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僕は君たちが好きなんだ  作者: セルセ
ゴールディ編
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2/29

シアン闘劇

「さて、『シアン闘劇』の説明するっすね」

「ちゃんとしてくれるのか」

「もちろんっすよ、クロウさんに勝ってもらわないといけないっすからね、まずはルールっすね。武器は基本何でも良いっす。殺しはだめっすよ。戦闘不能か降参させればいいっす」

 

 やっぱり戦って勝つのを競う会場か。


「次にランクっすAからEまでのまでに割り振られるっす。クロウさんは初参加なのでEっす。Aはマジで化け物っす、それを超えたらキングって呼ばれるっす」


 強さの区分けってことか、今は取りあえず気にしなくて大丈夫そうだな。 

 

「あとは、クロウさんに勝ってほしい理由は観客側はどっちが賭けをすることができるっす。俺はクロウさんに全部賭けるんで」

「俺が負けたらどうするんだ?」

「考えてないっすね、もしそうなったら身体を売るしかないっすかね。きつい肉体労働か……いやそっちはあまり考えたくないんで気にしないでほしいっす」


 さっき街を見回っただけでも治安が不安定なのはわかっている。色々あるんだろうな、ここだと。

 

「というわけで、俺たちの生活のためにも頑張るっす」

「他には?」

「ないっす」

「対戦相手は」

「あーまだわからないっすよ」

「いやまて、受付で誰がきそうかわかってたよな」

「それっすか、大丈夫っすよ。初心者狩りする有名なのがいるから当たるってだけっす! 『虹の箱舟』の精鋭だったら大丈夫っすよ」


 『虹の箱舟』それが自分の住んでいた場所、白と青の頂点の治める街の名前。

 こいつがおれが勝てると思った根拠はそこだったのか。


「ほう、俺が『虹の箱舟』にいたことを知ってるんだな」

「あー、服がそうだったっすから」

「で、その服は?」

「売ったっす。クロウさんを住まわすのにもお金、かかるんすよ」

「それは、そうだな」


 まあそっちは別にいいか。着てたら着てたで問題が起きそうではあるし。外か、どうにして出ないとな、最終的には。

 

「聞きたいんだが、『ゴールディ』から出る方法ってどうしたらいいんだ」

「あー、正直、普通に難しいっすよ。俺はパスポートを買えば正規で出れるんすけど、クロウさん、密入国っすからね、パスポート偽造して脱走ってところっすかね。それにはお金も必要っす。力押しで出ようとしたらキングに消される可能性が高いっすね。彼は警備も担当っすから」

「へえ、出れなくはないってことか」

「そのためにも『シアン闘劇』で勝つことを目指したほうがいいっすよ。買ったら賞金出ますし。クロウさんのことは……期待してるっすから。今日はこの部屋で休んで大丈夫っすよ。俺は用事があるっすから」


 彼はそういってすぐに部屋を出ていった。

 外に出ようにもまだ勝手がわからない、そもそもお金も持ってない。やることもなくその日は横になっていた。

 

 次の日、そもそも時間もよく分からず待っていたら彼が来たので二人で目的の場所へ。


「昨日は休めたっすか」

「お金もないし、やることがないからずっと寝てたよ」

「そういえばそうっすね。試合が終わったら賞金でるっすから。今回の対戦相手もそれ狙いなだけっすから大丈夫っすよ」


 色々説明不足が多い気がして正直信用はない、嘘はないだろうけど。

 『シアン闘劇』は今日も明るく照らしていた。扉の抜けて中に入ると「観客側はこっちなんで頑張ってくださいっす」と言いながら入ってすぐ左の階段を上っていった。

 自分は真っすぐ向かった先にある受付に。

 

「クロウで、登録してると思うのですが」 

「はい、チーム名クロウですね、現在一つ前の試合が始まる最中です。終わり次第開始いたしますので……少々お待ちください」


 昨日と違う受付の人が不思議そうな表情で奥ののほうへ。

 

「ねえ、これあってる?」

「ああ、それ。それで良いんだって」

「まじ? それでこの賭け倍率か、かわいそうに」

「でも、勝ったら面白くない? 実は賭けてんの」

「うーん、確かに。見たことない子だし、面白そうだから私も賭けちゃお」


 丸聞こえの会話、嫌な予感がますます増していく。

 聞かれてたことに全く気が付いてない素振りで戻ってきた。

 

「お待たせいたしました。それでは現在一試合目の際中ですので終わり次第、開始となります。それでは奥の扉へどうぞ」


 奥の扉へ手のひらを向けられ、中へと向かう。

 扉を抜けて少し進むと男性が一人だっていた。案内役だろうか、じっとこちらを見ていた。


「クロウです」

「一人なのは聞いていましたが、君は色々普通じゃないね。良かったよ」


 わからないが良かったらしい。なんか変な言い方だったような、一人なのは?


「もしかして、一人なのはおかしいですか?」

「何をおっしゃいますか、この試合は三人同士で戦うのですよ」


 ああ、合点がいった。だから受付の誰もが変な反応を。相手が初心者狩りらしいから組み合わせが良くないだろうくらいに思っていた。甘い、甘かったんだ。恩は感じているが、後で殴ってやる。 


「そうでしたか、それは賭けもめちゃくちゃでしょうね」

「ええ、上限までいったので観客も血走ってますよ。あなたが勝っても負けても荒れるでしょう」

「ですよね」

「実のところ、お遊びで登録しているような者なら止めるようにも通達が来てました。私はそれを見極めておりました」

「それで、どうでしたか」

「問題は無いような、あるような。もう取り消しております。色々普通じゃないと言ったでしょう」


 入った時、確かにそんなことを言っていた気がする。

 

「ここは色の力強い、それゆえに足がすくむ人が多いのです。あなたにはそれが全くない。弱くないのはわかるのです。ただ、あなたの色は一体どこに。ペンダントが青いがそれは関係なさそうで、だから楽しみにしております。あなたの――おっと」


 奥の扉から歓声が漏れている。静まり返ると扉からボロボロになっている男性が運ばれていく。

 

「もうすぐ始まりますのでこちらへどうぞ」


 男性に先導され奥の扉へ。

 

「質問があります、一人なのは何か理由があってことでしょうか?」

「友人に、騙されました」

「なるほど、では今の気持ちは」

「友人を、殴りたいですね」

「ありがとうございました」

「何で急に質問を?」

「すぐにわかりますよ」


 目の前には大きな扉と左右に二つのトーチ。それらが急に火をともすと同時に扉が開かれた。

 歓声、そして天井から会場全体に響く男性の声。

 

「本日の二戦目、数日ぶりの新人チーム、クロウ! 対してこちらも数日ぶりの登場、新人刈りでおなじみのチェリーキラーボム!」

 

 歓声とブーイングの声が響き渡る。自分に対しては応援もあるが一人であることが突っ込まれている声が聞こえる。対戦相手はブーイングが多く聞こえて評判が良くないようだ。


「チェリーキラーボムからはいつも通り賞金いただきます! と余裕のコメント。クロウからは……一人、だまされ? え? なるほど失礼しました。珍しいこともあるもんだ。新人クロウ、友人に騙され一人での参加だそうだ!」


 笑い声と怒声が響きわたっている。どう頑張っても自分に向けられていて辛い。


「そんな一人ぼっちの彼からのコメントは友人を殴りたい、だそうだ。無事に殴れるように祈ってるぞ!」


 呼応するように響く歓声に応じて会場中に集まっていく赤と黄の力があふれ、見えないほどはるか高い天井へと立ち昇っていく。

 感情で色の力は溢れていくというは座学で学んでいたがここはそれを利用して集めている設備でもあるのか。


「紹介も終わったところで、試合を始める! 3.2.1――」


 その時点で動きは始まっていた。相手は三人、一人は剣と盾持ちが正面に。他二人は銃器をこちらに向けて左右に広がっていく。


「ゴー!」


 同時に左右の逃げ場を防ぐように銃撃と手投げ爆弾の応酬。正面は、剣と立ての男が待ち受けている。

 問題は……武器だ。武器になりそうなものは義手につけられた鉄骨しかない。

 重さは少しあるが今まで使っていた大剣と比べればたいしたことはない。義手が少し重くなった程度。いつもよりも動く戦い方ができる。

 銃弾はさけるしかない、爆弾は時間式か、接触式かは判断がつかないため打ち返すのもやめる。

 逃げている時間もない、前へ進むしかない!

 足は前へ、男も気づいて武器を構えた。 

 正面にいる左に剣と右に盾を持つ男。喜ぶ顔が見え、すでに盾の持つ手が緩み、剣が襲い掛かってくる。

 

「ほらよ! チッ」 

 

 鋭い突き、動きはしっかり見え、走りながらステップでかわす。

 相手は慣れているであろうその動作、それゆえに最初の弾幕の範囲が感覚で分かっているゆえに止まっているその場所。それを超えれば巻き込まれないはず。

 すれ違い様に唯一の武器を一撃、失敗だ。隙をついたつもりなのに盾でしっかり対応され、金属音が響く。

 右腕に反動がきてしびれるような感覚が襲う。まだ大丈夫だがずっとこれで攻撃は辛い。

 相手を見る。剣を空に刺し、盾の衝撃に引っ張られて後ろに踏ん張っているがダメージは感じられない、しっかりとこっちを見ていて。

 ダメだ、力が足りない。武器の一つでも買っておけば。

 爆発音、爆弾が爆発したようだ。地面は砂、会場中が砂煙で舞っていく。

 

「見えない!」


 怒声がはっきりと聞こえた。

 相手にこっちがみえていない、正確には今は自分だけがあるはずのものがないことを知らないと。

 それは色。

 人は色と共生いる。常にどこかにいて人の身体で育ち常に漂っている。白、黒、赤、青、黄、緑の六色が確認されていて、意志疎通ができる強大な力を色、それが色の頂点と呼ばれるだったか。 

 色は常に人の身体を漂っている、砂埃があってもその色がうっすらと見える。

 じゃあ、自分は、集まらない体質……らしい。今までメリットなんて感じたことのないこの身体が初めて役に立つ。

 

「お前らしかわからんぞ!」

「俺の後ろあたりに適当に撃て!」


 もう遅い、指示通りに自分のいない方向へ二人が銃を向けているのが見える。厄介な銃持ちに狙いを定める。

 

「ん? なんかちっさい青いのが――」


 後頭部へ右腕の渾身の一撃。

 兜を付けてたし大丈夫だろう。青いっていいっていたが、ペンダントか。


「やばい、キラーがやられた!」


 静かに二人目へ狙いを定める。会場は結構広い、砂埃も薄くなり始めている。

 

「いたぞ!」

 

 見つかったが、間に合った。走る勢いで腹部を強打。ひるむ相手にもう一撃。

 しっかり鉄板はついてるけど、やっぱり反動がつらい。


「くそ、でも見えたぜ。青いのがお前だな!」


 砂煙がだいぶ薄まり、勝ち誇ったように言い放つ剣盾の男。しっかりと盾を構えながらじりじりと近づいてくる。

 武器がないなら、使うしかない。

 

「じゃあ、リベンジさせてやるよ!」

「はぁ?」


 言葉を理解できないまま腑抜けた表情に爆弾ををわざとらしく見せつけた。

 

「ほらよ!」

「やべえ!」


 叫びながら盾に隠れて爆発を防ごうとする。発生した爆風は一個だけのため砂埃は控え目だが、目を離しただけで視界不良のこの空間では致命的。

 明らかに見つけれていない男に直撃させた。

 

「チッ、効いたぜ!」 


 固い、とにかく固い。

 原因もわかっている、黄の力だ。

 この場所自体黄と赤の力が多い、時間がたてば黄の力が彼に集まってしまう。決定打がないという問題が詰みの段階へきている。

 ついでに奪っておいた銃も撃つ。

 

「いてえ、くそ! なんでもかんでも盗みやがって」 

 

 効いてはいるが、足りない。

 砂埃がまたやんでいく。幸いなのは相手が俊敏じゃないこと。

 別の方向でとどめを刺さないといけない。

 勝つ方法は戦闘不能か降参、勝てないと思わせたほうが勝つ。そのために砂埃の中、集められるだけ集めたものを奴に見せつけた。


「まだ、やるかい?」


 足元に爆弾が四つ、銃器がつ、左手に爆弾を二つ。この場所で俺が使える武器のありったけ。

 

「はぁー」

 

 大きなため息、男は尻もちをつき、武器を床に投げて両手を上げた。


「参った、付き合ってられっか」


 歓声と怒号が一気にい湧き上がる。空からは祝福してくれてるかと思うようにきれいに舞う外れ券の紙吹雪。

 俺にも彼らにも聞くに堪えないブーイングが溢れかえっていた。

 助かった、持久戦に持ち込まれたらこっちが詰みだった。

 帰ろうと歩いていくと舞い散る紙が顔にひっつき鬱陶しく思いながらも見ると『クロウE6対B4チェリーキラーボム』と素敵な組み合わせが書かれていた。

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