で刺さっていた。




