アルク
村に入るとすごく目立つ矢印の看板が立っていた。
大げさに描いてると思っていた招待状の赤い矢印まんまに右に矢印が向いた建物が経っている。そこまでしなくても見上げれば『黒の塔』は見えるのに。
「招待状の通りっすね。色々と」
「何であんなにでかく描いてるのかとおもったけど、確かに目印になるな」
「住民には特に変な動きとかはありませんね」
住民はこちらの入って来るのを見ているが、何かをしてくるわけでもなく、目が合ったら会釈されるので返していくだけ。違和感があるのは黒い装束を着ているくらい。
他に何かないかと矢印の看板を見ると黒い点のようなものが見えた。
「あれ、えっ?」
矢印の看板に小さな黒い何かが飛んでいくのが見えた。
「黒の頂点です。待ち受けているのは間違いなさそうですね」
それからは何事もなく黒の城までたどり着いてしまった。
遠くで見ると不気味だと思った『黒の城』は近くで見ると印象が変わった。
花がいたるところに飾られ、窓や扉が全開で開放的。朝の陽ざしが中に差し込んで神々しさを感じさせる。
「かなり前に見たときと全然違いますね、もっとぼろぼろで入りにくい印象だったのだったのですが」
「声聞こえない? 叫ぶというか喧嘩しているみたいな」
確かに、しかもこっちに近づいてきているような。
扉の向こうで黒い服の誰かがこっちに向かって歩いてきているのが見えてみんな立ち止まる。
「何で今換気してんだ! 来てるって言ってるだろ!」
「来るのは10時だから、あと15分もあるから大丈夫だって!」
「違うって、もう来てるってことをだな」
「そんなわけ――」
目があった、黒い服装以外は何も変わっていない。間違いなく彼女がそこにいた。
唐突な再会に、彼女は目を背け、入り口の大きい二枚扉をバンッ! バンッ! と大きく音を立てて閉めた。
扉は締まっても喧嘩は続き、声もしっかり漏れている。
「いるし! そこにいるよ!
「俺は最初から言ったぜ!」
「早く! 準備!」
そこで声は途切れた。
なんというか締まらない。でも変わっていない。黒の頂点とは子供っぽい喧嘩をしていたのが印象に残る。
「あの子ですよね?」
「はい、間違いなくアルクです」
「ふーん、何か騒々しかったね」
「明るすぎて気が抜けるっすね。黒の頂点と子供みたいな喧嘩して微笑ましかったっす」
「気を抜くのはまだ早いですよ、罠かも、しれませんし。うーん」
みんな困惑していた。あの雰囲気はいつも通りだからむしろ懐かしく感じるが、自分もどうしてこうなったか分からない。
扉を開け、中へ入った。中は綺麗に片づけれていた。何もない広間が広がっている。奥には左右に階段があり、見上げたところに大きい机のようなものがうっすら見える。
その広間の真ん中にアルクは立ってこっちを見ている。
近づくのを阻むように黒の頂点が上から現れた。
「よくぞ来たな、彼女を返し――」
「うっそ! ローズ様! あれローズ様だよ!」
言葉を遮られて、ゆっくりと後ろを向く黒の頂点、そこにはがローズを指さしてぴょんぴょん飛び跳ねて興奮している彼女がいた。
彼女の熱気にローズは「ははっ、すごっ」と苦笑いを漏らしていた。
そして、始まるのは二人の喧嘩だった。
「ばか、台本どうするんだよ」
「バカっていうほうがバカなんですー! バーカバーカ! ローズ様が、というかずるいぞクロウ! ずっと一緒にいたの!」
「待てって! お前が恥ずかしいからって――」
「わー! 黙れぇえ!」
身の丈ほど伸びた黒い力のナイフで黒の頂点は吹き飛ばされる。少し空気が引き締まる。明らかにやばいのが一目でわかる黒の力がそこにはあった。
「で? クロウ! ローズ様が何でいるの!」
「それは、友達になったというか、そんな感じだよ」
「ずるいよ! 変なこととかしてないよね! アルクのことはちゃんと言ったよね! 大ファンってこと!」
あっ、黒の頂点が戻ってきた。
「おい、何考えてるんだ!」
「うわ、もう戻ってきたよ」
「あーもう俺は知らねー、勝手にやってろ」
「はいはい、またあとでね」
あっかんべーしながらあしらう。
この子供っぽい感じは我慢し続けて限界になった時にわがまま言っていた時に似ている。
「ローズ様! アルク! アルクって言いますー!」
ぴょんぴょん羽ながら手を振ってアピールしている。ローズも手を振りかえすと「キャー! 手を振ったよー!」と歓喜で絶叫している。
「あはは、本当に大ファンなのね、でもどうするんだろ、これ」
それは確かに。これだとずっとこの調子で終わりそうにない。
「アルク! 結局どうしたらいいんだ!」
「へ? それは黒ちゃんから救って救世主に……あれ黒ちゃんは?」
「さっき追い返しただろ」
「あ、ちょ、ちょっと待ってねー。準備するから。おーい黒ちゃん。ごめん、出てきて! 緊張して焦っただけだからー!」
空を飛び回りながら黒の頂点を探し回る彼女。
「すごいっすね、遊びに来たのか戦いに来たのかわからくなったっす」
「うん、クロウくんが好きな理由もわかるけどね」
言い返そうと後ろにいるみんなのほうを見るとネルさんだけ目を細めてきょろきょろと周囲を警戒していてピリピリしているのが伝わった。
「ネルさん、どうしました?」
「ちょっと気になることがありまして。どうなるかわかりませんがアルクさんと戦闘になったら非常に危険ですからね。気が抜ける気持ちはわかりますが、気を抜いたら死にますよ」
彼女の言葉に無言でみんな頷いた。
見つかったのか、黒の頂点がふわふわと降りてきた。喋るなと言われたのか、アルクは口を両手で塞いでいる
「あー、彼女を返してほしかったらぁ」
「んんー!」
口を閉じていても騒がしい抗議、黒の頂点は舌打ちを鳴らし、ため息を一つ響かせた。
「ここまでよく来たな貴様ら! 彼女は俺が預かっている、返してほしければ俺を倒すことだな! はっはっはー!」
城のいたるところの陰から彼と同じ姿をした者たちが集まり徐々に大きさは増していく、大きさは自分たちより一回り大きい程度の姿。
そしてなぜかアルクは手を挙げて跳ねてアピールしている。
「さあ、かかって――」
「んんー! んんー!」
「なんだよ、ようやく始めれるところで」
「わたしも、ローズ様とやりたい!」




