表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は君たちが好きなんだ  作者: セルセ
黒の城編
PR
19/29

決戦

 ローズとやりたい、つまり戦いってことか? いや、アイツの場合もっとわかりやすい意味で言っているはず。

 いつの間にか黒の頂点は背を向いていた。


「なに考えてんだ! お前が戦ってどうするんだよ! 誰のためにこんなことやってるって分かってんのか!?」

「そんな怒らなくてもいいじゃん! 掃除したり、お手伝いしたりで辛かったんだよ? ちょっとくらいご褒美くれたっていいでしょ?」

「あー、わかった。お前、ローズって奴と話したいだけだろ」

「えへ、えへへ、わかってんじゃん!」


 息の合った丸聞こえの会話が終わるとくるりとこちらに向きを戻し、ものすごく言いにくそうな声で「ローズって奴、こいつと話し相手なってくれないか?」と諦めたように疲れた声でお願いしてくる。

 彼の言葉にローズと目が合った。


「えーっと、どうしよっか」

「行ってくれ、じゃないと多分ずっとこの調子だから」

「わかった、頑張ってね」


 黒の頂点のそばを走り抜けるローズ、同時に「キャー、生ローズ様ー!」と声が響いた。再び後ろを向いた黒の頂点。

 

「気が散るから上いけ! 上!」

「はーい、こっちですこっち!」

 

 ため息をつきながらこちらに向き直った。

 

「おかげでようやくまともにやりあえそうだ。さあ、やるぜ。久々でうずうずしているんだよ」

「ああ、勝ったらアルクを返してもらうぞ」

「それは、どうだろうな。力づくで奪い返せばいいんじゃないか、わざわざ勝つって言わなくてもよ、救世主様」

「それもそうだな」


 ようやく戦いが始まる。

先に動き出したのは黒の頂点、黒い針を飛ばしてくる。銃弾に比べればだいぶ遅く感じる程度の速度、避けるのは容易だった。

 後ろから「待ってクロウくん!」とネルの声が聞こえたが、反射的にすれ違いざまに斬る。しかし、水を切ったような感触がして剣を突き抜けたように見えた。

 

「お前、色を使わず攻撃してどうする気だ? 変な奴だな」


 色を使わず? 言っている意味が分かっていない。

 

「今から私は君の武器になる、あとはコハクと二人でどうにかしろ!」

「は、はいっす!」


 ネルからもらった赤い大剣に赤い霧がまとわりつく。『パレッタ』に行く途中で見せたあれだ。


「なんだ? そんなことも知らず挑もうってか?」

「君らがグダグダするからこっちグダグダになっただけですよ」

「あー、確かにな」


 空を飛び、絶えず黒い棘を飛ばす黒の頂点。ローズがいればあの距離でも攻撃できるが、こっちは向こうの機嫌次第。

 

「張り合いねえな、このままだとジリ貧で終わっちまうぞ?」


 剣が震えた、小声で「不意打ちをする。君が突きをするとき赤い弾を飛ばす」ネルの声を悟られないように走り始める、勢いのまま壁をけって、斬りかかるふりを。

 

「へっ、足りないぜ」


 剣がもう少しで届きそうな距離で、煽るように上に行こうとしたところで剣を向けた。矢のように飛んだ赤い力は彼の体を半分に切り裂いた。

 

「よしっ!」

「やったっす」


 着地と同時に地面の刺さっていた棘がうねり始めた。

 

「急げ! コハクのところは何もないですよ!」


 彼の周囲は守っていたため周囲に円周状に何もない。隙間を走り抜け、間に合った。

 

「チッ、奥の野郎。面倒なことしやがって。んじゃ、二回戦かな」

 

 大型の人っぽい体になった。今度は普通に戦えそうだと思ったがネルの赤い霧が剣から消えた。

 

「はぁ……もうやめだ」


 ネルが姿を現す。不機嫌な時にする鋭い目をした彼女が足を貧乏ゆすりしながら上を、アルクたちがいるところを見る。

 

「ローズ! 降りてこい! 急げ!」

「待てよ、こっちは逃がすわけにはいかないんだがな」

「黒の頂点、前に会った時もそうだが、変だ、異常だ。姉と……スピルと何があった」

「……何もない」

「嘘だ。招待状、救世主。君がわざわざ形態分けして戦う。見た目も頑張りすぎだ。なぜ君はそんなに頑張るんだ? こんな茶番劇を」

「うるせえ、俺だってそんな時もある――」

「どうしたの? 急に」


 会話に割り込む形でローズたちが降りてきた。

 そばにいるアルクも雰囲気を察してかきょろきょろと不安そうにみんなを見ている。

 

「出るぞ、危険だ」

「えっ? えっ!? なんで帰るのっ!?」


 今にも泣きそうな表情で、目の前に彼女がいるのに、せめて彼女だけでも。

 

「クロウ! 早く! 危険だ!」


 ネルの怒声、鬼気迫る声は尋常ではなく、諦めることを決めた。

 でも、もう遅かった。 

 身体に衝撃、彼女は抱きついていた。

 謝ったらいいのか、励ましたらいいのか何を言おうか頭の中に駆け巡った。

 周りでいろんな声が聞こえてくる。

でも、自分には彼女の声しか聞こえなかった。

 

「これで最後だぜ」


 彼女の声だった。彼女の言葉ではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ