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僕は君たちが好きなんだ  作者: セルセ
黒の城編
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16/29

宿へ

 個室になっており、一旦はみんな別々に入ったものの、話が全然見えていないローズが入ってきており、結局みんなが集まっていた。

 

「渡すの忘れてた。みんなに一箱ずつ」


 真っ黒い外装に三つ葉のマークがついているまんじゅうの箱。ローズは不思議そうに、コハクは「ありがとうっす」と言いながら、ネルは受け取るとすぐに中身を確認し始めた。

 

「これまた、12個入りとは多いですね」

「すみません、その時はどうしてもうれしくて」

「味は、悪くないですね。あそこらへんは良い糖がとれましたからその関係でしょうか」

「ねえ、それよりさ。何でアルクちゃんがクロウくんの知ってるアルクちゃんだってわかったの」


 ネルが彼女の持つ箱の三つ葉を指さした。眉間にしわを寄せて悩み、一旦こっちを見た。


「あー、そういうこと!」

「それだけじゃないっす、店の看板にアルクちゃんの似顔絵があるんすよ」

「なにそれ! 見に行きたいんだけど!」

「今日はダメですよ、ここの夜は真っ暗になるから危ないですから」

「明日絶対に一度寄ってくださいよ」

「分かりました。それでは、今日はこのくらいにしましょうか。みんな歩きっぱなしでしたからちゃんと休んでくださいよ」


 ネルの言葉で終わる雰囲気になり、みんなが立ち上がり部屋を出ようとしていたが、伝えたいことがあった。

 

「ローズ」

「ん? どうしたの?」

「ブレスレットのこと。改めて言うよ、ありがとう」

「な、いいよもう、そんな」

「あの時は嬉しさがいろいろとごちゃまぜになっててさ、少し冷静になった今伝えておきたいと思って」

「俺も言うっす、このブレスレット今回の旅の証みたいですごくうれしいっす」

「いや、もう、本当にそういうの、困るって」


 顔を赤くして、うつむきながら声が小さくなっていく。

 そういえばネルが居ない。コハクも次は彼女かと思っていたら外からドタドタと走る音が聞こえ、そーっと扉を開けた。

 

「私も、ありがとうございます、どうしましたか?」

「ネル様……」

「あーあ、ローズが感動で困っているところだったのに」

「本当に、悲しいっすね。みんな部屋に入ったとき付けてたのに」

「皆さん、そんな息を揃えないでくださいよ!」


 ネルの反攻にみんなは目を合わせて頷いた。

 

「寝よっか、明日は早いみたいだしね」

「だな」

「そうっすね」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。この微妙な空気で終わらせるはやめてくださいよ」

 

 示し合わせたかのように誰も言葉を発しない。ネルはきょろきょろとみんなの顔を見ていくが変化はなかったのだろう。諦めたようにくたびれた笑い声を漏らした。

 

「仲良くなってきたと思ったら、意地悪ですね。わかりましたよ。空気も読めず着けてなくて申し訳りませんでした」

「みんな、どうする?」

「良いと思う」

「良いっすよ」

「じゃあ寝よっか」


 ローズの言葉に頷き、二人は去っていく。

 

「皆さん、覚えておきなさい、ふっふっふ」


 ぼそりと呟き、わざとらしく笑いながら扉を閉めていった。

 ちょっとやりすぎたかな。

 それからはまだ自分の中では熱が冷めきっておらず、窓を開けてぼーっと外を眺めていた。


「『黒の城』は、見えないか」


 見れるのは平原とパレッタの街並み。あの遠くの平原、任務をしていたころに通った道に似ているかもしれない。

 町の明かりが消え始めて、外は真っ暗になっていく。

 

 ビュウ

 

 急な耳につんざく風音が下から。思わずのけぞり窓には黒い小さな何かが見える。


「よう」


 金色の単願、蝙蝠のような羽、蛇のようなしっぽを生やした生物が喋りかけてきた。

 見えるのは黒の力、小さいけれど意志を持っている色。


「黒の、頂点」

「正解だな。やっぱりお前か、クロウってのは。その義手は覚えてるぜ」

「何しに」


 大剣を構える。しかし相手は全く態度を変える素振りはなく喋りつづける。


「遊びに来ただけだ、そう焦るなよ。頼まれてきただけだからよ」

「それはアルクか」

「そうだよ、マジで早く来てくれ。遅すぎるんだよ」


 なんか急に声色が情けなくなった気がする。声が本当に困ってるような雰囲気があった。

 話せるのかも、と思った直後だった。

 自分と相手の間に現れたのは赤い霧。

 

「ネルさん!?」

「待ってたよ、この時を」


 怒った時とはまた違う憎しみがこもった声が響く。


「チッ、早すぎるだろ」

「逃がすか!」

 

 窓から二人は飛び出た。

 身を乗り出して探すけれどもすでに暗闇の中。

 どうする、追いかける? でももうどこへ散ったか見えない。

 できることは、待つことだけなのか、それにみんなにも伝えておかないと。

 二人ともすでに眠りについており、寝ぼけ眼で最後に入ったローズの個室にあつまった。


「ごめん、どうにもできなくて」


 二人の表情は思ったより深刻そうではなく、どちらかというとあきれた表情。


「とりあえず、待とうよ」

「そうっすね」

「う、うん」


 少しの沈黙。ローズがすぐに破った。


「今回の件は多分ネル様がもう一つの目的があったからなの」

「もう一つ」

「ネル様には姉がいるの。スピルっていうもう2年以上行方不明になった赤の頂点」

「頂点って各色に一人かと思ってた」

「長期間身体を分けると別人格が出来るってネル様が言ってたよ。身体を分けるって意味がよくわからないけど。まあその姉が行方不明になったのは『ゴールディ』をめちゃくちゃにぶっ壊したからってのがあるの」

「めちゃくちゃ?」

「当時の『シアン闘劇』はぼろぼろ。町中も貰い事故でぐちゃぐちゃ、生活がしばらくままならないって感じ。コハクくんも大変だったでしょ」

「大変っすよ、住居も食事もぎりぎりだったっすから」

「なんでそんなに暴れたんだ?」

「クロウくんの頃と違って、昔はもっと『シアン闘劇』って狭かったの。すると黄の力使う側が今よりずっと強くてね。B以上が全部黄の力って感じで。それがつまらないって暴走した結果がA以上キングも含めて全滅させて、ブーイングに逆切れして観客も巻き込んで地獄絵図ってわけ」


 それを一人でやったのか、色々と規格外すぎる。

 

「再建計画が始まってネル様が責任を取ってやるってことになって今の状態。赤の力の強いのを育てるって『ABCオーケストラ』のバッドが育って、『シアン闘劇』も大きくなったし、ずっとお金が足りなくって、イライラしてたなあ」

「バッドってそうだったのか。あれ? ローズは?」

「あー、私は無理やり弟子入りしたっていうか、『ブレードガンナー』も弟子にしてもらうためにやってたところあってね」


 言われると時期も一緒くらいになるのか。

 

「売れたらそれだけ訓練するっていう契約でね。そんな感じでずっとかかりっきりだったから君は起爆剤だったんだと思うよ、いつものネル様なら君だけさっさと外に出してただろうし」

「おやおや、今度は私の告げ口大会ですか?」


 初めから聞いてたかのようにタイミングよく扉を開けて帰ってきた。手には丸めている紙がある。すでに疲れ切っており「とりあえず力、力を」とローズに抱きついた。ネルは安らかな表情で「あー」と抜けた声を漏らしている。

 

「ネル様、何してたんですか。クロウくんが心配してみんなで集まって待ってたんですよ」

「分かっていますよ。すみません、クロウくん」

「いえ、何をしてくるかわからなったので助かりました。それよりよくわかりましたね。黒の頂点がきていること」

「ブレスレットにあらかじめ仕込んでおきましたからね! あっ……」


 みんなの視線が彼女に、特にローズの視線がちょっと怖い。


「結果的に、助かったわけですし」

「ひどいです、利用したんですね。しかもまたネル様だけ着けてないし」

「それは霧になると……本当に、本当に申し訳ありません! もうこの流れだけはやめてください!」


 とうとう折れてしまい、平謝り。からかっていたのかすぐに表情が切り替わり「いいですよ、でも一つだけ聞きたいことがあります」と真剣な表情に。ネルもつられて表情を整え「どうぞ」と返答を待つ。


「スピル様の居場所はわかりましたか」

「いいえ、黒の頂点と少し居たという情報だけで。今は彼の目的が先ですからこれ以上は追いませんよ。クロウくん、黙っていてごめんなさい」

「気には、なりますが。今はわかりました」


 うなずき、自分に丸めた紙を渡された。


「招待状だそうです」

「招待状?」


 筒状に丸まった紙、開けるとカラフルにクレヨンで書かれた地図が、矢印が何個かあり、ここを通して黒い城だと思われる場所に赤く丸に囲われ『ココ!』と強調。左上のほうに『10時、時間厳守!』と書かれていた。

 後ろから「なにこれかわいい」「子供の頃こういうの描いたっすねえ」という声が聞こえてなぜか恥ずかしくなり丸める。


「あ! もうちょっと見せてよ!」

「ほんとっすよ!」

「明日10時までだ、早く寝よう。ん? 10時?」

「間に合わせるなら6時くらいに出発ですね、もう2時ですが」

 

 こうしてさっさとみんな自分の部屋へと帰っていく。

 部屋に戻ってもう一度絵を見る。下のほうに三人手をつないでいる。男性二人に、女性が真ん中。そしておそろいのペンダントも緑色でぐるぐると書かれているがそうだろう。。

 思ったより疲れていたのか、広げたまま眠ってしまった・

 

 〇 〇 〇

 

 時間は5時、寝ぼけ眼で身体の上に招待状が裏返って広げてた。

 

「あっ」

 

 裏にも文字が書かれており『8時に来る黒い車に乗る』と書かれていた。


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