ブレードガンナー
白い光。
またこれか。
今回は『シアン闘劇』の内容が追加されていた。
どういう理由でこれをみられているか分らないが、これが起きている間は意識がぼーっとして動けなくて退屈。
「ふう、予想外だった」
白い光から応援の言葉を貰った。結局あなたは一体。
〇 〇 〇
ここは、コハクの部屋か。
いつの間にか寝ていたようだ、直前は何をしていただろうか。
確かコハクを殴って赤の頂点、ネルにアルクの場所を聞こうと取引を。ぷっつり記憶がないな。よく見かけるってコハクが言っていた場所を回ってみるか。
立ち上がろうと思ったがうまく立てなかった。右手の鉄板が無くなっていた。
「コハク! いないのか」
反応なし、上体を起こして周りの様子を見るが誰もいない。さてどうしたのものか。なぜ義手が、あれがないと自衛するものが一切無くなるのだが。
ドンドンドン!
叩くというより殴るってるんじゃないかと思えるくらいの扉をたたく音。奥からこもった声が響く。
「チームクロウ! いるよね! わかっているんだから!」
知らない女性の声。赤の頂点とはまた違った若い感じ。
こちらの返事など聞く耳持たぬまま容赦なく扉は開かれた。
「鍵かけてなかったのね、あなた! 返事くらいしなさい!」
現れたのは女性、また全く知らない女性だ……と思ったのだが違和感を覚えた。見覚えがある気がるけど思い出せない。
服装はドレスっぽいんだけど首周りやへそ、足はふともものあたりまで肌が見えていて身軽そうにも見える。ウェーブかかった赤茶色の肩までかかった髪がきれいに揺れている。
腰には剣と銃を据えていて、ただの訪問客には見えない。香水をつけているのか柑橘系の匂いが充満した。
不思議なことは既視感があったこと。つい最近じゃない、もっと前に彼女を見たことがあるような気がするが理由が思い出せない。
ブーツの音をカツカツを響かせながら近づいてくる。立ち止まると腰をひねるようにしながら指を指してくる。
動作一つ一つが不思議なほど大げさ、映画っぽさ思い起こさせた。
「あなた、私と組みなさい!」
「誰?」
「私を知らない? この『ゴールディ』で私を?!」
胸に手を当て驚く彼女ははやり動きが激しい。顔を近くでみて、思い出してきた。映画の女性だ。アルクが好きだったアクションもので。
「本当に私を――」
「『ブレードガンナー』だ、思い出した!」
すっきりした! 名前が出てこないけど。
「あら、知ってたのね。『リベンジ』と『アウェイク』も当然見てるよね?」
腕をバツに交差させて剣と銃を構えるポーズを流れる様に決めていく。
思い出すなあ、アルクと映画のワンシーンをひたすら真似して、アッシュと三人で今年の頭にやって以降やらなかったな、何でだろ。
「ちょっと、せっかくしてあげたのに何か言うことと無いの?」
「あ、ああ! 感動したよ、本物がここにいて。アルクっていう友達がすごい好きで彼女にも見せたかったな」
「ふふん、他にも私のファンがいるのね。いいわよ、いつでもファンサしてあげる」
その言葉に今の問題を思い出してしまい「そう、だな」歯切れ悪く返事をしてしまった。
「何よ、友達なんでしょ? 喧嘩でもしたの?」
最初の印象と違って、話を続けていくとすごく真面目に話を聞いてくれて、ほっとした。
「遠くにいるんだ、とっても」
「大変ね、それでこの前の試合で無茶を?」
「そう、一刻も早く『ゴールディ』を出てアルクに会いに行かないといけないんだ」
「『ゴールディ』を出る?」
「うん」
彼女の表情は微動だにしなかった。瞳は動いている、自分のあらゆるところを見て判断してしるのだろう。
「クロウくんは……」
「はい」
「どうするつもり、これから」
「とりあえず、赤の頂点、ネルさんを探そうかなって」
「ネル様と、さっきの『ゴールディ』を出るってのと関係あるよね」
「うん、あってるよ」
彼女は瞳を閉じた、困惑するように唸り声のような音をもらして考え込んでいる。そしてため息をもらすと顔を上げた。
「なら、なおさら私と組もうよ! 元A4だよ!」
「えっ、そうなの?!」
「本当になにも知らないのね」
どんどん言葉の勢いが強くなっている気がする。感情がこもりすぎてるというか、熱気がすごいというかそのまま爆発しそうな勢い。
「それは、ごめん。でも何で俺と組むなんて――」
「昨日の試合を見たに決まっているじゃない!」
「は、はい」
「初心者狩りマッチで逆転、盛り上がらないわけないじゃん! しかも実際はあのまま続けたら負けじゃん! あんな口八丁で負かすなんてもう、最高じゃん!」
やばい、どんどんと距離を詰めてくる。容赦なく、肩をつかまれ駄々をこねるように揺らされる。言葉遣いも子供っぽくなって色々と雑になってて怖い。
「みんな待ってるだよ! 次の試合をさ! だから、組もうってー!」
「ローズちゃん、もうやめましょうね」
ローズの後ろにネルさんが現れた。扉も開ける音もなく、初めから居たかのように。
助かったけど、どうやってここに。
ネルは彼女の額に手を当てている。赤らめていた頬も落ち着いた様子。
「全く、赤に当てられたらすぐに熱くなってしまうんだから」
「でもネル様、あんな赤を受けたら誰だって気分は高鳴りますよ」
「そうですね。分かりますが、いつものやるのでしょう。その後にしましょう」
「はい、またくるからね」
こうして嵐は去っていく。すごい疲れた、こんなにテンション高く言い寄られたのアルクに『ブレードガンナー』ごっこを誘われたとき以来だ。
「クロウさん、『ブレードガンナー』って『虹の箱舟』では流行っていますかね」
「はい、自分は一作目みてないけれど、銃使う人はみんな見て真似してますね。友人も銃を使うんでみんながっつり見てます」
「えっ、本当にそんな感じですか?!」
「参考になるとか言ってたかなあ」
「参考になる、か。言いえて妙ですね」
「それは、どういう?」
「気にしないでください。さてそろそろですね」
彼女は入り口を見る。するとタイミングよくノック音が響いた。
まるで自分の家のように受け取り、長方形の箱を重そうにゆっくりと運んでくる。
「ふう、私からのプレゼントです。最高級品です」
箱の中には新しい義手が。確かにこれは明らかに高級感がある。表面の塗装といい、指のパーツ一つ一つの形状がなめらか。
「いいんですか、こんないいものを」
「プレゼントと言っているでしょう。どうぞどうぞ」
「よし、それじゃ」
「えっ、ちょっと――」
持ち上げて、一気に身体にはめ込む。身体にかちりと組みついた。つけた後の感覚がつながっている時のぬるま湯が身体に流されている感覚は相変わらず気持ち悪いが5秒ほどで指先まで稼働ができるようになった。
前のは5分くらいかかったのに、全然違う。最高級というだけはある。
「もう大丈夫なのですか?」
「はい、これすごいですね、すぐに動かせるようになったし、動きも軽く感じますよ」
「そういうことじゃなくて、痛みとか拒絶反応とか」
「指先に何か行っているなって感覚はいつも通りありましたが、問題はないです」
「そ、そうですか。さっきの箱の下に大剣と聞きましたのでそちらもどうぞ」
二重底になっていて、そこを開けるとこれまた高級そうな片刃の大剣が。
「本当にこんな良い物いいんですか」
「ええ、もちろんその分しっかりと働いてもらいますよ」
「うっ、はい」
自分の反応に嬉しそうに笑みを浮かべる。
「では、私、いえ私たちはあなたと『ゴールディ』を脱出します」
「……えっと、ネルさんも?」
「コハクくんもいますよ。あとはローズちゃんも誘えるといいのだけれど」
記憶が飛んでから一体何が起きたのだろう。何か、色々とことが大きく進んでいる気がする。
「待ってください! コハクがそこでなぜ」
「彼は、君のために儲けたお金すべて使て偽造パスポートを作っています。そして君のために修行も」
「どうして、そこまで」
「色に当てられた。簡単に言えばそれだけ。みんな期待しているのですよ。彼も私もローズちゃんも。だから、君も迷惑かもしれないが頑張ってほしいのです。アルクちゃんを助けるために、私たちを利用するくらいの気持ちでいいのですよ」
「利用とかはできない、友達とか仲間とかそういうのじゃダメかな」
彼女がいきなり近づいて頭に手を伸ばしてくる。昨日みたいに何かをされるかと思ったが、撫でられてしまった。
「クロウくんはかわいいですね。良いですよお友達になりましょう」
「なんか子供扱いされながらだと納得ないなぁ」
「私からすればみんな子供ですよ。優しいのもいいですが、それで傷つけ傷つかないように気を付けてください」
撫でるのをやめ、離れてくれた。
撫でたのが楽しかったのか、いつもの笑みが楽しげに見える。
「脱出のタイミングは二日後です。それまでにローズちゃんもお友達にしてくれたら助かります」
彼女が急に赤い煙になり姿を消した。
そうやって移動してたからいたことに気付かなったのか。
やることも何かあるわけではないし、ローズを探してみるか。




