エピローグ 1-3
あれからもう10日は経った。
僕は黄の頂点、鳥の姿で今日も島を見守っていく。
身体を分けて情報を集め続ける自分の分けた身体。
さて、最初は一番近くの赤の頂点の妹、ネルの所に。
「あーもう! しつこい!」
彼女は叫び声をあげていた。
彼女の部屋、机の上に山積みの紙は確認してはゴミ箱へと突っ込まれていく。
「機嫌が悪そうだね?」
「黄の頂点、お前も少しは手伝ってはくれないか」
「デスクワークはちょっと、情報収集が仕事なので」
「なら教えてくれ、アイツらはいつ帰ってくるんだ! 私だけが帰ってきたから延々とローズちゃんとクロウくんがいつ帰ってくるのかと意見書が届き続ける」
「君だけ帰る決断を最終的にしたのは君だから――」
「聞いたことだけ答えろ」
首を掴まれた、これはやばそうだ。
「分からな――」
連絡が途絶えたようだ、
やれやれ。僕も原因の一因なだけに少し罪悪感を覚えるよ。
次はコハク、彼は仕事をしていたはず。
排水溝が詰まっているとか、街灯の明かりが消えているといった苦情の対応、ネルの小間使いとして頑張っている。
ちょうど街灯の交換をしているようだ
「久しぶり、コハク」
「黄の頂点様?! 珍しいっすね」
「気まぐれにみんなの様子を見てみようと思ってね。それにいてもよかったかい、これで?」
「良いっすよ、むしろありがたいっす。雇ってくれて」
「脱走に使ったお金だって、返却するつもりだったのに断られるし。あれだけあれば悠々自適に暮らせただろうに」
「ダメっすよ。あの旅でみんなの強さを知ったっす。だからやれるところまで頑張りたいっす」
「君がそういうのであれば、ネルがおかしなことを言い始めたら僕に伝えてね」
「わ、分かりましたっす。最近ストレスすごいっすから」
うん、ちょうど僕も一人やられてしまった。
「それじゃあ、またね」
コハクは手を振っていた。
彼にとってこの冒険はいい経験になったみたいだ。
さて、次は『虹の箱舟』に行こうか。
空から中へ行こうと思っていたら、上空から青の頂点と白の頂点が玉の姿で『虹の箱舟』を建物の外から眺めているように居た。
「珍しいね、いつもは建物の中でうろうろしてて見つからないのに」
「黄か、久しぶりだな」
「誰かに用事でもあったかい? 赤の頂点が彼らの様子でも頼まれたとか」
「ふふっ、よく分かっているじゃないか」
「まだアッシュは回復しきれないからな、あと10日ほどはかかりそうだ」
「分かった、伝えておくよ。君たちはここで何をしていたんだい?」
二人は見合わせるように玉が動く。
「白が皆のことをどれほど好きになれたかと言い始めてな。空から眺めて確認をしていた」
「それはそっちからだよね! 僕はみんな好きだって言っただけさ」
「いいや、白が最近クロウやアルクが構ってくれないという話から始まったのだから君が始まりだ」
「ずるいなぁ、まあそんなところだよ。君はどうだい?」
いきなり話を振ってくる。相変わらず好きという言葉が好きだね。
「好き、か。あまり考えたことはないな」
「なら、中に会って確認すればいいさ。ローズは中に入ればすぐにわかると思うよ。アッシュはクロウがいた病室クロウとアルクは……まだ帰ってきてないね」
急に声のトーンが下がる。
白が落ち込むなんて珍しい。
「普段だったらもう数分で帰ってくるはず、でもどうだろうなあ」
「放っておけ、落ち着くまで見守ると決めただろう」
「だけどさあ、この前クロウ睨まれたんだ。怒っているクロウなんて初めてで僕は戦慄したよ。いつもなら面倒くさがりながらも聞いてくれるのに」
「それはタイミングを考えないからだろう? 黄の頂点、キリがないから行っていいぞ」
「分かった、ありがとう」
陽気な白がネガティブなのは初めて見たかもしれない。
『虹の箱舟』の中へ、中は白の力の明かりが照らして、すごく見やすい。だが、正直まぶしい。『ゴールディ』もこれくらい明るくしたら治安がよくなるのだけど、まぶしいって苦情になりそうだ。
入ってすぐ、人だかりになっているところがあった。その中心に赤の力を感じた。
ローズだ。
射的か、青の力が妨害して入りづらい。少し離れたところで、黄の力を放ってみる。
数人が反応した、目立たない程度のつもりだったが、優秀な人が結構いてうらやましいな。
彼女も少し遅れて振り向いた。
「あれ? 黄の頂点様! あっ、ちょっと――」
大声で名前を呼ばれ、警戒、困惑、畏怖と様々な疑心の目が向いた。
さすがに目立つのは良くなさそうだ。少し離れたところで、ついてきている人はまだいるがここらへんで話そう。
「ダメだよ、こっそり来ているんだから。周りの子がおびえてるよ?」
「すみません、珍しくてつい」」
「まあ、良いさ。様子を見てきただけさ。元気にやっているみたいで何より」
「あはは、それなりにね。まさかネル様が何か?」
「あー、そっちは、うん。そろそろやばいかも。別れ際の一発が結構効いてね」
ネルが作ったことは間違いない、一発の赤い弾。そこから放たれたのは赤い粉は『かならずかえる」という文字が観客には見えるようになっていた。
そこへ勝ってきたのがネルだけ、こうして彼女への業務妨害が始まっている。
「やっぱり、そうですよねぇ」
「今は気にすることはないさ、もう少し頑張るよ。君もまだ途中なのだろう」
「はい、まだここでやりたいのっで」
彼女の言葉に周りの子たちもほっとした表情。
あの映画は人気あるのは知っていたけれど、ここまでとは。これはうかつに帰ってくれとは言いずらいな。
でも、正直な話、赤の妹を抑えきれるかは自信がない。
彼女の肩に止まる。周りに聞こえないように小さな声で彼女に伝えよう。
「止められなかったら、ごめんね」
「あはは、わかりました。頑張ってください」
彼女の言葉を聞いて、飛び立つ。
向かう先は病室へ。彼は来ることを気づいていたようで上体を起こしてこちらを向いていた。
彼の眼は黒い瞳になっており、治療は進んでいるようだ。
「おや、起きているのかい」
「彼女の声がこっちに響いていたから、どうしたんすか急に」
「君たちの様子を……方便で、僕の相方が君たちの訪問を待ちわびていてね」
「相方? あぁ……原因はあれっすよね。『シアン闘劇』の」
「そうだね、君も見ていたから分かるよね」
「当時は意味不明でしたけどね。そのあとキングと戦わされるし、クロウは偽名で隠蔽されるし良いこと一つもなかったすよ」
「実際、あの時クロウのことを知った場合どうなっていたのだろうか」
「それは、クロウを捕まえて……俺とバロンさんでアルクを……だからあのことはもう気にしてないっすよ。ローズちゃんも俺の彼女なわけだし」
ローズのことで勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
ちょっとムカッとした。ネルが気に障る理由がわかるかも。
「治ったら、せっかくだからキングと再戦する?」
「無理! 無理っす! あんなのずるっすよ。倒しても黄の力を集めて復活するのは」
「あの時は君も大概だけどね、人が振るえるような火力じゃないよ、あの青の力は」
「そこは、それも含めて再戦は厳しいっすね。いい経験はありましたけど。あの時の自分は力に驕れていたから。アルクも含めて倒すことしか頭に入ってなかった大馬鹿野郎っす」
「今だから言うけど、バロンとはそこも含めてのあの襲撃だったんだよね」
「ですよね、全部がとんとん拍子すぎると思ったんすよ。腹は立ちますが、ありがとうございます。俺の身体を含めて、みんなを救ってくれて」
ふむ、噂通り上手だ。からかった僕が子供のようで恥ずかしくなるじゃないか。
「気にしないで――」
そう言いかけていたところでここへ来た理由を思い出した。
「ちなみに、ちなみにだけれど。最短でいつ頃治りそうなんだい?」
「あと10日って聞いていますが……ネルさんっすね」
「察しが良いね、君は。せっかくだからこっちへ住まないかい? ローズと一緒にさ」
「いいかもしれないっすね。最近あの二人がずっといちゃつきを見せつけられてムカついてんすよ」
おや、やんわり断れると思っていたから予想外
「二人? クロウとアルクのことで良いのかい?」
「はい、毎日様子見てくれるのは嬉しいっすけどね。ずーっとべたべたしてんすよ。この前はその情熱に当てられてかローズが赤の力を爆発したことも。動けない身体にあの光景は目に毒なんすよ」
「ふふっ、それは大変そうだ。さっきの話、返答をいつでも待っているよ」
いけないいけない、彼は話しなれているだけあって延々と話題が続きそうだ。




